チート過ぎてチート(語彙力)な異世界転移

樹(いつき)

第30話 絶望

 「お父様!私タイキさんと結婚したいです!」

 突然ティファが爆弾発言をした。

 「えっ!?どうゆうことですか!?僕と結婚してもメリットなんかありませんよ」

 俺は思わずそう言ってしまった。何故ならほんとにメリットなんか無いからだ。進化のおかげで容姿はいいかも知れない。しかし、ただ強いだけで会ったばかりの得体の知れない男と結婚するのはさすがにダメだと思う。

 「そんなことありません!とてもカッコよくてこんなにも強い。そして、権力や金などの下心もなくあんな助けられ方をしたら誰だって惚れてしまいます!」

 ティファは顔を真っ赤にして俺に言ってきた。さすがにそこまで言われると俺も照れてしまう。しかし、これだと目立つのは必須になってしまう。どうするべきかと考えていると王様が真剣な顔で話しはじめた。

 「…すまないティファ。それは叶えることの出来ない願いだ…」

 「何故なんですかお父様!?」

 そりゃあ当然だと思う。俺みたいなやつよりももっと結婚すべき相手がいるはずだ。しかし、王様の口から出た理由は少し予想と違った。

 「実はライグ王国からティファをよこすように言われているのだ…」

 「何故あの国からそんなことを要求されているんですか」

 王様とティファは驚いていた。いや、怖がった・・・・のだ。それもそのはず、ライグ王国の名を聞いた瞬間から俺の雰囲気が先程までと明らかに違うからだ。

 『マスター、殺気を抑えてください』

 どうやら俺は殺気を出していたらしい。

 「理由は言えぬ…本当にすまない…」

 「そんな…」

 ティファが絶望したような表情になる。だがそれは当然の反応だ。あの国の王族には黒い噂が絶えないと言われている。そして、そんな所に行ったら何をされるか分かったもんじゃない。

 「その要求は断れないんですか?」

 「できることならとっくにしているのだがな…。この話はもう辞めにしよう。これ以上はタイキくんを国のいざこざに巻き込むことになる」

 「そうですか…分かりました」

 「すまないな…」

 これ以上の話は俺に迷惑をかけると判断したのだろう。王は話題を変えてきた。

 「ところでタイキくんはこれからどうするんだ?」

 「冒険者にでもなって世界を回ろうと思います」

 「冒険者か。タイキくんの強さならば問題無いだろうが命は大事にした方が良いぞ」

 「分かってますよ」

 その後、他愛もない話をして俺は王城を去ることになった。










 「彼と結婚できればティファも幸せになれたのだろう…私は父として最低だ…」

 そんな王の呟きは誰にも届くことはなかった…

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