【書籍化作品】自宅にダンジョンが出来た。

なつめ猫

ステータスと所有ポイント。




「ゲームのように見えるが、これってどうやってボタンを押せばいいんだ?」

 視界内に見えている下に表示されている4つの長方形のボタン。
 指で長方形のボタンを触っても何の変化も起きない。

 ――ただ、何となくだが視界内に表示されているアイコンの配置やレベル・HP・MPのゲージ配置まで、何となく既視感を覚えてしまう。
 まるで、どこかで見たことがあるような……。

「――駄目だ、思い出せないな。とにかく今は自分の身に何が起きているのか確認することだな。アイコンは、【ステータス】【魔法】【スキル】【システム】か……。さて、どうすれば――」

 俺は、どうすればボタンを押せるのかを考える。
 するとステータスのボタンを押そうと考えた途端、緑色のボタンが黒く変色し視界内に半透明なウィンドウが表示された。

 名前 山岸(やまぎし) 直人(なおと)
 年齢 41歳
 身長 162センチ
 体重 102キログラム

 レベル41
 HP410/410
 MP410/410

 体力17(+)
 敏捷11(+)
 腕力16(+)
 魔力 0(+)
 幸運 0(+)
 魅力 0(+)

 所有ポイント40
 

「…………なるほど……」

 俺は表示されたステータスを見て何となくだが分かった。
 おそらくだが、このステータスというのは現在の俺を示しているのだろう。
 体力と敏捷と腕力については、一般人のステータスがどれくらいか分からないから、高いのか低いのか正直分からない。
 魔力だって魔法が存在しない世界なんだから、魔力が無くて当たり前だと思う事にする


 だが解せないことがある。
 それは魅力と幸運が0という点だ。
 特に俺に魅力がまったく無いというのは明らかにおかしい。

 こう見えても俺は会社での人付き合いは表面上はきちんとしているはずだ。
 何かあっても頼られたりすることもある。

 それなのに魅力がゼロというのは、システム上のバグなのか? としか思えない。
 
「魅力がゼロなのはやはり、普通の探索者とは違って異端だからなのかもしれないな」

 トゥルルルルル。

 考察をしていると突然、スマートフォンの着信音が鳴る。
 こんな深夜に誰が電話を?
 すでに日付が変わっているぞ?
 仕方無く俺は電話にでることにする。

「はい。山岸ですが――」
「佐々木です。先輩、大変なんですよ! 助けてください!」
「俺とお前はすでに派遣会社の先輩と後輩という立場ではない。社会人なら自分で何とかしろ」

 とりあえず深夜に電話かけてきた元・同僚であり後輩からの電話を切る。
 まったく常識の無い奴だ。

 ――俺はお前の友達じゃないというのに。

 まぁ、そもそも俺には友達はいない。
 何せ携帯電話を買い替えるごとに新しい電話番号を知り合いに教えるのが面倒くさい。
 そんな理由から、俺の友達関係は新しい携帯電話に買い替える事にリセットされている。

 誰でもよくあることだ。

 だから、スマートフォンに登録されているのは派遣会社と親兄弟の連絡先くらいだ。

「ふむ……」

 やはり俺の魅力が0という数字について心当たりがさっぱりまったくないな。

 どう考えても他の探索者とは違うシステムかどうかは知らないがバグっているのかも知れない。

「――さて」

 次は……。

 トゥルルルルル――、ピッ!

「はい、山岸ですが」
「先輩! 大変なんですよ!」
「はぁー。お前は俺の話しを聞いていたのか? お前もいい年をした大学生だ。自分のことくらいは自分で何とかしろ」
「――で、でも!」

 ――ピッ!

