セブンスソード

奏せいや

47

 二人も殺しておいて、魔来名には興奮も悪びれた様子もない。挑発かもしれないけれど本気でいつでも殺せると思っているんだ。

「聖治君はここにいて」
「沙城さん!」

 彼女は走った。エンデゥラスにより加速した彼女の体が長髪を浮かばせ夜の街に伸びる。
 さらに、その速度のままグランを振るった。

「ッ」

 この一撃には魔来名も躱すことができず咄嗟に天黒魔の刀身で受け止めた。だがそれはさきほどまでのエンデゥラスの攻撃じゃない、重量のグランの攻撃だ。

 魔来名は足が地面から離れ大きく吹き飛ばされていった。地面に叩きつけられてからも何度も転がっていく。

 が、回転の途中で足を付き立ち上がった。ダメージはほとんどない。まるで回転することによってダメージを逃がしていたような感じだ。

 さらに沙城さんが追撃する。瞬時の間に光帝剣を何度も振るい、グランの重い一撃を放つ。その後すぐにエンデゥラスの攻撃に入る。

 連撃と重撃の波状攻撃、二つのスパーダによる二つの能力だからこそできる攻撃だ。

 魔来名はエンデゥラスの攻撃を刀身と鞘を以って防ぎ、グランを紙一重でかわしていく。剣風と爆風、破片と剣閃入り乱れるまさに爆心地の中にあって、魔来名は単純な剣術のみで対抗していた。

 強い。俺だったらこんなの耐えるまでもなく斬られるか吹き飛ばされているのに。それを刀と鞘だけで捌ききるなんて。

 エンデゥラスとグランだけでは押し切れないことに沙城さんの表情からも焦りが出始めている。

 沙城さんはエンデゥラスで魔来名に斬り込んだ。それを魔来名は刀身と鞘で受け止めた。エンデゥラスで牽制することによって天黒魔を封じている。その隙にグランを背中に回した。

「は!」

 が、魔来名の足蹴りによって体勢が崩さる!

「くっ」

 体が斜めに滑り倒れていく。その間、

「もらった」

 魔来名が天黒魔を振った。黒の刀身が走り、紫のオーラが塗りつぶしていく。

「沙城さん!」

 エンデゥラスは鞘によって封じられグランでは間に合わない。防ぐ手段がない! 駄目だ!

「ディンドラン!」

 そう思った時、彼女の正面を桃色のベールが覆った。

「ん!?」

 レンズ状の光の膜が盾となり迫る漆黒とぶつかった。天黒魔は弾かれ魔来名は後退、その間に沙城さんは体勢を元に戻した。

「今のは」

 突然現れた光の壁が、沙城さんを守った? 

 あれは、そうか。沙城さんが言っていた、スパーダの能力には段階があって、スパーダを得ることによって解放されていくと。

 沙城さんはスパーダを三本持っている。それによって新たな能力が使えるようになったんだ。

 傷を治すだけじゃない。未然に防ぐ力、盾としての能力を手に入れたのか。

 魔来名は一旦刀を鞘に戻し沙城さんを見つめている。彼女が使っているのは二刀流だが、見えない三本目、実質三刀ある。二つで攻めて、一つで守る。攻守揃った力だ。

 これならいけるかもしれない。倒すのは難しいかもしれないが攻め手なら勝っているんだ、持久戦になれば先に沙城さんが取れる。防御こそ最大の攻撃というが、ディンドランのおかげで魔来名の勝ちの目はさらに薄まった。天黒魔の攻撃をディンドランですべて防げるなら完封だってできる。

 魔来名は強い。剣術や体術だけで二つのスパーダと拮抗したんだから、悔しいがそれは認めるしかない。でもさすがにこの差は圧倒的。

「ふん」

 魔来名が鼻を鳴らした。

「いつでも殺せると見くびったか」
「負け惜しみ? 後悔しても手は抜かないわ」
「そうだな」

 魔来名は苦しい。沙城さんの攻撃には押され、せっかくの反撃も弾かれる。これでは勝ち筋がない。
 追い込つめた。この敵を。

「反省しよう。驕(おご)り過ぎたようだ。まさか、初戦からこうも使うことになるとはな」
「?」

 魔来名は腰を下ろし、居合の構えを取った。

 直後だった。鞘に納められた天黒魔から紫のオーラが溢れ出た。激しく噴出する膨大なオーラは魔来名を中心に風を巻き起こし、なおもその量を増やしていく。

 すごい迫力だ。一人じゃない。まるで数十人もの人間を一人に圧縮したかのような存在感がある。対面しているだけで圧倒される。

「逃げてええ!」

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