セブンスソード
86
「それじゃあ私は戻るわ。あの子を放っておくこともできないし」
「俺も行って良いか? ちょっとは顔見せてお見舞いしたいしさ」
「まったく、大袈裟よ」
此方はふっと笑みを見せる。
彼女の後に続いて日向ちゃんの部屋に入っていく。可愛らしい部屋のベッドには意外にも素直に横になっている日向ちゃんがいた。もしかしたら抜け出しているかもと思ったんだがしっかりと言いつけを守っている。
「日向、体調はどう?」
「お邪魔します」
「お姉ちゃん……、聖治さんも」
日向ちゃんが上体を起こす。ニコっと笑うがその顔はどこかやつれて見える。
「ゴホ、ゴホ」
「ちょっと、日向大丈夫?」
「今朝より悪化してるんじゃないのか?」
顔が赤っぽいし。せきもひどくなっている気がする。
「かもしれないわね。待ってて、体温計持ってくる」
此方はすぐに別の部屋から体温計を持ってきた。それを手渡しする。日向ちゃんはそれを受け取るが、そこでじーと俺を見つめてきた。
「あんたは出て行く!」
「お、おう!」
此方に怒鳴られ急いで部屋を飛び出す。
それから居間で待っていると此方がやってきた。
「どうだった?」
「やっぱり熱があるわね。しばらく休んでいた方がいいかもしれないわね」
「そうか」
心配だな。これ以上悪化しなければいいんだが。
「どうしよう。こんな時期だってのに」
見れば此方は険しい顔を浮かべている。よっぽど日向が心配なんだろう。それに彼女の言うとおり今はセブンスソード中。タイミングは悪い。
俺は此方に近づき、肩に手を置いた。
「気持ちは分かるが、気負いすぎだ。そんなんじゃお前までまいっちまうぞ」
「そんなこと」
「いいからまずは座れ。落ち着いてから考えても遅くはないだろう」
「……そうね」
此方はソファに座りゆっくりと息を吐く。セブンスソードの心労と日向ちゃんの不調で精神的にけっこうきているな。
「待ってろ、今なにか温かいのを煎れてやる」
「あんたが? いいわよ、お湯よりひどいのが出てくるんでしょう」
「信じろ。俺は今最高に集中している」
「お茶を煎れるだけなのにね」
此方からティーパックの場所を教えてもらい紅茶を作る。そこに牛乳も入れミルクティーを手渡した。此方は小さく「ありがと」と言うと小さく口をつける。
「……ふう」
「落ち着いたか?」
「あんたにしては上出来だと安心しただけよ」
「そうかい」
俺もソファに座り彼女の隣に並ぶ。そっと横顔を覗いてみれば此方は紅茶の水面をじっと見つめていた。
気が強い彼女にしては珍しい顔だ。それだけ日向のことが心配だということか。
「心配しなくてもただの風邪だ。薬を飲んで安静にしていればすぐによくなるよ」
「そうね」
励ましてみるが彼女の表情は明るくない。日向ちゃんのことでこんなにも不安そうになるなんて。
此方にとって、日向ちゃんは俺が思っている以上に大切な人なんだな。
「好きなんだな、日向ちゃんのこと」
「え?」
素直にそう思う。むしろ、そうでなきゃこんなにも心配しないはずだ。
「あの子のこととなると、此方はいつも真剣になるからな」
それで何度剣先を向けられたことか。危ないのは嫌だが彼女の思いは本物だ。
「見てて思ったよ。二人とはまだ出会ったばかりだけどさ、二人は本当に仲がいい姉妹なんだって。昨日の料理だってあんなに楽しそうにしてたし。今だってそう。此方がとても日向ちゃんのことを思っているって、伝わってくるよ」
端から見ているだけだけど二人の笑顔を見ていると俺まで嬉しくなってくる。なんでだろ、応援しているのかな? 同じスパーダだから? だから他人とは思えない。仲間なんだ。だから二人の幸せが自分のことのように嬉しい。
「そういえば日向ちゃんが言っていたな。孤児院にいた頃の話。すごく怯えていた自分を此方が何度も守ってくれたって。感謝してたよ」
「そう」
そこで此方は小さく笑った。目を瞑り口元をちょっとだけ上げている。