「とりあえずスマートフォンの電源を落としておくか」

 ――さて……と。

「まずはステータスだな」

 名前 山岸(やまぎし) 直人(なおと)
 年齢 41歳
 身長 162センチ
 体重 102キログラム

 レベル41
 HP410/410
 MP410/410

 体力17(+)
 敏捷11(+)
 腕力16(+)
 魔力 0(+)
 幸運 0(+)
 魅力 0(+)

 所有ポイント 40

「所有ポイントってのが、おそらくだが狂乱の神霊樹を倒してレベルが上がったときに手に入れたポイントだろうな。むしろ、それ以外に心当たりは無いまである」

 体力の横に表示されている(+)をクリックするようにイメージする。
 先ほど分かったことだが、視界内に見えているボタンやアイコンは意識するだけで押せるようだ。

 名前 山岸(やまぎし) 直人(なおと)
 年齢 41歳
 身長 162センチ
 体重 102キログラム

 レベル41
 HP410/410
 MP410/410

 体力18(+)
 敏捷11(+)
 腕力16(+)
 魔力 0(+)
 幸運 0(+)
 魅力 0(+)

 所有ポイント 39

「なるほど、予測は間違っていないな……」

 だが――、問題が一つある。
 一度、ステータスを上げるために消費したポイントだが(-)のアイコンが無い為に、取り消しが効かないということだ。
 それが唯一の問題だろうか?

「さて……、そうすると、どのステータスにポイントを振るのか考えないといけないな」

 慎重に、どのステータスにポイントを振らないといけないのか考える。
 ポイントを無駄にするわけにはいかない。

 今後のことも考え俺は――。

「よし! 上げるステータスは決めた」

 早速、決めたステータスにポイントを振る。


 名前 山岸(やまぎし) 直人(なおと)
 年齢 41歳
 身長 162センチ
 体重 102キログラム

 レベル41
 HP410/410
 MP410/410

 体力18(+)
 敏捷11(+)
 腕力16(+)
 魔力 0(+)
 幸運 0(+)
 魅力39(+)

 所有ポイント 0

「まぁ、本当に効果があるか分からないが、もしかしたら魅力があれば就職に有利かも知れないからな」

 俺は何度も頷く。
 決して異性に好かれたいなどと不純な考えは持っていない。
 女性と付き合っても時間とお金だけが浪費されるだけで良いことがないのはネットを含む実体験で分かっていることだ。

 そう、あくまでも就職面接を有利に働かせるためにすぎない! ということを念頭に置いておこう。

「さて……」

 念のために、レベルを上げてステータスを強化しておこう。
 本当に意味があるか分からないが……。

 引き出しを開ける。
 引き出しの中のダンジョンは健在。 
 まずは獲物を探す。
 強そうな獲物がいい。
  
 ミニチュアのダンジョン内を上から見ていく。

 すると1センチくらいの黒いトカゲのような物を発見。
 
 黒いトカゲを人差し指で潰す。

 すると突然、視界内に半透明のウィンドウが開き「――LV671 ダークドラゴンを討伐しました。」と表示される。
 先ほど、狂乱の神霊樹を倒したときは大きな音が聞こえてきたが、今回はそれがない。
 それは喜ばしいことなのだが、ウィンドウには


 ――レベルが上がりました。ポイントを1手に入れました。
 ――レベルが上がりました。ポイントを1手に入れました。
 ――レベルが上がりました。ポイントを1手に入れました。
 ――レベルが上がりました。ポイントを1手に入れました。
 ――レベルが上がりました。ポイントを1手に入れました。
 ――レベルが上がりました。ポイントを1手に入れました。
 ――レベルが上がりました。ポイントを1手に入れました。
 ――レベルが上がりました。ポイントを1手に入れました。
 ――レベルが上がりました。ポイントを1手に入れました。
 ――レベルが上がりました。ポイントを1手に入れました。
 ――レベルが上がりました。ポイントを1手に入れました。
 
 と、いう表示が流れ続ける。

 視界内の左上の表示――、レベルも上がっていく。

「レベル64 HP640/HP640  MP640/MP640 か……、一気にレベルが上がったな。問題は所有ポイントだな……」

 名前 山岸(やまぎし) 直人(なおと)
 年齢 41歳
 身長 162センチ
 体重 102キログラム

 レベル64
 HP640/640
 MP640/640
 
 体力18(+)
 敏捷11(+)
 腕力16(+)
 魔力 0(+)
 幸運 0(+)
 魅力39(+)

 所有ポイント 23

「さて、どうするか……。一応、検証のために23ポイントは残しておいて面接が決まったら、面接会場で試験官の前でポイントを振っていき反応を見るのが良いかもしれないな」



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