やはり、創造神の加護はチートでした

弥音 雪

33話 試されました




  レオンはフィリアに連れられ馬車が止まっているところまで行った。

「お待ちしておりました。フィリア様、レオン様。これから王城に向かいますのでどうぞお乗り下さい。」

  言われるがまま馬車に乗りフィリアの対面に座ると馬車が動き始めた。

(さすが王家の馬車と言いたいけどさすがに少し跳ねるな。)

  あまり慣れていないレオンに取っては少し苦痛であった。

「レオン大丈夫ですか?」

「うん大丈夫だよ。初めて馬車に乗ったからあまり慣れていないだけだよ。」

「そうですよね。初めて馬車に乗った時は少し辛かったですね。」

「フィリアも同じだったんだね。それじゃぁ……。」

  そう言ってレオンはクッション2個を創造した。

「はいこれ。これの上に座れば跳ねを軽減出来るはず。これで痛くないし酔わないと思うよ。」

「分かりました。」

  クッションを受け取ったフィリアは実際に試してみる。

「これは便利ですね!柔らかい上に低反発でとても心地が良いです!」

「後でいくつかあげるよ。そうすれば家族の人達も辛い思いをしなくて済むからね。」

「ありがとうございます!しかしレオンは色々なことを思いつきますね。」

「そんなことないと思うよ。けど常識にとらわれないことに関しては他の人たちよりも秀でているかな。」

  さすがに前世の知識ですとは言えないレオンは適当に誤魔化す。

「確かに本に載ってあることだけでは限界がありますからね。やはりそこから自分で考えないといけませんね。」

「ん?何か困ったことでもあるの?」

  そう聞くとフィリアは言おうとしたが、考え直しその言葉を飲み込んだ。

「確かにありますがこれは自分の力で解決しようと思います。」

  レオンはその言葉に感心した。実際に行動できる人は前世の世界でも少なかった。

「分かったよ。頑張ってね。」

「はい、ありがとうございます!」

  ふと窓を覗き込むと前に王城が見えた。

「そろそろだね。」

「もうそんなに時間が経ちましたか。やはり楽しい時間はあっという間です。」

「そうだね。こうして友達と話している時間は何にも変え難いほど楽しいよ。それにしてもつい1週間前までは王女様とこんな風に話せるとは思ってなかったな。」

  改めてこの状況を見てみても馬車の中に王女様と平民が同席しているという異様な光景だ。

「私はそうでもないですよ。私達を助けてくれた時から確信していましたよ。」

「あの時はまだ馬車の中に乗っている人がフィリアだとは思わなかったな。けどあの時に助けたのがフィリアで良かったよ。じゃないとこの時間はないからね。」

「はい。私も助けてくれたのがレオンで嬉しかったですよ。この数日は今までで1番楽しい時間でした。」

  そう言ったフィリアの顔は少し赤みがかっていた。

「フィリア様、レオン様到着しました。」

「ありがとうございます。ではついてきてください。」

「分かった。」

  前回と同じところから入っていき、そこからは別の道で進んで行った。そして4、5分後、ある部屋の前に着いた。

「お父様、私の友人レオン様をお連れ致しました。」

  すると中から低くもしっかり威厳が感じられる声が聞こえた。

「入ってくれ。」

  そうしてドアを開け入ろうとした瞬間に違和感を感じた。

「待ってフィリア。」

  そうしてフィリアを止まらせる。

「どうしたのですか?」

  フィリアは感じてないのか違和感に気づいてない。

「国王様これは一体どういうことでしょうか?」

「何がだい?」

  グレイは試すような目付きで見てくる。

「では僭越ながら……」

  そうして国王とフィリア以外に向けて殺気を放つ。すると隠れていた3人が気絶して現れた。

「ご説明お願いしてもよろしいですか?」

  さっきよりかなり殺気を抑えて説明を求める。フィリアはこの状況についてこれてないため固まっている。

「そう殺気を出さないでくれ、今説明するから。」

  そうしてレオンは殺気を消した。

「ふぅ。なかなかの殺気だな。まさか殺気だけでこの3人を気絶させるとは思わなかったぞ。」

  そう言って盛大に笑った。それに少々呆気に取られているレオンとフィリア。

「それでなぜこんなことをしたかだが、薄々気づいているかもしれないが試させてもらった。フィリアから聞いたことはとても信じられないものだったからな。」

  確かにフィリアが言ったことは普通の人なら信じないだろう。しかしフィリアが言ったことだ。嘘をついたとも思えなかったのだろう。

「因みにだがこの3人はこの王城で1番隠密が出来る人達だったのだが、どうやら君には通用しないようだな。」

「はい。あれぐらいならこの王城にいる時はいつでもどうぞ。」

  この言葉に国王は冷や汗をかいた。レオンが言っていることは、いつ何時襲われようとも一瞬で返り討ちに出来るということを示していた。

「いや辞めておくよ。これだけ実力差があるんだ。しかもレオン君は騎士団長にも勝っているんでしょ?さすがに無謀だよ。」

「そうですか。でもなかなか危なかったですよ。」

「それなら良かった。さて、そろそろ立ち話も何だろう。そこに座ってくれ。」

「分かりました。」

  そう言って勧められた席に座った。隣にはフィリア、目の前に国王と言うような席位置だ。

「では、そろそろ本題に入ろうか。」

  軽く殺気を放って気絶した3人をメイドが運んで行った後に国王がそう切り出した。

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