甘え上手な彼女3 秋編

Joker0808

第27話





「こっちだ!」

「こっちよ!」

 朋華と赤西の班は、高志達とは別のお寺に向かっていた。
 
「だからこっちだって言ってるだろ!」

「こっちよ! アンタのは地図の見方が間違ってるのよ!!」

 朋華と赤西はお互いにスマホを持ちながら揉めていた。
 その理由はお寺に向かう道で迷ってしまい、スマホで行き先を検索して揉めていた。
 右だと言って聞かない赤西と、左だと言って譲らない朋華。
 同じ班の土井と繁村は、やれやれと呟きながら地図を見返す。

「おい、お前ら……」

「なによ!!」

「なんだよ!!」

「どっちでもない、ここを真っ直ぐだぞ」

「「え……」」

 繁村にそう言われて、二人は再び地図を確認する。
 地図を見ると、確かに真っ直ぐ行った方が近道な事に気がつく二人。

「はぁ……夫婦喧嘩は犬も食わねーな……」

「「誰が夫婦だ!!」」

「はいはい」

「二人とも、最近なんだか前よりも仲良いよな?」

 土井がそう言うと、朋華は顔を赤く染めて必死に弁解する。

「そ、そんな訳無いでしょ!?」

「そうだぜ! なんで俺がこんな暴力女と……って、いっでぇぇぇぇ!!!」

「アンタはいちいちうるさいのよ!」

「怪我人の足をポンポン踏みつけてんじゃねーよ!!」

 赤西と朋華の様子を見ながら、他の班の生徒はため息を吐く。

「はぁ……赤西もリア充の世界に行ってしまうのか……」

 ため息を吐き遠くを見つめる繁村。
 




 高志達は一日目の予定を終えて、旅館に向かっていた。
 一日目は半日しか時間が無かったため、なんだかあっという間に感じてしまう高志達。
 旅館の部屋を確認し、高志達男子三人は部屋に向かっていた。

「良い旅館だな」

「あぁ、すげーな」

「温泉も有名みたいだよ、楽しみだね」

 三人は旅館の様子をみながら、そんな事を話して部屋に向かう。
 部屋は六人部屋で、高志達三人の他に土井と赤西と繁村が一緒の部屋割りだった。

「あいつらも戻って来てるかな?」

「他の班はまだ帰って来て無かったっぽいしな、まだ帰ってきてないかもしれないな……」

 そう言いながら部屋の鍵を開け、三人は部屋の中に入り襖を開ける。
 
「よし、それでは作戦会議を始める」

「「「「御意」」」」

 部屋を開けた高志達を待っていたのは、高志達三組の男子生徒の約半数だった。
 その中心には繁村が下り、机を囲んで何かを話している様子だった。

「御意じゃねー」

「ごふっ!! い、いきなり何をしやがる!!」

「それはこっちの台詞だ! 人の部屋にどれだけの人数入れてんだよ! 狭いわ!!」

 優一は部屋に入るなり、繁村の頭を後頭部から踏みつける。
 高志と泉は苦笑いでその様子を見ながら、一体何をしていたかを尋ねる。

「帰って来てそうそう、何してたんだよ」

「ハハハ! 良く聞いてくれたな高志! 俺たちは今から………女子風呂を覗く計画を!」

「優一、こいつら全員殺そう」

「いや、待て待て! どうした! 高志君、急にどうした!? なんかいつも以上にバイオレンスな事いうねぇ!」

 女子風呂を覗くと言うことは、高志にとっては彼女である紗弥の裸も見られる危険性が
あると言うこと、怒るのは当然であり、高志はいつも以上に殺気を放っていた。
 優一はそんな高志を見て、若干引いていた。

「た、高志……少し落ち着けよ……気持ちはわかるが」

「大体! 覗きって犯罪なんだぞ! お前ら修学旅行でそんな事をしたら……」

「ふっ……わかってねーな高志!」

「あ、赤西……どうしたんだ? その顔」

「気にするな!」

 高志に声を掛けたのは赤西だった。
 赤西の両頬は赤く腫れ上がっていた。

「あれだよ……西城にさぁ……」

「土井! 余計な事を言うな!」

 西城と言う言葉を聞いて、高志は何となく事情を察する。
 赤西は土井にそう言うと高志に向かって話しを再開する。

「良いか高志! 今は修学旅行中なんだぞ! 高校時代に一度しかない修学旅行なんだぞ!モテない俺たちだって、素敵な思い出をだな……」

「「「黙れリア充予備軍が!!!」」」

「え……な、なぜ……」

 赤西が高志に話しをしている途中で、他の男子生徒が怒りを込めて赤西を怒鳴る。
 赤西はなんで怒られたのかわからず、キョトンとした顔をしていた。

「はぁ……わからない奴だ、西城の裸は他の奴に見られても良いのか?」

「え? いや、あいつの裸なんて誰かみたい奴いるのか?」

「あぁーもう良い、お前はそういう奴だった」

 優一は説明しても気がつかない赤西にため息を吐き、先ほどから部屋中に殺気を放っている高志を落ち着かせに行く。

「おい高志、落ち着け」

「落ち着けるわけないだろ優一……今からここに居る全員を血祭りに上げるんだから!」

「……あのなぁ、こんな大きな旅館が覗き対策をしていないとでも思うか? さっき露天風呂の写真を見たが、結構高い壁があったぞ?」

「い、言われてみれば……」

「そうだろ? こいつらがいくら考えても女子風呂なんて除けねーよ」

 優一の言葉に、覗き賛成派の男子が文句を言う。
 
「そんな事ねーよ!!」

「信じていれば、奇跡は起きるんだ!!」

「俺たちだって、修学旅行で素敵な思い出を作るんだ!」

「お前らみたいなモテる奴らにはわからないんだ!!」

 正論を言われてもそれでも諦めない覗き賛成派の男子達。
 そんな男達に優一はため息を吐いて言う。

「落ち着け……誰が反対だって言った?」

「な、なんだとぉ!?」

「ま、まさか! 優一!!」

「ここの男湯と女湯は繋がっている……覗く方法はいくらでもある」

「「「優一先輩!!!」」」

 まさかの裏切りに、高志は開いた口が塞がらなかった。
 優一は繁村の隣に座り、旅館のホームページを開いて説明を始める。

「良いか、この壁は木製だ! 長年の経営で劣化もあるだろう、だからこそ、どこかに隙間がある!」

「「「おぉ!!」」」

「お、おい優一! お前は覗き反対派じゃなかったのか!?」

「アホか、修学旅行と言えば……覗きだろ」

「お前を信じた俺が馬鹿だった……」

 高志は床に膝をついて嘆く。
 泉はそんな様子などお構いなしで、荷物を置いて風呂に入る準備をしていた。

「はぁ………悪い人達ではないんだけどなぁ……」

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コメント

  • 榎倖生

    やはり修学旅行といえば覗き! みたいなとこありますよね!

    高志の意見もわかるけど

    2
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