セブンスソード
22
それを聞くと星都は両手を上げ背中を向けた。どうも納得してないみたいだ。
彼女に対して失礼だと注意しようかとも思ったが、正直俺も星都とほとんど同じ気持ちだった。
「ホムンクルス、と言われても」
「すぐに信じられないのは分かる。でもほんとうなの、信じてくれない?」
「んん」
彼女が冗談で言っているようには見えない。が、んー。
「じゃあ聞くがよ、そのホムンクルスと人間を見分ける方法は? この場でホムンクルスだと証明できるのか?」
「それは……」
星都の質問に沙城さんがたじろいでいる。
「私たちはホムンクルスだとバレないように作られているから、人間との違いをこの場で証明するのは」
「あー、なるほど。便利な言い訳だな」
「星都」
「だってだぜ?」
まあ、星都の言い分も分かる。こんな訳の分からない事態に巻き込まれ、こんな荒唐無稽(こうとうむけい)なことを言われているんだ、腹も立ってくるだろう。
「あ、でも!」
そこで思いついたように沙城さんが声を上げた。
「あまりここですべきことではないんだけど、それなら一つ方法がある」
「裸になって生殖器官があるか確認するとか?」
「…………」
その発言にはさすがに俺も引いた。
「んだよ! アンドロイドとかならそうだろ!」
「沙城さん、教えてくれ」
「無視すんなよ!」
「あー、分かった分かった」
ほっといてもうるさいのであいまいに相づちしておく。
「私たち、セブンスソードの参加者であるホムンクルスはスパーダと呼ばれるんだけど」
スパーダ。確か剣のイタリア語読みだな。あの後調べてみたら出てきた。
「スパーダには一人一つずつ、同じくスパーダと呼ばれる魔法剣が与えられているんだ。それを出そうと念じれば出せるはずだよ」
俺たちは三人で顔を見合わせる。納得してる顔は一つもない。
「なあ、それって朝になったら大きくなってるやつじゃないよな?」
「星都、本気で殴るぞ」
「?」
沙城さんは分からないようで小首を傾げている。
「沙城さん、そのスパーダっていうのは、昨日君が出してた……」
「うん」
「昨日? そういえば襲われた時転校生が助けてくれたとか言ってたな。じゃあ、あんたはそのスパーダが出せるのか?」
「うん、もちろん」
自信を滲ませて言う彼女だが星都はまだ信じていない。
俺はこの目で見ているがそうでない二人は仕方がない。
「沙城さん、ここでそれを見せてくれないか? たぶんそれが一番早い」
「でも」
「ここなら他の棟からも見えないよ。目立たないようにすれば大丈夫だから」
「聖治君が、そう言うなら」
彼女は心配しているようだがなんとか了承してくれた。
沙城さんは片手を胸に当てた。目をつぶり、厳かな声で告げる。
雰囲気が変わった。なんだろう、緊張感が一気に走りつい身構えてしまう。
沙城さんは目を瞑り、祈るようにしてその名を告げた。
「きて、守護剣・ディンドラン」
つぶやいた後、それは彼女の正面に現れた。
一瞬光が発したかと思えば、そこには一本の剣が浮いていた。
西洋の剣だった。刀身がピンク色をしておりかなり珍しい剣だと思う。
「マジか!」
「す、すごいんだな~」
彼女はそれを手に取る。その輝きに目を奪われる。
魔法剣、スパーダ。これが普通のものとは違うというのが感覚的に分かる。
なにより、この剣には物騒な感じが一切しなかった。剣なんてナイフよりも怖いはずなのに、彼女が持っていてもそうした印象がまるでない。
むしろ癒されるようだ。桃色の光はどこか優しく、見ているだけで落ち着いてくる。
「これが私のスパーダ。ディンドラン。スパーダは念じることで出したり消せたりできるだけど、それだけじゃなくて固有の能力を持っているの。私のスパーダは回復とか防御が得意かな」
彼女の説明を聞きながらディンドランをまじまじと見つめる。星都と力也も目が釘付けになっていた。
「これ、俺たちも出せるのか?」
「うん。セブンスソードが始まった今なら出せるはずだよ」
「マジかよ!」
星都がおおはしゃぎで驚いている。なんだか楽しんでないか、こいつ。
「念じる以外にやり方は?」
「特にこれといってないはずだよ。ただ剣を出そうと念じれば出せるから」
「おいおいマジかよ~」
そうは言いつつも期待してるのが分かる。星都は目をつぶり片手を胸に当てた。
まさか、本当に? 沙城さんを疑うようで悪いが念じただけで剣が出てくるのか?
