チートスキルはやっぱり反則っぽい!?
チート! 042 炎の迷宮攻略記録6
アズハがグリフォンをテイムしたので切り落とされた翼をシローが再生をしてやる。
そしてその光景を羨ましそうに見ているジーナ。
シローにはスライム、アズハにはグリフォン、ジーナは?と思っているのだろう。
「ジーナにも【モンスターテイム】を付与しておくから、良い魔物がいればテイムすると良いだろう」
「本当か!?シロー殿、有難う!」
とても嬉しそうに礼を言うジーナだった。
アズハのグリフォンは異次元空間で寛いでもらい、三人は小屋を目指す。
小屋に近づくにつれ瘴気が濃くなることから、あの小屋には何かがあるのは間違いないだろう。
警戒をしながら三人は小屋までやってくる。
途中、フラミンゴのようなピンクの鳥型魔物であるピンクバードが大群で現れたが、アズハの【立体機動】による蹂躙劇があっただけで特に疲弊をすることはなかった。
小屋の周囲を注意深く探る三人は場所が場所なら空き巣のようにも見える。
「外側は問題ないな」
「小屋の中の様子が分からないのです~」
「入ってみるしかないようだ」
アズハの耳や鼻は非常に高性能であり、本来であれば小屋の中の音や匂いがわかるのだが、目の前の小屋に至ってはそれらの情報を得ることができない。
それはシローも同様で【サーチマップ】では小屋の中の情報は一切入手できなかった。
明らかに怪しい小屋だが入らなければ話が進まないことから三人は小屋に足を踏み入れることにした。
三人を代表してジーナが小屋の扉を開ける。
開かれた扉から見える小屋の中は普通の掘っ立て小屋のようで地面はそのまま土で、壁や天井は木の板の作りだ。
これで何故何の情報も得られなかったのだろうかと考えるも理由は分からない。
試しに【解析眼】を発動させるが、その結果で目ぼしい情報は得られない。
小屋の中央には四角いテーブルと椅子が四脚あるだけで特に変わったところは見当たらない。
三人は小屋の中に入ってみることにした。
そして三人が小屋に入ると景色が急変した。
ボロイ小屋がいきなり豪華な石造りの宮殿のような造りの建物に変わったのだ。
「「なっ!?」」
アズハとジーナは驚きのあまり息を飲む。
しかしシローはこの変化を予想していたかのように平然としている。
シローでもこのような変化は予想もしていなかったが、何かがあるのは分かっていたことで平静を保つことができたのだ。
「ようこそおいで下さいました。歓迎いたします」
目の前にはメイド服を着た20歳ほどの女性が綺麗なお辞儀をしてシローたちを迎え入れた。
「ど、どこからっ!?」
場所が変わった時には居なかったメイドが目の前に忽然と現れたのだからアズハとジーナが身構えるのは無理もない。
しかしシローは2人を手でせいし、一歩前に出る。
「ここの主に会いたい。案内を頼む」
「畏まりました。こちらに」
メイドは非常に綺麗な顔立ちをしているが、その顔に生気はなかった。
シローはそれを平然と流し主に会わせろと要求する。
しかしまさか本当に案内してくれるとは思っていなかったようで、少し拍子抜けしてしまう。
「なぁ、ここはどこなんだ?」
シローが気になったことを聞いてみる。
そうするとメイドは平たんな口調で『アーシュ・マカジ宮殿』と答える。
アズハとジーナは未だに状況がつかめていないようでキョロキョロと落ち着きないが、シローがメイドに付いて行くのでそれに同行をしている。
「この『アーシュ・マカジ宮殿』の主は誰なんだ?」
シローの問いにメイドは「ご主人様です」と答えるだけで、それ以上は語らなかった。
これ以上何かを聞いても大したことは聞けないと考えたシローは黙ってメイドの後についていく。
豪華で長い廊下を暫く歩くと巨大な扉が現れメイドはその扉の奥にご主人様がいると伝えて壁の中に消えていく。
その様子を見たジーナとアズハが驚きの声をあげるが、シローはメイドが消えた壁に【解析眼】を向けるが何も得られなかった。
「不思議な宮殿だな……」
「匂いも音もなにもしないです……」
シローの【サーチマップ】でさえ何も示してはいないのだからこの宮殿の異様さがシローには分かった。
しかしシローは嬉しくてならなかった。
それは目の前にある巨大な扉の向こうには今まで出会ったこともないほどの存在がシローを待ち受けていると予想できたからだ。
