センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
35話 戦争開始
「も、申し訳ありません。決して、そのような……か……感謝します」
もはや、理不尽な恫喝をうけても、反抗心は沸かなかった。
ただ『首の皮一枚繋がった』としか、サーナは思えなかった。
それだけラムドという脅威に怯えていた。
「その態度が正解だ。2度と勘違いするな。……この場でキチンと言っておこうか。次はないぞ。絶対にないからな」
――サーナは、これまでに、このような場で、何度かラムドと会った事がある。
サーナは、他者のコアオーラを認識・判別する能力に長けていた。
飲んだワインの値段が分かる――に近い繊細な才能。
サーナは、『目の前にいる壮年の魔人』が『間違いなくラムドである』と絶対の自信を持って認識している。
しかし、今のラムドは、これまでのラムドとは全く違う様相を見せていた。
若返ったとか口調が変わったとか、そういう程度の低い『違い』じゃない。
本質はそのままに、指向性だけが変わった。
――つまり、これまでの姿は、本当に、『全て演技だった』のだ。
それだけでも理解できた。
アホンダラのフリをしながら、牙を磨いてきた獅子。
その精度だけで、ラムドの『本気度』がうかがえた。
そのしたたかさ、その狡猾さ。
ラムドは、本気で世界を獲りにきている。
敵がラムド一人なら、もちろん、どうとでもなる。
数で攻めればいい。
冒険者を大量に導入して、圧殺すればいい。
それで殺せる。
――だが、相手は、魔王国+ラムドだ。
魔王国は、ラムドがいなくとも強い。
有能な魔人と進化種が山ほどいるというだけでも軍事力としてはべらぼうに強いのに、自国でザクザクとれる戦略物資(魔カードの原料や、高性能な装備の材料)の山。
戦力だけで言えば、魔王国は、ラムドがいなくとも大国トーンと同等。
セア・ミルスの戦力は、ラムドがいない魔王国の半分以下。
勇者を失ったセファイルにいたっては、魔王国にとってハナクソみたいなもの。
現状、『ラムドは覇権になど興味はない、ただの召喚バカだ』と呑気に信じていた頃から脅威だった虎が、隠していた翼をはためかせ、丹念に磨いた牙をむき出しにして威嚇してきたのだ。
サーナに、ここで怯えずにいられるほどの剛毅さはない。
セファイルの次期女王サーナは間違いなく強者だが、しょせん勇者の姉でしかないのだ。
「他の国のカス共も、よく聞け。今日、この時より、世界は、フーマーと魔王国の二大体制で進む事が決定した。てめぇらは俺の奴隷。それ以上でもそれ以下でもない」
そこで、カバノンが、激痛に耐えながら、
「このような暴挙……私は決して許さんぞ……人類の敵め……我々は、決して屈したりはしない……モンスターの支配など……」
ギリギリと奥歯をかみしめながら、
「我が祖国を……トーン共和国をナメるなよ、バケモノ……必ず駆逐してやる」
はっきりと宣言する。
その宣言に、セアとミルスの首脳も、
「我がセア聖国は、正式にトーンを支持する。我らは、悪しきモンスターを滅する正義の十字軍。危ないモンスターを野放しにはしない」
「我がミルス王国も、その気高き意志に賛同する。ふ、ふふ……化け物め……たいした力だが、貴様一人で支配できるほど『世界という戦場』は狭くないという事を教えてやる。戦争は、決して常に強い者が勝ち続けるゲームではない。弱さの怖さを知るがいい」
明確な意志と共に加わった。
『ラムドとの関係をどうするべきか』と少しだけ揺れていた二国だったが、セファイルに対するラムドの態度を受けて、正式にラムドを敵と判断した。
ラムドは脅威と判断された。
人類の敵。
駆逐すべき悪。
――カバノンが、ニっと笑い、
「ここに三国同盟は結ばれた。……殺してやる……殺しつくしてやるぞ……今、伝令の魔法で、我が祖国トーン共和国に、貴様からの宣戦布告を伝えた。望み通り、開戦だ」
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