セブンスソード

奏せいや

63

 俺たちがスパーダを出したにも関わらず半蔵は眉一つ動かすことなく俺たちを見つめていた。それだけ戦い慣れているのか、こうして対面しているだけなのにプレッシャーを感じる。

「ならば仕方が無い。四人も処分しては霊格が落ちるのは避けられんが完成を優先する」

 半蔵の手に突如ナイフが現れた。それも一本じゃない。指の間に握られた刃が両手で八本。普通のナイフじゃない。クナイ? 柄のないそれは手投げ用のナイフだ。

 なにもない場所から武器を出す技。この半蔵も槍男と同じく空間を操るのか?

「みんな気をつけろ! 空間を操ってくるかもしれない!」

 あの槍男は空間操作でいくつもの槍を出してきた。この男もその可能性が高い。

「空間だ? そんなもん、先に斬っちまえば問題ねえ!」
「星都!?」

 星都が先陣を切る。光帝剣エンデゥラスの能力は時間。速度を上げての速攻は有効だ。
 銀と青の残像を残し星都は半蔵にエンデゥラスを打ちつけた。

 金属がぶつかり合う音が響く。星都の攻撃は半蔵のナイフによって防がれていた。それも片手で。悠々と星都の剣を受け止めている。

 星都も速かったが、半蔵の動きも尋常じゃなかった。腕は消えたかのように動き星都の攻撃を防いだんだ。

「この男も加速するのか」
「ちぃ!」

 星都は再び攻撃した。何度も光帝剣を振るっていく。しかしそのことごとくを半蔵は防ぐ。半蔵は構えてすらいない。棒立ちのまま片手だけを動かし受け止めていく。二人の攻防は次元が違い猛スピードで剣撃の音が聞こえてくる。

「俺たちもいくぞ!」

 戦っている二人に駆けだした。パーシヴァルを振り上げ打ちつける。

 だが半蔵は反対側の手で受け止めるだけでなく切り返してきた。その速度に反応できず腕を切られてしまう。

「ぐう!」
「聖治君!」

 痛みに膝を付く。香織が駆け寄りディンドランで傷を治してくれた。その間星都と力也が半蔵を追い打ちしていく。力也のグランが振るわれさすがの半蔵も距離を取っていた。

 半蔵が下がりながら腕を振るう。投擲だ。ナイフを投げつけ力也を狙っている。

 だがそれを星都が打ち落とした。そのまま半蔵に向かっていく。

 後退した半蔵と星都で激しい追走劇が行われていた。高速道路を縦横無尽に駆け巡りぶつかっていく。速い。まるでツバメ同士が飛んでいるようで目で追うのがやっとだ。

 二人は一旦離れると地面を蹴り真っ向からぶつかった。空中で激しい音が響き二人は離れながら地面に着地した。

「くそ。あいつ速いぞ」
「お前も十分速いよ」

 俺たちは最初の立ち位置に戻り半蔵と再び対峙した。半蔵も同じ位置に戻り両手をぶら下げているがその手にはナイフが握られている。拾ったわけじゃない。別のナイフを取り出したんだ。

 星都なら半蔵の動きについていけるが攻め手に欠ける。力也のグランならいけるかもしれないが半蔵の加速に追いつけない。どうする? これをうまく組み合わせないとこいつには勝てない。こっちは四人いるんだ、なんとかして繋げないと。

「やる気になっているな。その戦意をセブンスソードに回してもらえたらよかったのだが」

 そこで半蔵が話しかけてきた。俺たちの戦意が伝わったのかそんなことを言ってくる。

「んなわけあるか。戦意を起こすのは動機だ。それが違えばやる気だって変わる。そんなことも分からないのか」
「そうだな」

 半蔵の静観な顔つきはなにを考えているのか分かり辛い。だがその声からは少しだけ後悔のようなものを感じた。

「間違っているのは、我々の方なのかもしれん。いや、非道なのは分かっていた」
「ならなぜ!」
「だが」

 しかしそれも一瞬で、すぐにそんなものは消え去った。

「私たちにはこれしかない。一刻も早く剣聖の復活をする必要がある」
「剣聖の復活?」

 待て、話が違う。セブンスソードは新たな団長を作り出すための儀式じゃなかったのか? それとも団長を単に剣聖と呼んでいるのか?

 剣聖とは魔卿騎士団団長、グレゴリウスの二つ名だ。

 違和感がある。俺は、なにか思い違いをしているのか?

「君たちには申し訳ないが犠牲がなくてはこの儀式は完結しない。そして、私は君たちと戦う気はない」
「ほう、だったらなんだって?」

 星都が前に出る。いつでも切り込む構えだ。今のところ半蔵と対等にやり合えるのは星都しかいない。その他にも俺たちには力也や香織がいる。

 それでもなお、半蔵は静かだった。

「処刑だ」

 半蔵が片手を振るいナイフを投げつけてきた。半蔵が使う加速魔術によってそれは高速で射出される武器と変わらない。

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