セブンスソード
84
実感はないんだけどそういうことになるか。というか、日向ちゃん難しい言葉知ってるな。
すると日向ちゃんが抱きついてきた。
「日向ちゃん?」
「聖治さんと出会えて、嬉しかった。幸せだった。ねえ。私たちの関係って、もう終わっちゃったの? ぜんぶなかったことになったなんて、そんなの嫌だよ」
「日向ちゃん……」
彼女の小さな体が俺にくっつく。その助けを求めるような行為に俺はなにも言えない。
分からない。どうすれば彼女の不安を拭えるのか、そんなあるかも分からない答えを黙って探し続ける。
「ごめんなさい。聖治さんを困らせたいんじゃないの。ただ」
抱きつきながら謝る彼女の頭に、俺はそっと手を置いた。
「気持ちは分かるよ。俺には出会ったころの記憶はないけれど、セブンスソードが怖かったのは覚えてる。俺も心細かった。その度に仲間に支えられたんだ。だから、今度は俺がみんなの支えになりたい。みんなを。今度は俺が助けるんだ。そこにはもう、日向ちゃんや此方もいる」
「聖治さん」
彼女の頭が動いて俺を見る。
「俺はどこにもいかない。そして、全員無事で生き延びるんだ」
そう言うと日向ちゃんは「うん」と頷き顔を俺の腕にうずめた。
「こうして聖治さんと一緒にいると、やっぱり安心する。前の時と変わらない。聖治さんは聖治さんなんだなって」
柔らかい彼女の声に俺も温かな気持ちになっていく。よかった。少しは不安を和らげられたかな。
「聖治さんは、前の世界でもその友人や香織さんって人のためにがんばってたんですよね。命をかけて。すごいな、ほんとうに」
「いや、そんなことないよ。俺はまだ」
「ううん。聖治さんは立派です。普通、そんなことできないですよ。かっこいいです」
そう直球で褒められるとけっこう恥ずかしいな。
「私が好きになった人は、やっぱり優しい人なんだなって。話を聞いていて、私、ちょっと嬉しかったんです」
「嬉しかった?」
「はい」
関係は変わってしまったけど、まったくの別人じゃない。自分の知っている部分があることを知って安心しているのかな。
「ただ、やっぱり辛いな。聖治さんは私たちのこと、知らないんですもんね。出会った時のこと。それからのこと。……二人でいた時間のことも。それは私だけのものになって、二人で共有することはできない。今までのことがなかったことになるなんて」
「…………」
俺はそっと彼女の体に腕を回し、彼女を抱き寄せる。
「また、作っていけるさ」
「え」
彼女が俺を見上げる。
「ごめん。確かに俺は日向ちゃんや此方のこと、出会った時のこととかこれまでのことを知らない。でも、だからといってこれからの時間までもなくなるわけじゃない。こうして一緒にいるんだ、また最初からになるけど、作っていくことはできるよ」
今までの時間を無為にしてしまったようで申し訳ないし、はじめからやり直そうなんてむしのいい話だ。
だけど、俺たちは他人じゃない。日向ちゃんたちの時間までなくなったわけじゃないし、俺たちにはもう繋がりがある。
「それじゃあ!」
日向ちゃんは俺の腕に抱きつきながら目を輝かせている。
「私と、また付き合ってくれますか? 恋人で、いてくれますか?」
「それは」
答えを言い掛けて、俺の口は止まっていた。
香織。
彼女のことが頭を過ぎる。こんなにも俺に好意を寄せてくれて、そのままもちろんと言いそうになる。
でも、俺には香織がいる。一生守り続けると誓った、俺の恋人が。
どうするべきなんだろう。
想いを貫くべきなのか。
それとも、世界は変わったのだからその世界に合わせるべきなのか。
俺は。
「ううん。いいんです」
迷っている間に日向ちゃんは寂しそうに顔を下げてしまった。でも、すぐに笑って俺を見つめる。
「すぐに、答えられることじゃないですよね。でも、もし私でも入れる余地があるなら嬉しいなって」
ショックなはずなのに笑ってくれる。本当にいい子なんだな。
彼女の期待にすぐに答えられないことが申し訳ないけれど、今は彼女と一緒の時間を過ごしていけることが素直に嬉しい。
「聖治さん、まだまだお話しよう! 今夜は寝かせないんだからね」
「おいおい」
彼女の台詞にたじろぎながらも俺は笑っていた。