星都の様子を固唾を飲んで見守る。出来るのか、出来ないのか。見ているこっちが緊張する。
星都は真剣な顔で念じているようだが、そこで眉間にしわが寄った。
「? どうした?」
「これは……」
なにか引っかかることが?
星都は胸に当てていた拳を解き前へと伸ばした。
そして、慎重に触れるように、その名を告げた。
「来い、光帝剣・エンデゥラス」
瞬間、星都の正面に光が現れ、消えるとそこには一本の剣が浮いていた。
「おお!」
本当に出てきた!
星都の剣も沙城さんと同じく西洋の剣だった。全体的に水色がかったデザインをしている。
「やったな星都! すごいじゃないか!」
「星都君すごいんだなぁー!」
成功した星都を俺と力也が祝うが当の本人は剣を持ち眺めるだけで黙っている。
「……お、おお」
どうやらいろいろ通り越しているみたいだな。
そりゃそうだ、こんなこと自分でも出来たんだ。驚きとか特別感とかわき上がる感情がたくさんある。俺も悔しいが羨ましさを感じてる。
「よ、よっしゃー!」
遅れて星都が飛び跳ねた。その場でガッツポーズを取ると出したばかりのスパーダで素振りする。その感触を確かめるように。その様は飛行機のおもちゃで遊ぶ子供のそれだ。
「あ、あの! そんなに振り回しちゃ。危ないし誰かに見つかったら」
「ああ、わりいわりい」
彼女に対して失礼だと注意しようかとも思ったが、正直俺も星都とほとんど同じ気持ちだった。
「ホムンクルス、と言われても」
「すぐに信じられないのは分かる。でもほんとうなの、信じてくれない?」
「んん」
彼女が冗談で言っているようには見えない。が、んー。
「じゃあ聞くがよ、そのホムンクルスと人間を見分ける方法は? この場でホムンクルスだと証明できるのか?」
「それは……」
星都の質問に沙城さんがたじろいでいる。
「私たちはホムンクルスだとバレないように作られているから、人間との違いをこの場で証明するのは」
「あー、なるほど。便利な言い訳だな」
「星都」
「だってだぜ?」
まあ、星都の言い分も分かる。こんな訳の分からない事態に巻き込まれ、こんな荒唐無稽(こうとうむけい)なことを言われているんだ、腹も立ってくるだろう。
「あ、でも!」
そこで思いついたように沙城さんが声を上げた。
「あまりここですべきことではないんだけど、それなら一つ方法がある」
「裸になって生殖器官があるか確認するとか?」
「…………」
その発言にはさすがに俺も引いた。
「んだよ! アンドロイドとかならそうだろ!」
「沙城さん、教えてくれ」
「無視すんなよ!」
「あー、分かった分かった」
ほっといてもうるさいのであいまいに相づちしておく。
「私たち、セブンスソードの参加者であるホムンクルスはスパーダと呼ばれるんだけど」
スパーダ。確か剣のイタリア語読みだな。あの後調べてみたら出てきた。
「スパーダには一人一つずつ、同じくスパーダと呼ばれる魔法剣が与えられているんだ。それを出そうと念じれば出せるはずだよ」
俺たちは三人で顔を見合わせる。納得してる顔は一つもない。
「なあ、それって朝になったら大きくなってるやつじゃないよな?」
「星都、本気で殴るぞ」
「?」
沙城さんは分からないようで小首を傾げている。
「沙城さん、そのスパーダっていうのは、昨日君が出してた……」
「うん」
「昨日? そういえば襲われた時転校生が助けてくれたとか言ってたな。じゃあ、あんたはそのスパーダが出せるのか?」
「うん、もちろん」
自信を滲ませて言う彼女だが星都はまだ信じていない。
