神様にツカれています。

こうやまみか

第二章 10

「え?どうゆうこと?少し、落ち着いてみようか。
 はい、息を吸って、はいて。吸って、はいて。な、落ち着けただろ?どこが炎上しているか教えてくれ。え?『ついきゃス』見れば分かるんだな?URL送ってくれ」
 幸喜も慌てたような感じでツレとの電話を切った。ただ、余りの急展開に固まってしまった誠司とは異なって、夜の繁華街でそれなりの武勇伝を持っているせいか落ち着いているな……と妙に感心していると誠司のスマホが振動している。
 画面を見ると幼馴染の伸也だった。普段はラインのやり取りとかで直接電話はなかったので不審に思いながらも画面をスライドさせた。
「誠司、お前、何やってんだよ?ツイッターにお前の情報教えろとかハンパないくらいにDM来てるぞ。
 つか、ここの『きゃす主』はな、ユーチューブと『ついきゃス』で絶大な人気を誇っている。もちろん、アンチも多いがファンというかこの人の指示で動く人をたくさん抱えている『物申す系』のユーチューバーだ」
 幸喜のスマホが、なかなかイケメンかつ賢そうな感じの人が喋っている動画を映している。
『これ、大麻で間違いないかどうか調べて欲しい。そして場所の特定と、このバカっぽい大学生の情報を引き続き宜しくっ!ツイッター垢はこちらだ』
 画面に誠司のツイッターアカウントがクローズアップされていた。
「『物申す系』って何?そして何が問題なのかさっぱり分からないっ!!」
 一気にさまざまな情報が入って来たせいで、誠司の頭は完全にカオス状態だった。
 ユーチューブは、お気に入りの米津しか再生したことはない、いや一度だけ話題のヒカキンとかいう人の動画も観たっけ。
 いや、そんなことはこの際どうでも良い。
『大麻決定!特定出来たじゃん。みんな!お疲れ様。これ警察に連絡した方が良いので、そっちの対応も頼んだっ』
 伸也はPCで動画を見ているのか、電話口と幸喜のスマホの両方から同じ声が聞こえてくる。
「あのな、大麻栽培は大麻取締法で禁止されている。育てただけで警察に逮捕されるんだぞ?今調べたんだけどな」
 伸也の声が普段以上に冷静だ。ただ、伸也の場合、怒っている時にもこうなるし。いや、この際伸也のことよりも自分のことだ。しかも警察に逮捕?誠司が?
 神様を縋る思いで見たら、バレたか!?みたいな感じでザビエルハゲのてっぺんを叩いている。その余りのお気楽な態度にも眩暈《めまい》がしそうだ。

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