セブンスソード

奏せいや

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 セブンスソード。これを生き残らなくちゃならない。

 ただ、その目的は以前よりは簡単になったと思う。

 なぜなら敵だった此方たちが今では友人というかなんというか、身内なんだ。最初から仲間なら前みたいに戦うこともない。あとは香織や星都、力也と合流すれば。

「そういえば、香織たち」

 香織たちはこの世界ではどうしているんだろう。きっと水戸高校の生徒のままだと思うけど。それも確認しておかないとな。明日にでも様子を見に行ってみようか。明日なら学校のはずだし。

 ピンポーン。

「ん?」

 呼び鈴だ。いったい誰だろうか。

「はい」

 俺はTシャツにスウェットとラフな格好のまま玄関の扉を開ける。

「日向ちゃん?」
「はい」

 そこには自分たちの部屋に戻ったはずの日向ちゃんが一人で立っていた。彼女もお風呂上がりなのか服装が変わっている。ピンクのパジャマに髪は後ろで縛っている。

「来ちゃいました」
「来ちゃいましたって」

 ちょっと躊躇いがちに笑っている。来ちゃいけないって分かっているのに来ちゃったのか。

「あの、入っちゃ駄目ですか?」

 うーん。

「仕方がないな」

 少し考えたけど、せっかく来てくれたのを追い返す気にもなれず扉を大きく開ける。

「どうぞ」
「えへへ。お邪魔します」

 まったく仕方のない子だな。でも俺のことを慕ってくれているのは素直に嬉しい。

「あれ、日向ちゃんそれは?」

 俺の横を通り過ぎていく背中を見ると彼女は両手になにかを持っている。彼女はくるっと回ってそれを前に持ってきた。

「枕です!」

 いや、見てそれは分かってたんだけど。

「なぜ枕を?」
「今日はここで寝ようかなって」

 え!?

「ここで!?」

 それってどういう意味だ? てか、彼女とは恋人関係ってことだけど、俺はどこまでしたんだ? まさかその、え? そういうこと!? 嘘だろ! 俺知らない間に初めてを――

「もっと、聖治さんと話がしたいと思ったんです」
「話?」

 と、日向ちゃんはトーンを落としてそう言った。その顔はちょっとだけ寂しそうというか、悲しそうで、前に持ってきた枕を両手でぎゅっと抱きしめている。

「その、私、聖治さんとたくさん話がしたいんです。私が知っている聖治さんはいなくて、ここにいるのは別の聖治さんで。でも聖治さんに違いはなくて。じゃあなにが違ってどこか同じなのか。今の私たちってどんななのかなって、そう思ったらいてもたってもいられなくて」
「そうか」

 それは、なんとなく分かる気がする。

 好きだった人が姿形は同じとはいえ記憶は別だと言われたんだ。ならお互いの関係が気になるのは当然のことだ。自分の好きという気持ちが大きければ大きいほど。はっきりさせておきたいよな。もやもやするのが一番辛い。

「いいよ、たくさん話そう。日向ちゃんが満足するまで」
「うん!」

 そう言うと彼女は嬉しそうに微笑んだ。

 彼女を自室に案内し一緒にベッドに腰掛ける。自分の部屋に女の子がいるなんて変な感じだ。その自室というのも実感がないし。

「そ、その!」
「ん?」

 なんだろうか、かなり緊張した風で日向ちゃんが俺を見つめている。顔もなんだか赤いというか。

「私たち、そ、その、恋人関係って言いましたけど、キスもまだしてないですからね!」
「お、おお!」

 言いたいことは分かったから落ち着いてくれ。俺まで緊張する。

 日向ちゃんは深呼吸をしている。よっぽど恥ずかしかったんだな。そりゃあ恥ずかしいだろうけど。

「それで話ってことだけど、日向ちゃんから知りたいこととかある?」
「ええっと」

 かなり動揺しているのか部屋を見渡している。でもすぐに俺に振り返る。

「じゃあ、前の世界のこと。もっと詳しく知りたいです」
「え、前の世界のこと?」

 前の世界のことってセブンスソードのことになるけど。正直面白くないぞ。

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