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19話 『究極超神化5センエース』VS『究極完全体アダム』

 19話 










 アダムの、『負ける気がしない発言』を受けたセンは、
 スっと、あえて表情をフラットにして、


「言ってろ。ちなみに、それな……勘違いだ」


 飛びだしたセン。


 オーラが目に見えて増幅した。
 豪速の拳。
 その辺の神であれば、一撃で爆散する威力。
 だが、アダムの目は、完璧にとらえていた。


(主上様、本当に申し訳ございません……私は……あなた様を完全に超えてしまった……もちろん、あなた様から頂いた指輪で合体した結果ですので、私自身の力だと言い張るつもりはございません……)


 圧縮された時間の中で、アダムは、のんびりと『先の先の先』を見つめていた。
 今のアダムからすれば、センのオーラは、あまりにも直線的すぎる。
 動きが平坦で、味気ないとすら思った。
 アダムは思う。
 ――私は、少し、強くなり過ぎた。


(私は一生、あなた様の下僕……しかし……)


 アダムは抑えきれずに微笑む。
 突如として舞いこんできた幸運と、湧き上がる期待。
 体が熱くなる。
 アダムは思う。
 ――この闘いが終わったら、すぐにでも、押し倒して、まずは、あの麗しい鎖骨をなめる。主の全てを包み込み、堪能し……そして、約束どおり、私の全てを愛撫していただく……


 膨れ上がる妄想。
 それがまもなく現実になるという期待だけで濡れてくる。


 アダムは思う。
 ――このチャンス、絶対に逃さない。






(今。ここ。交渉を成立させるタイミングは今しかない)






 アダムがセンを煽ったのは、『チャンスだ』とふんだから。
 この、何がなんだかわからないままに出来あがった状況。
 なぜ、ユンドラと合体しただけで、これほどまで強くなれたのか。


 不明。
 謎。


 ――いや、実は、なんとなく理解できている。
 ユンドラと合体した直後、ほんの少しだけ、『かつての記憶』が頭をよぎった。










 ――もし、生まれ変われたら、
               こんどは、君のとなりに――












 ゆえに、なんとなくは分かる。
 自分がなんなのか。
 なんだったのか。


 ただ、それも、ぶっちゃけ、曖昧。


 ぼんやり、うっすらと、なんとなく、『そうかもしれない』という程度の認知。
 『~~みたいな過去』があったような気がする。
 その程度。


 つまりは、ほとんど理解できていない。
 どれだけ頭の奥を探っても、それ以上は残っていない。






(もう少し、自分の奥へと潜ってみれば、あるいは、答えに辿りつけるかもしれないが……)






 正直、どうでもよかった。
 クソしょうもない。


 前世など知ったことか。
 それよりも、『今』だ。
 今、『主』は目の前にいる。


 それでいい。
 それだけがすべて。




(私の方が強いとはいえ、それは、合体している間だけの話……そして、この場を支配している妙な空気感は、今だけの熱。このチャンスは逃さない)


 『ここしかない』と焦ったアダムは勢いに乗った。
 冷静になってしまえば出来ない暴挙。


 乗るしかない、このビッグウェーブに。
 つまりは、それだけの話。
 詐欺的手法。
 とにかく、しのごのいわずに、契約を交わして判を押させる。
 考えるスキを与えてはいけない。
 相手の前頭葉を麻痺させろ。
 思考を許すな。


 その無謀がこうをなした。
 結果、手に入れた権利。
 かわすことに成功した約束。
 可能性。






(今日、この日より、あなた様の全てを……私だけのモノに――)






 圧縮された時間が終わりをつげる。


 目の前までせまったセンの拳。


 流石、はやい。
 力強い。
 たくましい。
 素敵っ!




(だが、余裕――)




 今のアダムには届かない。
 速度がたりない。


(紙一重で避けよう……あえて踏み込み、息が触れあう距離で――)


 余裕で回避するつもりのアダム。
 半身になって、右足を一歩ふみこんで、
 二人の物理的距離を縮めよう♪
 なんて、ナメた『お遊び』に興じようとした、


 そんなアダムの、






 ――どてっぱらに、










「ぐふぅううっっっ!!」








 センの拳がつきささる。
 ゴリゴリと骨が砕ける音がアダムの脳内に響く。
 下から上へと酸が込み上げてくる。
 脳天までガツンと響く一撃だった。
 視界がグラッグラしている。
 アダムは思った。
 ――あれ?
 ――これ、死ぬ?










「……心配するな。少し揺らしただけだ」










 フラットな声で、センは、高みから、


「ちゃんと手加減はしてやった。『調子こいたバカ』に説教してきた経験も豊富なんでなぁ、その辺の匙加減も得意なんだよ」


 たんたんとそう言った。


 激痛の中にいるアダムは、殴られた腹をおさえながら、前かがみの姿勢で、


「ごほっ……がふっ……うぇ……」


 驚愕を隠そうともしていない、よだれを垂らした非常にみっともない表情で、


「っ……な、なんで……」


 疑問を口にすることしかできない。
 何が起きたか理解できていない。
 避けたはずだ。
 というか、避ける直前だった。
 いったい、何がどうなって自分はダメージを負った?
 センの動きは直線的だった。
 見えていた。
 理解できていた。
 なのに、どうして……






 ワケガワカラナイ……











コメント

  • キノ

    センはやはり期待を裏切らない

    1
  • ノベルバユーザー177581

    ここでセンが負けてたら読むのやめてた

    2
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