セブンスソード

奏せいや

64

 が、それを星都は打ち落としていた。投げられた四つのナイフは迎撃され地面に落ちる。

「がああ!」

 なのに、星都から悲鳴が上がっていた。

「星都!? どうした!?」

 見れば星都の背中に四本のナイフが刺さっていた。

「そんな!?」

 馬鹿な。急いで背後を振り返るが誰もいない。それにこのナイフは半蔵が使っているものだ。
 背後から攻撃してきた? いや、半蔵は動いていない。いくら速いと言っても背後に回り込まれればそれくらいは分かる。

 じゃあなんだ?

「皆森君!」

 星都の傷を香織が癒していく。星都の前には俺と力也が立ってカバーする。時間を稼がなくちゃ。

「無駄だ」

 だが半蔵の手にはすでにナイフが握られており今度は両手で投げつけてきた。

「聖治君!」

 咄嗟に力也が俺の前に立つ。グランを盾にして正面からくるナイフを防いでくれた。

「うわあ!」
「力也!?」

 だが、力也の両側、腕や足に八本ものナイフが突き刺さっていた。投げられたナイフは確かに防いだ。その証拠に地面にはその時のナイフが落ちている。

「いったい、なにがどうなってるんだ」

 半蔵が使う魔術は加速だけじゃない。じゃあなんだ? 空間操作? 

 分からない。半蔵がなにをしているのか、どこから襲われているのか、まったく予想できない。

 そうしている間に半蔵はナイフを投げつけてくる。残弾には限りがないのか無尽蔵に投げつけてくる。

「がああ!」

 防ぎ切れない。ナイフは俺のふとももを貫き地面に倒れた。さらに力也や星都にも突き刺さっていく。香織のディンドランも発動しているがとてもじゃないが間に合わない。

 ついに、ナイフは香織の体にも突き刺さった。

 彼女の悲鳴が耳を貫く。苦痛に顔を歪め、それでも彼女はみんなの傷を治すためにディンドランを使っていた。

 そこへさらにナイフが彼女を貫いていく。

「香織ぃいいい!」

 何本も、何本も、彼女の体にはナイフが刺さっている。そこから真っ赤な血が流れ出し、俺は倒れる彼女を抱き起した。

 彼女は、息をしていなかった。

「嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ!」

 嘘だろ? なんだよ。俺はまた守れなかったのか? やり直したこの世界でも? なんでだよ! なんで、こんなことになるんだよ!

「があ!」

 背中に激痛が走る。それがなんなのか見なくても分かった。

「ぐ、がああ!」

 さらに別の場所からも飛んでくるナイフが突き刺さる。見れば星都や力也たちも全身ナイフが突き刺さり地面に伏していた。

 痛みが、何度も襲ってくる。

 俺にはなにも出来ない。ただ、彼女の亡骸を両手で抱きしめた。

 これ以上、彼女を傷つけてたまるか。

 そう思うのに、腕に新たなナイフが腕に突き刺さった。それによって香織を手放してしまう。

「あ」

 彼女が地面に倒れる。桃色の髪がアスファルトに広がって、血に染まっていく。

 なんで……。こんな光景をもう見ないために頑張ったのに、こんな結末を変えるって決めたのに。

 なんで、救えないんだよ。

「今回のセブンスソードは失敗だ」

 そう言って、半蔵はナイフを放った。

「ぐう!」

 胸に突き刺さる。深々と刃が入り込み俺に致命傷を負わせていた。

 膝立ちしていた体がゆっくりと傾いていく。俺は地面に倒れた。香織に覆いかぶさる。死ぬその間際まで彼女のそばにいたかった。

 血の流し過ぎか、もう痛みも分からない。視界は霞(かす)みぼやけて見える。

 あと数秒ももたない。なのに半蔵は俺へ向けナイフを投げつけてきた。せっかちなのか、慎重なのか。そんなことしなくても死ぬと分かっているのに。

 瞬間だった。

(え)

 俺の視界に、白いコートの後ろ姿が現れた。金髪のその男は今しがた投げられたナイフを黒い日本刀で打ち落としたのだ。

 どういうことか分からない。

 ただ、もう駄目だった。

 意識が暗転する。俺は深い穴に落ちていくように意識を失っていった。

 俺は、またしても死んだんだ。

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