甘え上手な彼女3 秋編

Joker0808

第21話

 真っ赤な顔で否定する紗弥。
 由美華はそんな紗弥の背中を押して、下着売り場にやってきた。

「まぁ、その様子じゃ、今だにキス止まり……ってどうしたの?」

「な、なんでもないわよ……」

 紗弥は先ほどよりも顔を真っ赤にさせ、由美華から視線を剃らしていた。
 そんな紗弥の様子を怪しいと思った由美華は、目を細めて由美華に詰め寄る。

「それは何でも無い反応じゃないわよ……言いなさい」

「な、何でも無いってば……」

「ふーん……」

「な、何よ?」

 由美華はしらを切る紗弥を見て目を細め、顎に手を当てて呟き始める。

「……したの」

「な、何を?」

「……したのね」

「し、してないわよ……」

「何をしたかは聞いてないけど、一体何をしてないの?」

「う……由美華の卑怯者……」

「あ、紗弥その表情凄く良い……じゃなくて、さぁ白状しなさい!!」

「う……うぅ……」

 紗弥は顔を真っ赤にさせながら、ゆっくりと口を開き由美華にこの前の高志との出来事を話した。
 聞いていた由美華は、若干高志に怒りを感じながら紗弥の話しを聞いていた。

「……と言うわけで……お母さんに邪魔されちゃって」

「そ、そうだったの………なんてうらやましい……」

「え? 何か言った?」

「何でも無いわよ、それよりも……紗弥、今度私の家に来ない? 両親の居ない日に」

「え? 別に良いけど……」

「約束よ、絶対だからね!」

「う、うん……わかった……」

 必死に迫る由美華に、紗弥は疑問を抱きつつも首を縦に振る。
 話し終わった紗弥と由美華は下着を選び始める。

「うーん……これかしら?」

「ゆ、由美華……それはちょっと大胆過ぎない?」

「そう? 大体こんなもんでしょ? そういう紗弥は……これなんか良いんじゃない?」

「それTバックじゃない! 絶対に嫌よ!!」

「一回! 一回で良いから、履いてみて!!」

「嫌よ! 由美華の変態!」

「あ……なんか紗弥に罵倒されるの……悪くないかも……」

 由美華は紗弥に厳しい言葉を言われ、頬を赤く染めて息を荒くさせる。
 紗弥はそんな由美華を放って、数点下着を選んでレジに持って行く。
 下着売り場を後にした紗弥と由美華は、ファーストフード店で飲み物を買い話しをしていた。

「修学旅行、楽しみだね」

「そうね、高校生活最大のイベントだしね。私も高志と……」

「何をする気?」

「な、なにもしないわよ……ただ、一緒に旅行出来るって思うと……なんか嬉しいなって」

「幸せそうねぇ~」

「由美華は好きな人とか居ないの?」

「え?」

 紗弥にそう言われた由美華は、目を細めて紗弥の方を見る。
 自分の恋が叶わない、そして高志と言う存在が現れ、高志を紗弥に託しても良いと思うようになった頃から、由美華は紗弥への思いを諦めようと決意したのだが……。

(いまだに諦めがつかないなんて……私も案外しつこいわね……)

「彼氏は別に今は良いかな? みんなで居る方が楽しいし」

「そっか、まぁ人それぞれだしね」

 そう話す紗弥を見て、由美華はにっこりと微笑む。
 自分が普通とは違う事は理解しているつもりの由美華。
 それでも自分のこの気持ちを紗弥がどう思うのか、由美華は少し疑問だった。





 紗弥達が二人で買い物をしている頃、高志達は帰路についていた。
 
「羨ましいよ、二人は好きな人と結ばれて、幸せそうで」

「おい泉……馬鹿にしてるのか?」

「なんでその返しが来るのかわからないけど……幸せそうで良いなって」

「は、はぁ!? お、俺がなんであんな変態を……」

「優一のツンデレはリアルにキモイな……」

「本当にいつかぶん殴るぞ、高志」

 三人はふざけながら歩いていると、優一が何やら不審な視線に気がついた。

「おい……どっかの馬鹿が俺らの後を付いてきてるぞ……」

「え? な、なんで?」

「優一、お前の知り合いか?」

「あぁ……否定したいが、心当たりがありすぎる……」

「ありすぎるんだ……」

 付いて来ているのは恐らく高志達と同じ男子高校生であろう、顔はわからないが何か手に持っている様子だった。
 
「優一、お前へのお礼参りとかじゃねーか?」

「あぁ……ありそうだな……だが、一人とは度胸の有る奴だな、相手してやるか……」

「ほどほどにな」

「あぁ、半殺し位なら大丈夫だろ?」

「大丈夫じゃないからね!」

 泉はまだ、この二人のこう言うのりには馴れない。
 優一は高志と泉を置いて、後ろから付けて来る男子生徒の元に向かう。
 しかし、それに気がついた男子生徒は直ぐさま逃げていく。

「あ! こら待て!!」

 優一は慌てて男を追いかけ、高志と泉もその後を追う。
 男が持っていたのは大きな一眼レフのカメラだった。
 それが走るのに邪魔になり、男子生徒は直ぐに捕まった。
 男子生徒の制服は高志達の学校の物であり、同じ学校の生徒だと言うことはわかったのだが、高志も優一も泉もその人物と面識が無かった。
 路地裏に連れて行き、高志達は男子生徒から訳を聞く。

「お前、カメラなんて持ってなんで俺たちの後を付けてた?」

「う……そ、それは……」

「あ、あれ? この声って……」

「もしかして……」

 男子生徒が言葉を発した瞬間、高志達三人はその声に聞き覚えがあった。
 そして三人は一斉にその正体を口にする。

「「「写真を売ってた!!」」」

「クソ……俺がへまするなんて……」

「あのマスクの写真部員か!」

「こんな顔だったんだ……」

「でも、なんで僕たちの後を?」

 優一、高志、泉の順に写真部の男子に尋ねる。
 すると写真部の男子は、言いにくそうに話す。

「すまない……これも客からのオーダーで……」

「「あぁ、泉の写真目当てか」」

「え? なんで僕!?」
 
 ふてくされた用に声を揃えて言う高志と優一。
 そんな高志と優一の言葉に、泉は驚き尋ねる。

「それは泉がモテるからだよ」

「今日も昼休みに告白されてたくせに……あぁ、これだからイケメンは」

「べ、別にモテないよ……そ、それより、僕の写真を売る気だったの!?」

 写真部の男子生徒に尋ねる。

「泉陽太、君の写真は女子に大人気だ。転校してきてから、飛ぶように売れる」

「じょ、女子にも売ってたんだ……」

 この学校の生徒は男子も女子も変な人しか居ないんだなと、泉は改めて思った。

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