「俺も行って良いか? ちょっとは顔見せてお見舞いしたいしさ」
「まったく、大袈裟よ」
此方はふっと笑みを見せる。
彼女の後に続いて日向ちゃんの部屋に入っていく。可愛らしい部屋のベッドには意外にも素直に横になっている日向ちゃんがいた。もしかしたら抜け出しているかもと思ったんだがしっかりと言いつけを守っている。
「日向、体調はどう?」
「お邪魔します」
「お姉ちゃん……、聖治さんも」
日向ちゃんが上体を起こす。ニコっと笑うがその顔はどこかやつれて見える。
「ゴホ、ゴホ」
「ちょっと、日向大丈夫?」
「今朝より悪化してるんじゃないのか?」
顔が赤っぽいし。せきもひどくなっている気がする。
「かもしれないわね。待ってて、体温計持ってくる」
此方はすぐに別の部屋から体温計を持ってきた。それを手渡しする。日向ちゃんはそれを受け取るが、そこでじーと俺を見つめてきた。
「あんたは出て行く!」
「お、おう!」
此方に怒鳴られ急いで部屋を飛び出す。
それから居間で待っていると此方がやってきた。
「どうだった?」
「やっぱり熱があるわね。しばらく休んでいた方がいいかもしれないわね」
「そうか」
心配だな。これ以上悪化しなければいいんだが。
「どうしよう。こんな時期だってのに」
見れば此方は険しい顔を浮かべている。よっぽど日向が心配なんだろう。それに彼女の言うとおり今はセブンスソード中。タイミングは悪い。
俺は此方に近づき、肩に手を置いた。
「気持ちは分かるが、気負いすぎだ。そんなんじゃお前までまいっちまうぞ」
「そんなこと」
「いいからまずは座れ。落ち着いてから考えても遅くはないだろう」
「……そうね」
此方はソファに座りゆっくりと息を吐く。セブンスソードの心労と日向ちゃんの不調で精神的にけっこうきているな。
「待ってろ、今なにか温かいのを煎れてやる」
「あんたが? いいわよ、お湯よりひどいのが出てくるんでしょう」
「信じろ。俺は今最高に集中している」
「お茶を煎れるだけなのにね」
此方からティーパックの場所を教えてもらい紅茶を作る。そこに牛乳も入れミルクティーを手渡した。此方は小さく「ありがと」と言うと小さく口をつける。
「……ふう」
「落ち着いたか?」
「あんたにしては上出来だと安心しただけよ」
「そうかい」
俺もソファに座り彼女の隣に並ぶ。そっと横顔を覗いてみれば此方は紅茶の水面をじっと見つめていた。
気が強い彼女にしては珍しい顔だ。それだけ日向のことが心配だということか。
「心配しなくてもただの風邪だ。薬を飲んで安静にしていればすぐによくなるよ」
「そうね」
励ましてみるが彼女の表情は明るくない。日向ちゃんのことでこんなにも不安そうになるなんて。
此方にとって、日向ちゃんは俺が思っている以上に大切な人なんだな。
「好きなんだな、日向ちゃんのこと」
「え?」
素直にそう思う。むしろ、そうでなきゃこんなにも心配しないはずだ。
「あの子のこととなると、此方はいつも真剣になるからな」
それで何度剣先を向けられたことか。危ないのは嫌だが彼女の思いは本物だ。
「見てて思ったよ。二人とはまだ出会ったばかりだけどさ、二人は本当に仲がいい姉妹なんだって。昨日の料理だってあんなに楽しそうにしてたし。今だってそう。此方がとても日向ちゃんのことを思っているって、伝わってくるよ」
端から見ているだけだけど二人の笑顔を見ていると俺まで嬉しくなってくる。なんでだろ、応援しているのかな? 同じスパーダだから? だから他人とは思えない。仲間なんだ。だから二人の幸せが自分のことのように嬉しい。
「そういえば日向ちゃんが言っていたな。孤児院にいた頃の話。すごく怯えていた自分を此方が何度も守ってくれたって。感謝してたよ」
「そう」
そこで此方は小さく笑った。目を瞑り口元をちょっとだけ上げている。
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