甘え上手な彼女3 秋編

Joker0808

第38話

(な、なんであいつは私をちらちら見てくるのよ!)

 朋華も赤西の視線に気がついていた。
 心臓をドキドキさせながら、朋華はそわそわしていた。
 昨日の自分はどうかしていたんだと、自分に言い聞かせ、頬を赤く染めながらスマホを弄る。

「あ、あのさ……」

「な、なによ……」

 ついに赤西が口を開いた。
 赤西は顔を赤くしながら、朋華に尋ねる。

「え、えっと……あ、あの……い、良い天気だな」

(俺は何を言ってんだぁぁぁ!! 違うだろ! 言いたいのはそういうことじゃないだろ!)

「そ、そうね……」

「だ、だよなぁ…あは、あははは……」

(笑ってる場合か俺! 聞けよ! 昨日の事を!)

(笑ってんじゃないわよ! もっと私に聞きたい事があるんでしょ!)

 互いにそんな事を考えながら、再び二人の間には沈黙が訪れる。
 
「あ、あのさ!」

 次に話掛けたの朋華だった。
 赤西の方を見ず、朋華は背を向けたまま話始める。

「あのさ……昨日のことなんだけど……」

「お、おう」

 赤西はついに来たと思った。
 昨日のあの言葉の意味がようやく分かる。
 赤西は緊張した様子で、朋華の言葉を待った。

「あ………あのお菓子美味しかった?」

(ばかぁぁ!! なんでそんな事を聞いてるのよ私!! 違うでしょ! 昨日のは本気だったって言いたいんでしょ!!)

「え? ……あ、あぁ……美味かった……けど?」

「へ、へぇ〜そ、そうなんだ……」

(な、なんでお菓子? いや、俺に言いたいことは!? 昨日のあれは一体なんだったの!?)

 朋華は緊張のあまり変な質問をしてしまい、赤西も困惑していた。
 昨日の出来事について、なかなか話の出来ない二人。
 そんな二人を建物の陰から繁村達は見ていた。

「あの二人、何か話してるな」

「何を話してるんだろう? いつもの感じとは違うね」

「何でも良いけど、早いとこ仲直りしてくれないかしら?」

「どうせ原因は赤西でしょ?」

「「「間違いない」」」

 四人全員が赤西のせいだと思いこんでいる頃、朋華は自分の昨日のあの行動のせいでこんな感じになってしまったと反省していた。

(はぁ……私なんであんな事したんだろ……でも……もう一回ちゃんとしたいな……って! 私は何を考えてんのよ!!)

 更に頬を赤く染め、朋華はちらりと赤西の方を見る。
 
「あっ……」

 すると、偶然にも赤西と朋華の目があってしまった。
 
「な、なによ!」

「あ、いや……その……」

 朋華は顔を真っ赤にしいながら、強気な態度で赤西に尋ねる。
 そんな朋華に赤西は口ごもる。
 しかし、赤西は覚悟を決め、朋華に尋ねる。

「昨日のあれは……あの言葉の意味を……教えてくれないか?」

「……あ……え、えっと……」

 ついに来た、来てしまったと朋華は思った。
 リンゴのように顔を真っ赤にし、朋華は赤西の方を見る。

「……言葉の通りよ……バカ……」

「だ、だから……その言葉の意味を教えろよ」

「ば、馬鹿ね!! 察しなさいよ……」

「だ、だから……察しがつかねーから言ってんだろ!!」

「そこは察しなさいよ!」

「無茶言うな! おまえの考えなんていちいち分かるか!!」

「あ、あんたねぇ……私がどんな気持ちで……」

 赤西の言葉に、朋華はわなわなと肩をふるわせる。

「そ、そんなに言うならなぁ! ちゃんと……言えよ。わかんねーだろ………」

「うっ……うるさい……わよ」

 二人は頬を赤らめ、互いに視線を反らす。
 二人の間に沈黙が流れている頃、繁村はそんな二人を見て若干イライラしていた。

「なぁ……なんだ? あの恋が始まりそうな雰囲気は?」

「てか、もう始まってるよね?」

「え? 何、あの二人ってそう言う関係!?」

「全然知らなかった!」

「よし、邪魔しに行くか」

「やめなよ、見ぐるしい」

 赤西と朋華の間に割って入ろうとする繁村を土井は呆れた様子で止める。
 
「くそ! なんでこうなるんだ!! 俺の周りばっかり幸せになりやがって!!」

「友達の幸せくらい、素直に喜ぼうよ……」

「あいつはもう友達じゃない、俺たち非リア充の敵だ!」

「俺を勘定に入れないでもらえる?」

 そんな話を繁村達がしている間に、朋華は赤西に思いを伝える決心をした。

「じゃ、じゃぁ言うわよ……で、でも今はだめ……今日の夜に……」

「わ、わかった」

 流石に人通りの多い駅前では告白は出来ず、朋華は時間を改めることにした。
 





 旅館に戻った高志と紗弥は相変わらず元気がなかった。

「おいおい、いい加減に元気出せよ」

 部屋の隅で落ち込む高志に優一は声を掛ける。
 たかがおみくじの結果をいつまでも気にする高志に優一はため息を吐く。

「たかがおみくじでここまでなるかねぇ〜」

「うるせぇ! おまえだって凶だろ!」

「そこまで気にする話でもないだろ? ほら、風呂に行くぞ」

「はぁ……」

 ため息を吐きながら、高志と優一は風呂の支度をして風呂場に向かう。
 その頃、泉はとある女子生徒に呼び出されていた。

「話って何かな?」

 帰って来てすぐ、部屋に帰る前に呼び出された泉。
 泉の前には、別のクラスの女子生徒が顔を赤く染めながら立っていた。

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