セブンスソード

奏せいや

76

 てことはやっぱり。

「え、二人は姉妹!?」
「…………」
「…………」
「…………」
「あんた今更なに言ってんの?」

 此方にすごく怪しい目で見られた。

 てか、そうか。なんとなくだがだんだん状況が掴めてきたな。

 とりあえず此方とは敵対関係じゃない。前の世界で殺し合った彼女と普通に話し合っているのもすごい状況だが、この世界ではそれが普通なんだ。

 しかもその妹と恋人関係。となると、俺たちはかなりの信頼関係を築いている。

 てっきり此方は敵だと思い込んでいたがこの世界だと味方なのか? なんてことだ、そんなこともあるのか。

「此方、その、すまなかった。俺が悪かった。許して欲しい」
「知らないわよバカ、クズ男。あんたのことホント嫌いになったわ」
「だから待ってくれ!」

 此方は持っていたビニール袋を置くと反転し玄関に向かっていった。その背中をなんとか呼び止める。

「お姉ちゃん、聖治さんも謝ってるんだし許してあげてよ。それに今日の聖治さんはなんか調子がおかしいっていうか、変に余所余所しくて」

 やはりバレてたか。

 日向にも呼び止められ此方が振り返る。

「こいつが変なのはここに来てから一目で分かってるわよ。部屋に入るなりあんな場面に遭遇するんだから。ハッ! まさか、あんた二人きりだからって日向に変なことしようとしてたんじゃないでしょうね!?」
「ちがう!」
「違うよお姉ちゃん!」

 違う、あれは事故だ!

「待ってくれ、俺たちにはいろいろ誤解があるようだがこれだけは信じてくれ。そんなことはない!」
「そうだよお姉ちゃん、聖治さんはそんな人じゃないよ」
「ハッ、どうだか。じゃあなんで抱き合ってたのよ」
「事故だよ」
「なんで事故で抱き合うなんてことにあるのよ」
「ええっと、その……タイタニックの真似だ」
「は?」
「え?」
「え?」

 二人の反応に俺まで声が出る。

「聖治さん、それはちょっとないかな~」
「あんたって、ほんっっっっっとにバカよね! タイタニックの真似したかったら後ろからでしょ、あんた前から抱き合ってたじゃない。あんたはどこまで愚かなの?」
「……もう許してくれ」

 なんで俺は咄嗟にうまいことが言えないんだ……。

 ここに俺の味方なんていなかった。

 それからなんとか誤解を解いて俺たちはテーブルの席に着いていた。此方は買い物の帰りらしく袋にあったお菓子を三人で食べている。日向は楽しそうに此方に話しかけ、聞いている此方も小さな笑みを浮かべながら静かに相打ちしている。そんな中俺だけが黙々とお菓子を食べていた。

「やっぱりチョコ菓子はきのこの秘境だよね」
「たけのこの秘境と迷ったけどやっぱりきのこよね」
「…………」

 なに言ってるんだ、どう考えてもたけのこの秘境だろ。

 二人がしている楽しそうな会話。そんな中どう言い出したものか悩む。

 いきなり俺は前の世界から来た、と言っても星都たちの時の二の舞だ、二人を混乱させるだけだろう。だからと言ってこのままというのも気が引ける。

 そうしているうちに時間は過ぎ此方は席を立った。

「それじゃあ私は夕飯の用意してくるから。日向もすぐに戻るのよ、こいつに変なことされないうちにね」
「もう、お姉ちゃん引っ張りすぎ。そんなことないよ」
「さっきも言ったがほんとうにアクシデントだったんだ」
「ふん。とぼけたくせに」
「嘘っぽいかなと思ったんだ。なにも言わなくていい、言いたいことは分かってる」
「みたいね」

 そう言うと此方は出て行き玄関の扉が閉まる。ここには俺と日向だけだ。此方の言い方からして二人は近くに住んでいるんだろう。きっとこの部屋は二人のいるマンションと同じなんだろう。どういう繋がりかと思えばご近所同士か。

「お姉ちゃん行っちゃったね」
「そうだな」
「どうしようか、もう一度ぷおぷおする?」
「それもいいけど、遅くなると此方に怒られるぞ?」
「ううーん、じゃあソファでゆっくりしよう」
「それならいいか」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品