セブンスソード
13
彼女はなんだか緊張しているようだ。両手の指を絡ませ目は下を向いている。でも表情はなんだか嬉しそうで、そう見えるのは俺の期待し過ぎだろうか。
それで彼女は顔を上げると俺をまっすぐに見つめてきた。
「久しぶり、だね?」
「え?」
あれ、どうして。俺たち会うの初めてだよな?
最初俺を見て驚いた時から不思議だったけど、もしかして知り合いなのか?
「え、聖治君、だよね?」
名前まで知ってる。単なる人違いじゃない。
「どうして俺の名前を?」
「え!?」
「え?」
名前を知っていることに驚いたわけだが、なぜだか彼女まで驚いている。
「あ、ごめん。もしかして俺たち会ったことあったかな?」
俺に覚えはないがそうとしか考えられない。でも彼女ほど目立った容姿をしている女の子がいたら忘れないと思うんだけどな。
「…………」
「あの、沙城さん?」
沙城さんは固まったままなにも言わなかった。表情が驚いたまま石になったみたいだ。
「ご、ごめん! ショックだった?」
沙城さんはよほどショックだったみたいで目を大きくしている。まさかそんな反応をするなんて。悪気があったわけじゃないんだがその、申し訳ない気持ちになる。
「そんな……、覚えてないの? 私のこと?」
「うーん……」
そう言われても。本当に申し訳ないんだが俺の記憶データに該当する人物はいない。
「その、ごめん……」
素直に頭を下げる。せっかくむこうは覚えてくれているのに俺が思い出せないなんて。
「そんな……」
沙城さんは俺から一歩二歩と下がっていく。その後顔を下に向けていた。額に手を当てている。かなりショックみたいだ。彼女の様子がとても心苦しい。
でもまさか、沙城さんが俺のことを知っているなんて意外というか、驚きだ。だってそうだろ? 噂の美少女転校生が俺の知り合いだって? どこの漫画だよ、小さいころ公園で遊んで子供の約束で婚約してたとか? その約束を今でも守ろうとしてるとか? やばいな、漫画の量を減らすか。
「あの、沙城さん? 覚えてなくてほんっとごめん。よければ教えてくれないかな? そうすれば俺も思い出せるかもしれないし」
これでほんとに子供のころ遊んだことがあって、なんて展開なら間違いなく俺はラブコメ漫画の主人公なんだけどな。
それで聞いてみたんだが、沙城さんはなかなか答えてくれなかった。それどころか一人でなにやら呟いている。
「跳躍(ちょうやく)の影響かな? それか騎士団の工作? まさか裏切り者が? 二本のロストスパーダって、それのせいで」
「あのー、沙城さん?」
彼女の言っていることはあまり聞き取れない。なんの話をしているんだろうか。
「聖治君、お願い、思い出して!」
「うお」
と、彼女が近づいてきた。かなり近い。
「ほんとに分からないの? 私だよ、沙城香織。聖治君の恋人でずっと一緒だったでしょ? 同じもの食べたりたくさんお喋りもしたし、聖治君の写真何枚も持ってる。友達と話してるところとか一人で夕日を見てるところとか百枚近く撮ったもん。まあ、付き合う前から盗撮してたからそれだけあるっていうのもあるけど」
「…………」
沙城さんが俺から離れる。
「ごめん、今のは全部嘘。全部忘れて」
「あー、そうした方が良さそうだな」
大丈夫かこの子?
彼女が必死なんだということは分かる。でも思い出せないものは思い出せない。
沙城さんはどうするかかなり迷っているようで俯いてはいろいろ思案していた。話していいものか考えている。
それで沙城さんは俺を見ると、慎重に話し出した。
「聖治くん、その」
「うん」
「信じられないと思うけど、まずは私の話を聞いてほしいの」
話がぜんぜん分からん。
「分かった。まずは話を聞かせてもらうよ」
とりあえずこう言うしかないだろう。さっきのは気の迷いから出た妄言だと切り捨てるしかない。
「ほんと?」
「少なくとも、頭ごなしに否定したりなんてしないよ」
それで彼女は顔を上げると俺をまっすぐに見つめてきた。
「久しぶり、だね?」
「え?」
あれ、どうして。俺たち会うの初めてだよな?
