セブンスソード

奏せいや

66

「うん。そのセブンスソードというのは七人で行うんだよね? ここにいる私たちで四人。魔来名で五人。あと二人いるはず」
「そうか」

 出会ったことがなかったから気が回らなかったけど、この儀式には俺たち以外にもあと二人いるんだよな。単純な話、四人で駄目でも五人、六人ならできるかもしれない。

「聖治君は知ってる? あとの二人のこと」
「いや。俺もそこまでは知らないな。それにその二人が協力してくれるかどうか」

 どうなんだろう。会ってみないことには分からないが、その二人も魔来名と同じように好戦的とも限らない。が、協力関係を結べれば心強い。

 どちらにせよ居場所が分からないことにはどうしようもない。俺は誰がその二人かも知らないんだ。

「手詰まりか?」

 星都か聞いてくる。肯定したくないので答えなかったがそれだけで十分伝わってしまう。

「聖治君以外に、知ってそうな人はいないの?」
「俺以外っていうと」

 俺はふと香織の顔を見た。

 セブンスソードなんて得体の知れないものに巻き込まれ不安と心配が混ざった顔をしている彼女。でも、俺からすれば最初一番頼りになったのは彼女だった。

 セブンスソードに精通し、スパーダも彼女から教わった。言ってしまえば案内人みたいな立場だったんだ。

 だけど、その彼女に頼ることはもうできない。この世界の彼女はなにも知らない女の子なんだ。俺が守ってやらなければならない。あの世界からセブンスソードを知っているのは俺しか。

「あ」

 いや、違う。俺以外にもいる。セブンスソードを知っている人間が。

 でも、いいのか? かなり危険じゃないのか? 聞いて教えてくれるか。確信が持てないし。
 でも、手がかりはこれしかない。

「あるには、ある」
「え? あんのかよ?」
「聖治君、本当なのぉ?」
「ああ。でも」

 どうなるかまったく分からない。無事でいられる保証はない。

 でも、するしかない。危険を承知で、この事態を打開するためにはこれしかない。

 俺は、することを決めた。



 夕暮れ。青空を太陽の照り返しが茜色に染めていく。町はオレンジに覆われて影が大きく伸びる。

 そんな何気ないいつもの町で、フードを被った男は香織に槍を突こうとしていた。

「きゃあああ!」
「させるかぁああ!」

 その間に割り込む。男の槍をパーシヴァルで間一髪逸らしフード男が距離を取る。

「やはり出たな」
「あ」

 背後では恐怖に震えた香織の声が聞こえてくる。今まさに殺され掛けたんだ。怯えて当然だ。

「せ、聖治君。これが」
「ああ、話していたものだ。これで信じられるだろ」

 このことは屋上でそれとなく伝えておいた。道中気をつけるようにと。怖い思いをさせてしまったのは申し訳ないが、こうでもしなければ信じてもらえないと思ったんだ。

「ほう、お前は飲み込みが良さそうだな。だがおかしくないか、知っているならなぜ剣先が俺に向いている? 刺す相手は後ろだぜ?」
「お前に聞きたいことがある」
「俺に?」

 フード男から間の抜けた声が出る。質問されるのがよほど予想外だったんだろう。
 俺だってこんな事情がなければこいつに頼ることなんてするか。
 でも、俺にはこいつしかいない。

「セブンスソードの参加者であるスパーダは七人。その四人は俺が通う学校にいる。もう一人は魔堂魔来名。他の二人はどこにいる?」

 セブンスソードの残り二人の居場所。それを知っているのはこいつら管理者だ。管理者っていうくらいだ、知らないはずがない。

「お前、なにか勘違いしてないか?」

 俺からの問いに男は棘のある声で返してきた。

「俺たちは儀式のあくまで管理人。お前らの世話役じゃない。索敵(さくてき)含めてお前等のやることなんだよ。教えちゃフェアじゃない」

 やはり、そう簡単に教えてはくれないよな。

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