セブンスソード
71
急激な体力の減衰。原因はこれか。型は西洋の両手剣。見た目はきれいだがこれを見たいとは思わない。それくらい、これは強烈だ。
天黒魔のイメージを死だとするならこの剣は禍々しさだ。天黒魔も強烈なまでの死を連想させたが静かだった。でもこれは違う。自ら発し、敵を蹂躙するような、能動する破壊を思わせる。
赤い魔剣。名前は確か――カリギュラ。減退や吸収を司る弱体と破滅の力。
「お前が、安神か?」
息切れを起こしながらもなんとか声を出す。
「安神(やすかみ)此方(こなた)よ」
此方(こなた)。彼女が姉か。
「交渉は、決裂なのか?」
話もなにもしてないが、これはどう考えても歓迎ではなく待ち伏せだ。
俺の質問に彼女、安神此方は答えない。黙って俺たちを見つめている。
「そうかよ」
それが彼女の答えだと知って、俺は残念さと悔しさに呟いた。
協力できるかもしれない。力を合わせ、そうすればセブンスソードなんて儀式から逃げ出せるかもしれない。
それは俺の想像でしかなく、儚い夢だったわけだ。
残念でならない。このまま心が折れそうだ。
此方は俺たちに近づいてくる。剣を両手で持った。
「く!」
まずい。このままだとみんなやられる。なんとかしないと。
立て。立て。立て!
足に力を入れるが、くそ、起き上がれない!
此方は俺の前に立った。俺を見下ろし赤剣を振り上げる。
殺される。恐怖が一気に膨らんだ。
「私がやらなきゃ。私がやらなきゃ。私が。私が」
だけど、すぐに剣は降りてこなかった。
「私がやらないと。私がやらないと」
構えたまま、彼女は何度も自分に言い聞かせていた。
目が、恐怖に怯えていたんだ。それで思った。
この子も、怖いのか。
死が目前に来てるのに、人事のようにそんなことを思う。
瞬間、彼女の顔がこわばった。両手を握る手にも力が入って、くる、と分かった。
「聖治くぅん!」
剣が下ろされる前、俺は後ろから突き飛ばされた。
「力也!」
押し倒され廊下に横になる。俺がいた場所には力也がいて、結果、此方の剣が切り下ろしたのは力也だった。
「力也ぁああ!」
体を切られ、力也が前のめりに倒れる。うつ伏せになって、そのまま動かなくなってしまう。
「あ。あああ」
倒れた場所から血が広がっていく。声も聞こえない。身動きもしない。生きてる証が、なにもない。
死んだ。またしても、死んでしまったんだ。
「あああああああ!」
そんな、なんで! こんなことになるんだよ! 優しいお前から死ぬことないだろう!
「力也ぁ!」
「そんな……」
力也の死に星都も叫んでいる。香織は呆然としていた。此方は立ち尽くし自分が斬った力也を見つめている。
すると力也の体から光の球が浮かび出た。俺は前に出てそれを手に取る。
これは力也の魂だ。誰だろうと渡してたまるか!
俺にスパーダを奪われたことで此方も動く。また剣を振り上げた。
今の俺じゃ剣なんか振るえない。今だって前に出るだけで全身が重かったんだ、剣なんてもの持ち上げることすらできない。
でも俺には力也から受け継いだものがある。
守ってもらった命と、彼の魂(スパーダ)だ!
「こい、鉄塊王、グラン!」
俺の手にグランが現れる、俺の身長を越える巨大な剣。見た目はでかいがこの剣は重力の影響を受けない。振るうだけならこれは羽毛のように軽い!
俺の胸を占める感情。それは恐怖なんかじゃない。怒りだ。
俺はグランを横に振り此方の攻撃を払った。二つのスパーダはぶつかり此方が吹き飛んだ。背中から廊下に倒れスパーダが彼女の手から離れる。それにより体力を蝕んでいたものが止まった。
天黒魔のイメージを死だとするならこの剣は禍々しさだ。天黒魔も強烈なまでの死を連想させたが静かだった。でもこれは違う。自ら発し、敵を蹂躙するような、能動する破壊を思わせる。
赤い魔剣。名前は確か――カリギュラ。減退や吸収を司る弱体と破滅の力。
「お前が、安神か?」
息切れを起こしながらもなんとか声を出す。
「安神(やすかみ)此方(こなた)よ」
此方(こなた)。彼女が姉か。
「交渉は、決裂なのか?」
話もなにもしてないが、これはどう考えても歓迎ではなく待ち伏せだ。
俺の質問に彼女、安神此方は答えない。黙って俺たちを見つめている。
「そうかよ」
それが彼女の答えだと知って、俺は残念さと悔しさに呟いた。
協力できるかもしれない。力を合わせ、そうすればセブンスソードなんて儀式から逃げ出せるかもしれない。
それは俺の想像でしかなく、儚い夢だったわけだ。
残念でならない。このまま心が折れそうだ。
此方は俺たちに近づいてくる。剣を両手で持った。
「く!」
まずい。このままだとみんなやられる。なんとかしないと。
立て。立て。立て!
足に力を入れるが、くそ、起き上がれない!
此方は俺の前に立った。俺を見下ろし赤剣を振り上げる。
殺される。恐怖が一気に膨らんだ。
「私がやらなきゃ。私がやらなきゃ。私が。私が」
だけど、すぐに剣は降りてこなかった。
「私がやらないと。私がやらないと」
構えたまま、彼女は何度も自分に言い聞かせていた。
目が、恐怖に怯えていたんだ。それで思った。
この子も、怖いのか。
死が目前に来てるのに、人事のようにそんなことを思う。
瞬間、彼女の顔がこわばった。両手を握る手にも力が入って、くる、と分かった。
「聖治くぅん!」
剣が下ろされる前、俺は後ろから突き飛ばされた。
「力也!」
押し倒され廊下に横になる。俺がいた場所には力也がいて、結果、此方の剣が切り下ろしたのは力也だった。
「力也ぁああ!」
体を切られ、力也が前のめりに倒れる。うつ伏せになって、そのまま動かなくなってしまう。
「あ。あああ」
倒れた場所から血が広がっていく。声も聞こえない。身動きもしない。生きてる証が、なにもない。
死んだ。またしても、死んでしまったんだ。
「あああああああ!」
そんな、なんで! こんなことになるんだよ! 優しいお前から死ぬことないだろう!
「力也ぁ!」
「そんな……」
力也の死に星都も叫んでいる。香織は呆然としていた。此方は立ち尽くし自分が斬った力也を見つめている。
すると力也の体から光の球が浮かび出た。俺は前に出てそれを手に取る。
これは力也の魂だ。誰だろうと渡してたまるか!
俺にスパーダを奪われたことで此方も動く。また剣を振り上げた。
今の俺じゃ剣なんか振るえない。今だって前に出るだけで全身が重かったんだ、剣なんてもの持ち上げることすらできない。
でも俺には力也から受け継いだものがある。
守ってもらった命と、彼の魂(スパーダ)だ!
「こい、鉄塊王、グラン!」
俺の手にグランが現れる、俺の身長を越える巨大な剣。見た目はでかいがこの剣は重力の影響を受けない。振るうだけならこれは羽毛のように軽い!
俺の胸を占める感情。それは恐怖なんかじゃない。怒りだ。
俺はグランを横に振り此方の攻撃を払った。二つのスパーダはぶつかり此方が吹き飛んだ。背中から廊下に倒れスパーダが彼女の手から離れる。それにより体力を蝕んでいたものが止まった。
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