俺はこの目で見ているがそうでない二人は仕方がない。
「沙城さん、ここでそれを見せてくれないか? たぶんそれが一番早い」
「でも」
「ここなら他の棟からも見えないよ。目立たないようにすれば大丈夫だから」
「聖治君が、そう言うなら」
彼女は心配しているようだがなんとか了承してくれた。
沙城さんは片手を胸に当てた。目をつぶり、厳かな声で告げる。
雰囲気が変わった。なんだろう、緊張感が一気に走りつい身構えてしまう。
沙城さんは目を瞑り、祈るようにしてその名を告げた。
「きて、守護剣・ディンドラン」
つぶやいた後、それは彼女の正面に現れた。
一瞬光が発したかと思えば、そこには一本の剣が浮いていた。
西洋の剣だった。刀身がピンク色をしておりかなり珍しい剣だと思う。
「マジか!」
「す、すごいんだな~」
彼女はそれを手に取る。その輝きに目を奪われる。
魔法剣、スパーダ。これが普通のものとは違うというのが感覚的に分かる。
なにより、この剣には物騒な感じが一切しなかった。剣なんてナイフよりも怖いはずなのに、彼女が持っていてもそうした印象がまるでない。
むしろ癒されるようだ。桃色の光はどこか優しく、見ているだけで落ち着いてくる。
「これが私のスパーダ。ディンドラン。スパーダは念じることで出したり消せたりできるだけど、それだけじゃなくて固有の能力を持っているの。私のスパーダは回復とか防御が得意かな」
彼女の説明を聞きながらディンドランをまじまじと見つめる。星都と力也も目が釘付けになっていた。
「これ、俺たちも出せるのか?」
「うん。セブンスソードが始まった今なら出せるはずだよ」
「マジかよ!」
星都がおおはしゃぎで驚いている。なんだか楽しんでないか、こいつ。
「念じる以外にやり方は?」
「特にこれといってないはずだよ。ただ剣を出そうと念じれば出せるから」
「おいおいマジかよ~」
そうは言いつつも期待してるのが分かる。星都は目をつぶり片手を胸に当てた。
まさか、本当に? 沙城さんを疑うようで悪いが念じただけで剣が出てくるのか?
星都の様子を固唾を飲んで見守る。出来るのか、出来ないのか。見ているこっちが緊張する。
星都は真剣な顔で念じているようだが、そこで眉間にしわが寄った。
「? どうした?」
「これは……」
なにか引っかかることが?
星都は胸に当てていた拳を解き前へと伸ばした。
そして、慎重に触れるように、その名を告げた。
「来い、光帝剣・エンデゥラス」
瞬間、星都の正面に光が現れ、消えるとそこには一本の剣が浮いていた。
「おお!」
本当に出てきた!
星都の剣も沙城さんと同じく西洋の剣だった。全体的に水色がかったデザインをしている。
「やったな星都! すごいじゃないか!」
「星都君すごいんだなぁー!」
成功した星都を俺と力也が祝うが当の本人は剣を持ち眺めるだけで黙っている。
「……お、おお」
どうやらいろいろ通り越しているみたいだな。
そりゃそうだ、こんなこと自分でも出来たんだ。驚きとか特別感とかわき上がる感情がたくさんある。俺も悔しいが羨ましさを感じてる。
「よ、よっしゃー!」
遅れて星都が飛び跳ねた。その場でガッツポーズを取ると出したばかりのスパーダで素振りする。その感触を確かめるように。その様は飛行機のおもちゃで遊ぶ子供のそれだ。
「あ、あの! そんなに振り回しちゃ。危ないし誰かに見つかったら」
「ああ、わりいわりい」
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