すると日向ちゃんが抱きついてきた。
「日向ちゃん?」
「聖治さんと出会えて、嬉しかった。幸せだった。ねえ。私たちの関係って、もう終わっちゃったの? ぜんぶなかったことになったなんて、そんなの嫌だよ」
「日向ちゃん……」
彼女の小さな体が俺にくっつく。その助けを求めるような行為に俺はなにも言えない。
分からない。どうすれば彼女の不安を拭えるのか、そんなあるかも分からない答えを黙って探し続ける。
「ごめんなさい。聖治さんを困らせたいんじゃないの。ただ」
抱きつきながら謝る彼女の頭に、俺はそっと手を置いた。
「気持ちは分かるよ。俺には出会ったころの記憶はないけれど、セブンスソードが怖かったのは覚えてる。俺も心細かった。その度に仲間に支えられたんだ。だから、今度は俺がみんなの支えになりたい。みんなを。今度は俺が助けるんだ。そこにはもう、日向ちゃんや此方もいる」
「聖治さん」
彼女の頭が動いて俺を見る。
「俺はどこにもいかない。そして、全員無事で生き延びるんだ」
そう言うと日向ちゃんは「うん」と頷き顔を俺の腕にうずめた。
「こうして聖治さんと一緒にいると、やっぱり安心する。前の時と変わらない。聖治さんは聖治さんなんだなって」
柔らかい彼女の声に俺も温かな気持ちになっていく。よかった。少しは不安を和らげられたかな。
「聖治さんは、前の世界でもその友人や香織さんって人のためにがんばってたんですよね。命をかけて。すごいな、ほんとうに」
「いや、そんなことないよ。俺はまだ」
「ううん。聖治さんは立派です。普通、そんなことできないですよ。かっこいいです」
そう直球で褒められるとけっこう恥ずかしいな。
「私が好きになった人は、やっぱり優しい人なんだなって。話を聞いていて、私、ちょっと嬉しかったんです」
「嬉しかった?」
「はい」
関係は変わってしまったけど、まったくの別人じゃない。自分の知っている部分があることを知って安心しているのかな。
「ただ、やっぱり辛いな。聖治さんは私たちのこと、知らないんですもんね。出会った時のこと。それからのこと。……二人でいた時間のことも。それは私だけのものになって、二人で共有することはできない。今までのことがなかったことになるなんて」
「…………」
俺はそっと彼女の体に腕を回し、彼女を抱き寄せる。
「また、作っていけるさ」
「え」
彼女が俺を見上げる。
「ごめん。確かに俺は日向ちゃんや此方のこと、出会った時のこととかこれまでのことを知らない。でも、だからといってこれからの時間までもなくなるわけじゃない。こうして一緒にいるんだ、また最初からになるけど、作っていくことはできるよ」
今までの時間を無為にしてしまったようで申し訳ないし、はじめからやり直そうなんてむしのいい話だ。
だけど、俺たちは他人じゃない。日向ちゃんたちの時間までなくなったわけじゃないし、俺たちにはもう繋がりがある。
「それじゃあ!」
日向ちゃんは俺の腕に抱きつきながら目を輝かせている。
「私と、また付き合ってくれますか? 恋人で、いてくれますか?」
「それは」
答えを言い掛けて、俺の口は止まっていた。
香織。
彼女のことが頭を過ぎる。こんなにも俺に好意を寄せてくれて、そのままもちろんと言いそうになる。
でも、俺には香織がいる。一生守り続けると誓った、俺の恋人が。
どうするべきなんだろう。
想いを貫くべきなのか。
それとも、世界は変わったのだからその世界に合わせるべきなのか。
俺は。
「ううん。いいんです」
迷っている間に日向ちゃんは寂しそうに顔を下げてしまった。でも、すぐに笑って俺を見つめる。
「すぐに、答えられることじゃないですよね。でも、もし私でも入れる余地があるなら嬉しいなって」
ショックなはずなのに笑ってくれる。本当にいい子なんだな。
彼女の期待にすぐに答えられないことが申し訳ないけれど、今は彼女と一緒の時間を過ごしていけることが素直に嬉しい。
「聖治さん、まだまだお話しよう! 今夜は寝かせないんだからね」
「おいおい」
彼女の台詞にたじろぎながらも俺は笑っていた。
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