スノーの呪いを解き助けるという目的もあるが、シローが全力を出して戦える相手がいるかも知れないのだと。
落ち着きを取り戻した二人が扉を開ける。ゆっくりと巨大な扉が開いていく。
三人が通れる程度に巨大な扉が開いた先には扉に相応しいほど高い天井のとても広大な部屋が広がっていた。
その広大な部屋には誰もいないように見えたが、部屋の中に足を踏み入れたシローたちに反応するように巨大な存在感を三人は感じる。
その存在感は恐ろしく暴力的な殺気のような気配でシローたち三人は爆風を受けたのではと思うほどの衝撃のような錯覚をするほどだった。
殺気ともいえる気配を感じアズハは混乱し、ジーナはガタガタと足を小刻みに震わせる。
これまでに感じたこともない巨大な気配にアズハとジーナはどうしようもない喪失感にさらされる。
これまで自分たちが培った自信などとてもちっぽけなものであり、この存在感に比べれば何もしていないと同義だと本能が委縮してしまうのだ。
アズハとジーナと真逆にシローは心震わせるほどワクワクしている。
シローも人外の力を得て久しいことから全力を出して戦える相手など最近はいなかったのだ。
それが今、自分の目の前にいるのかもしれないのだ。
視線のはるか先、部屋の最奥の数段高い場所で玉座に座る者。
その者から発せられる圧倒的な力の片鱗。
シローには自分が全力を出して戦える相手を見つけたのかもしれない。
一歩一歩ゆっくりと玉座に座る者に向かい歩を進める。
アズハとジーナは立っているだけで限界に近いのでシローだけがゆっくりと進む。
大粒の汗が額から流れ落ちる。
勝てない相手ではないだろう。しかし油断をすれはシローでも負ける可能性がある本物の強者。
そんな強者へ一歩づつゆっくりと近づく。
「人族ですか、人族がここまで来たのは久しぶりですね」
五段高い場所に置かれている玉座に座りシローを見下ろすのは鉤鼻と猛禽類のような瞳、そして側頭部から生えている巻き角が特徴の悪魔と言われれば納得する容姿の少年だった。
玉座に座ってはいるが燕尾服で身なりを整えて王というよりは執事というほうがシックリくる見た目だ。
シローはその悪魔を見据えそして観察する。
強いのはその存在感で分かる。
そして目の前に姿を現してくれたおかげでステータスの内容も分かった。
たしかに強い。ステータスの内容においてはシローの方がやや高いが、その差は僅かだ。
気を緩めれば負けるが、冷静に対処すれば勝てる相手である。
しかし本当の強さとはステータスだけで分かる物ではない。
これまでの人生でどれだけの修羅場を潜り抜けてきたか、死地をどれだけ乗り越えてきたかによって本当の強さは決まるのだ。
「お前がこのダンジョンに長年住み着く悪魔か?」
「長年?はて、ここに居を構えてからそんなに経っていないと思いますが?」
基本的に悪魔は不死ではないが不老だ。
老衰で死ぬことがないことから数万年を生きた悪魔が人間の国を滅ぼしたという話は歴史の中で何度かある。
その為か悪魔は人族とは違う時間を生きていると言われる存在でもある。
だからシローの質問に対する解釈がずれてしまうのは仕方がないことだろう。
しかしシローはそんな悪魔の態度が気に入らなかった。
愛するスノーに呪いをかけスノーを苦しめる悪魔のとぼけた感じが癇に障るのだった。
「スノーの呪いを解除しろ」
「呪いですか?はて、心当たりがありませんねぇ~」
シローをあざ笑うかのように悪魔は口に笑みを作る。
猛禽類のような瞳がシローの挙動を監視するかのように隙なく見据えることからシローのことは警戒をしているようだが、その言動には余裕がある。
それもまたシローの癇に障るのだ。
「お前がその気なら構わない、お前を叩きのめせば済む話だ」
「安直ですねぇ~……でもそういうのは嫌いではないですよ。そうですね、邪魔が入らないように移動しますか」
悪魔がそういうと目の前の景色が一瞬で変わる。
まるでテレビのドラマのように場面が変わり、シローと悪魔は小屋の外にある平原にいたのだ。
「どういう原理か分からないが、面白いな」
「私を倒せば教えて差し上げますよ」
「そうか、ならばお前を叩きのめすとしようか」
「いいですねぇ~、退屈していたのですよ」
そうしてシローと悪魔の戦いが始まったのである。
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