セブンスソード
16
戦いたい。力が欲しい。それで、この男を倒したい。
そこで、胸に重りのようなものを感じた。
なんだ、これは? 胸になにかが突き刺さっているこの感じ。やろうと思えば、それを引き抜ける感覚がした。
「やる気を出したのはよかったが、遅かったな」
でも、遅かった。男が持ち上げた腕には槍が握られておりその矛先は俺の手の平ごと顔面を突こうとしていた。
どんなに気持ちが叫んでいてもけっきょくはどうにもならない。向けられた刃が動き出す。
夕焼けのオレンジが、まぶしい。
瞬間、金属同士がぶつかった。
「え」
「なに」
「聖治君に!」
さらに、女の子の声が聞こる。
「なにしてるのよ!」
男の槍が弾かれる。そのまま後退していく。
「君は」
視界に広がるのは夕焼けの空。
そして、流れるように揺れる明るい長髪だった。
「沙城……香織さん……?」
転校生の、沙城香織の後ろ姿だった。
なんで? どうしてここに彼女がいる? それに。
なにより彼女が持っているものに目が釘付けになる。
彼女の手には剣が握られていた。まるでファンタジー世界に出てくるような形をしている。それも刀身がピンク色に輝き、殺伐とした雰囲気なのにその剣は温かい光を放っている。
「なにをしている、か」
男は彼女から離れた距離で槍を構えている。突如現れた彼女にも平然だ。
「どう、して……」
腹の痛みに耐えてなんとか口にする。聞きたいことがたくさんある。だけどうまく頭が働かない。
沙城さんは背中を俺に向けたまま男と対峙している。
「聖治君はここにいて」
なんで、平然としていられる? 怖くないのか? 戦うのか? こいつを知ってるのか?
沙城さんは歩き男に近づいていく。それでも間合いの外になるよう立ち止まる。
「そりゃそうだよな、そいつはお前の獲物だ。横取りされちゃたまらないよな」
「そんなつもりはありません」
槍を持つ男を前にしても沙城さんは気丈にしている。
「へえ、じゃあどうしようって?」
「そんなことよりもあなたは管理人のはずでしょう。それがスパーダを手にかけようとはどういうことです? 聞いていた話とずいぶん違うようですが」
「あー」
バツが悪そうに男は顔を逸らした。
「まあなんだ、今のは事故みたいなもんだ。本意じゃない、気にしないでくれ」
男は空いた手をふらふらと振る。俺を殺そうとしたのに。どこまでもふざけた男だ。
「事故?」
「ん?」
その時沙城さんから声が漏れた。
「そんな理由で……」
だんだんと声に熱がこもっていく。
怒ってくれているのか? 俺のために?
「そんな理由で、聖治君を傷つけたって?」
彼女から伝わってくる思いが嬉しかった。
なぜ俺を知っていて、なぜ助けてくれるのか。そんなことどうでもいい。
ただ、彼女の存在が嬉しかった。
沙城さんは男に指を突きつける。
「倒れるのはあなたの方よ」
「ウ~」
彼女からの挑戦に男がおどけて見せる。
「気の強い女は嫌いじゃないぜ。そして」
男は槍を彼女に向ける。向けられただけで身が竦むほどの凶器。
「こういう展開もな」
相手もやる気だ。それどころか楽しんでさえいる。
まずい。そんな相手と彼女を戦わせられない。殺される!
なのに、彼女は一歩も退かない。
俺を守るために立つその後ろ姿は、美しかった。
「守護剣、ディンドラン」
彼女が握る剣が一層強く光った。まるで彼女の思いと連動しているようだ。
「聖治君は、私が守る」
そこで、胸に重りのようなものを感じた。
なんだ、これは? 胸になにかが突き刺さっているこの感じ。やろうと思えば、それを引き抜ける感覚がした。
「やる気を出したのはよかったが、遅かったな」
でも、遅かった。男が持ち上げた腕には槍が握られておりその矛先は俺の手の平ごと顔面を突こうとしていた。
どんなに気持ちが叫んでいてもけっきょくはどうにもならない。向けられた刃が動き出す。
夕焼けのオレンジが、まぶしい。
瞬間、金属同士がぶつかった。
「え」
「なに」
「聖治君に!」
さらに、女の子の声が聞こる。
「なにしてるのよ!」
男の槍が弾かれる。そのまま後退していく。
「君は」
視界に広がるのは夕焼けの空。
そして、流れるように揺れる明るい長髪だった。
「沙城……香織さん……?」
転校生の、沙城香織の後ろ姿だった。
なんで? どうしてここに彼女がいる? それに。
なにより彼女が持っているものに目が釘付けになる。
彼女の手には剣が握られていた。まるでファンタジー世界に出てくるような形をしている。それも刀身がピンク色に輝き、殺伐とした雰囲気なのにその剣は温かい光を放っている。
「なにをしている、か」
男は彼女から離れた距離で槍を構えている。突如現れた彼女にも平然だ。
「どう、して……」
腹の痛みに耐えてなんとか口にする。聞きたいことがたくさんある。だけどうまく頭が働かない。
沙城さんは背中を俺に向けたまま男と対峙している。
「聖治君はここにいて」
なんで、平然としていられる? 怖くないのか? 戦うのか? こいつを知ってるのか?
沙城さんは歩き男に近づいていく。それでも間合いの外になるよう立ち止まる。
「そりゃそうだよな、そいつはお前の獲物だ。横取りされちゃたまらないよな」
「そんなつもりはありません」
槍を持つ男を前にしても沙城さんは気丈にしている。
「へえ、じゃあどうしようって?」
「そんなことよりもあなたは管理人のはずでしょう。それがスパーダを手にかけようとはどういうことです? 聞いていた話とずいぶん違うようですが」
「あー」
バツが悪そうに男は顔を逸らした。
「まあなんだ、今のは事故みたいなもんだ。本意じゃない、気にしないでくれ」
男は空いた手をふらふらと振る。俺を殺そうとしたのに。どこまでもふざけた男だ。
「事故?」
「ん?」
その時沙城さんから声が漏れた。
「そんな理由で……」
だんだんと声に熱がこもっていく。
怒ってくれているのか? 俺のために?
「そんな理由で、聖治君を傷つけたって?」
彼女から伝わってくる思いが嬉しかった。
なぜ俺を知っていて、なぜ助けてくれるのか。そんなことどうでもいい。
ただ、彼女の存在が嬉しかった。
沙城さんは男に指を突きつける。
「倒れるのはあなたの方よ」
「ウ~」
彼女からの挑戦に男がおどけて見せる。
「気の強い女は嫌いじゃないぜ。そして」
男は槍を彼女に向ける。向けられただけで身が竦むほどの凶器。
「こういう展開もな」
相手もやる気だ。それどころか楽しんでさえいる。
まずい。そんな相手と彼女を戦わせられない。殺される!
なのに、彼女は一歩も退かない。
俺を守るために立つその後ろ姿は、美しかった。
「守護剣、ディンドラン」
彼女が握る剣が一層強く光った。まるで彼女の思いと連動しているようだ。
「聖治君は、私が守る」
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