最初俺を見て驚いた時から不思議だったけど、もしかして知り合いなのか?
「え、聖治君、だよね?」
名前まで知ってる。単なる人違いじゃない。
「どうして俺の名前を?」
「え!?」
「え?」
名前を知っていることに驚いたわけだが、なぜだか彼女まで驚いている。
「あ、ごめん。もしかして俺たち会ったことあったかな?」
俺に覚えはないがそうとしか考えられない。でも彼女ほど目立った容姿をしている女の子がいたら忘れないと思うんだけどな。
「…………」
「あの、沙城さん?」
沙城さんは固まったままなにも言わなかった。表情が驚いたまま石になったみたいだ。
「ご、ごめん! ショックだった?」
沙城さんはよほどショックだったみたいで目を大きくしている。まさかそんな反応をするなんて。悪気があったわけじゃないんだがその、申し訳ない気持ちになる。
「そんな……、覚えてないの? 私のこと?」
「うーん……」
そう言われても。本当に申し訳ないんだが俺の記憶データに該当する人物はいない。
「その、ごめん……」
素直に頭を下げる。せっかくむこうは覚えてくれているのに俺が思い出せないなんて。
「そんな……」
沙城さんは俺から一歩二歩と下がっていく。その後顔を下に向けていた。額に手を当てている。かなりショックみたいだ。彼女の様子がとても心苦しい。
でもまさか、沙城さんが俺のことを知っているなんて意外というか、驚きだ。だってそうだろ? 噂の美少女転校生が俺の知り合いだって? どこの漫画だよ、小さいころ公園で遊んで子供の約束で婚約してたとか? その約束を今でも守ろうとしてるとか? やばいな、漫画の量を減らすか。
「あの、沙城さん? 覚えてなくてほんっとごめん。よければ教えてくれないかな? そうすれば俺も思い出せるかもしれないし」
これでほんとに子供のころ遊んだことがあって、なんて展開なら間違いなく俺はラブコメ漫画の主人公なんだけどな。
それで聞いてみたんだが、沙城さんはなかなか答えてくれなかった。それどころか一人でなにやら呟いている。
「跳躍(ちょうやく)の影響かな? それか騎士団の工作? まさか裏切り者が? 二本のロストスパーダって、それのせいで」
「あのー、沙城さん?」
彼女の言っていることはあまり聞き取れない。なんの話をしているんだろうか。
「聖治君、お願い、思い出して!」
「うお」
と、彼女が近づいてきた。かなり近い。
「ほんとに分からないの? 私だよ、沙城香織。聖治君の恋人でずっと一緒だったでしょ? 同じもの食べたりたくさんお喋りもしたし、聖治君の写真何枚も持ってる。友達と話してるところとか一人で夕日を見てるところとか百枚近く撮ったもん。まあ、付き合う前から盗撮してたからそれだけあるっていうのもあるけど」
「…………」
沙城さんが俺から離れる。
「ごめん、今のは全部嘘。全部忘れて」
「あー、そうした方が良さそうだな」
大丈夫かこの子?
彼女が必死なんだということは分かる。でも思い出せないものは思い出せない。
沙城さんはどうするかかなり迷っているようで俯いてはいろいろ思案していた。話していいものか考えている。
それで沙城さんは俺を見ると、慎重に話し出した。
「聖治くん、その」
「うん」
「信じられないと思うけど、まずは私の話を聞いてほしいの」
話がぜんぜん分からん。
「分かった。まずは話を聞かせてもらうよ」
とりあえずこう言うしかないだろう。さっきのは気の迷いから出た妄言だと切り捨てるしかない。
「ほんと?」
「少なくとも、頭ごなしに否定したりなんてしないよ」
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