セブンスソード

奏せいや

17

 彼女の声は力強い。それだけ俺のことを思ってくれているのが分かる。

 でも、だからといって戦うなんて。

「沙城さん、駄目だ!」

 この男は危険すぎる。平気で人を刺すやつだぞ。そんなやつに沙城さんまでやられたら。そんなのは嫌だ。

 すると沙城さんが振り返った。その顔は、小さく笑っていた。

「前!」

 が、その隙を男は見逃さない。

 槍が沙城さんに迫っていた。刺さる!?

「ふん!」

 だがそれが分かっていたのか沙城さんは向き直るよりも早くに回避していた。男をにらみ次の攻撃を剣で受ける。

「聖治君は逃げて!」

 そう言って彼女は踏み込んだ。

 目の前では襲撃してきた男と沙城さんが戦っている。どちらも本物の武器で下手すれば怪我じゃ済まない、死んでしまう。それに剣と槍じゃ間合いが違う、明らかに不利だ。

 だけど、そんな中で沙城さんは善戦していた。

 その姿に息を飲む。

 男が繰り出す突きを剣で払い、もしくは躱していく。彼女の体が横にずれ流れる長髪を槍の先端が通過していく。もし遅れていたら顔面に刺さっていたのに、沙城さんは怯えることなく男を真っすぐと見つめている。

 槍と剣がぶつかる音が響く。その度にステップを踏む沙城さんは踊っているようにも見えた。

「なかなかやるな」

 すごい剣技だ、素人の俺でも分かる。対戦している男はもっとだろう。

「じゃあこれはどうだ?」

 男が片手を上げる。

 すると、上空にいくつもの槍が現れた。十本近くもの槍が刃を沙城さんに向け浮いている。

「そんな!?」

 なんだよあれ、あいつは槍を空間に出したり操ったりできるのか? 間合いまで違うのに、数まで違うなんて。

 男が掲げた手を沙城さんへ倒す。それで浮かんでいた槍が一斉に飛んでいった。

 沙城さんに槍が迫る。それらを打ち落とし開いたスペースに体を入れた。

「ぐ!」

 その際横切った槍のいくつかが彼女の肌を切り裂いた。

 彼女の頬と太ももから血が流れる。傷は深くなさそうだけど、このままじゃ。

「ディンドラン!」

 すると彼女の剣が光った。桃色のその光は彼女の傷を覆っていきみるみると傷が治っていく。

「すごい」

 そのまま彼女は走り出し男との距離を詰める。沙城さんは剣を振り下ろした。

 男は両手に持った槍の柄でそれを受ける。沙城さんの剣を押し返しさらに槍で殴りつける。沙城さんの剣がそれを受けるが吹き飛ばされてしまった。足が地面を離れすごい勢いで飛んでいく。

 その後ろには男が投げつけた槍が地面に突き刺さっていた。沙城さんは吹き飛ばされる最中その槍を掴みさらに足を引っかける。そのまま槍で体を回し方向転換するとその槍を足場にして上空へと飛んだ。

 沙城さんの体は男の頭上より遥か上にいる。そこから剣を投げつけた。

「ハッ」

 沙城さんの一投はしかし男の振るった槍によって弾かれてしまった。これじゃ無防備だ、そのまま沙城さんは落下していく。まずい、刺される!

「戻れ、ディンドラン!」

 が、そうはならなかった。

 彼女の呼び声に応じ桃色の剣は発光すると次の瞬間には沙城さんの手に握られていた。男は槍を振った体勢で頭上ががら空きだ。

 やった! 決まる!

 沙城さんの渾身の一撃が男に叩き込まれた。

「そんな!?」

 だけど、その攻撃はまたも空間から現れた槍によって防がれてしまった。

 これで何本目だよ。突如現れる槍に攻撃と防御にと翻弄(ほんろう)される。

 槍によって防がれたことで沙城さんの胴体に隙ができている。そこへ男は自分が握っている槍を振るい殴りつけた。

「ぐう!」

 沙城さんの体が地面に転がる。すぐに起き上がり膝を付くも苦しそうだ。

「やっぱり、一本だけじゃ……」

 彼女の腹部は桃色の光で包まれている。それでも彼女は悔しさに表情を歪めていた。
 そんな沙城さんを男は陽気に見つめている。

「お前は見所があるな。それにずいぶんとスパーダの扱いに慣れてるじゃねえか。戦闘は初めてじゃないな」

 地面に突き刺さっていた槍や空間に固定された槍が消えていく。男は槍を回し地面に突き立てた。

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