セブンスソード
7 プロローグ
なんで? なんで香織が!?
「見せしめだよ。それと供物さ。当然だろ、殺戮王は殺しを楽しんでる」
「楽しむ? 狂ってる!」
「馬鹿が。そんなこと思ってるからおまえ等はこんな目に遭うんだ」
処刑されるって? あんなので香織は殺されるのか? そんなの惨すぎる。肉が引き裂かれるんだぞ。どれだけ痛いのか、想像もできない。
「頼む、あの子を放してくれ。お願いだ! 殺すのだけはやめてくれ!」
「するわけないだろ、そんなことしたら俺たちが殺されちまうよ。悪魔が屋上で見張ってるだろ」
「そんな……!」
香織に目を向ける。風車の上で、今にも泣きそうだ。
「香織!」
「聖治君!」
彼女の瞳から、涙がこぼれ落ちる。その姿に周囲からは笑い声があがっていた。
歯をかみしめた。悔しさに頭が下がる。
これが、同じ人間のやることなのか? 信じられない。目の前で広がるこの狂宴が、人間のやることだって? 人はこんなにも残虐な生き物だってのかよ!
「なんで、なんでこんなことが平然とできるんだ? 同じ人間だろ? おまえ等には心がないのかよ!?」
「心? あるよ? 当たり前だろ。まったく。おまえみたいなことを言うやつには反吐が出る。いいか、世界は変わったんだ。重要なのはその世界でどう立ち回るかなんだよ」
そんな資格もないくせに、男が偉そうに言う。
「お前らも馬鹿だよな。さっさとこっち側につけばこうはならなかったのにさ」
はっはっはと笑っている。
「……ふざけるなよ」
「あ?」
気づけば口にしていた。だけど止めようとは思わなかった。
「馬鹿だ? ふざけんなあああ! お前らなんてただ銃があるだけのクズだろうが!」
「んだとガキ!」
頬を思いっきり殴られた。でも止めない。
「悪魔なんかにつきやがって。お前なんてその銃がなければただのクズだ、そうだろう! 人類を裏切って力に酔ってるだけの本当のクズだ! 馬鹿はお前の方だ! 良識も、良心も、人も捨てた、お前らは悪魔だ!」
腹を殴られる。足を蹴られる。どんどん痛みが加わっていく。
「止めてぇ!」
香織が叫ぶ声が衝撃の隙間に聞こえてくる。
悔しい。悔しい! こんな連中が笑い、俺たちが惨めに殺される。
悔しい。怒りや、憎しみがわき上がるのにそれをぶつけることもできない。
「回せ!」
「止めろ!」
合図の声が聞こえる。それにより風車がゆっくりと動き始めた。香織の体を引っ張っていく。
「ううう!」
「止めろぉおお!」
香織の悲鳴が聞こえる。大勢が歓声をあげる。
なんだよ、これ。なんで、どうして。
こんなの間違ってる。間違ってるだろ。いいわけないだろ!
「力さえあれば、この俺があ!」
無力な自分が悔しくて、彼女を傷つけるすべてを壊したかった。
人も。悪魔も。世界も。
すべて。
力さえあれば!
その時、うるさいほどだった音が、すべて消えていた。
「…………?」
なんだ、どうしたんだ? なんで誰もなにも言わないんだ?
近くに立つ男を見る。その顔は中央の処刑を楽しそうに見つめている。そのまま固まったように動かない。
他の連中もそうだ。まるで金縛りにあったようにぴたりと動きを止めている。まるで写真のようだ。すべてが止まってる。
「なんだよ……いったいなんなんだよ……」
薄暗い世界はさらに灰色となり、白黒の世界のようだ。
その時、足音が聞こえてきた。
道の向こうから、それは黒のロングコートを着て、フードを被っていた。
なんとも言えない不思議な印象を覚える。時間が止まった世界、そうでなくても処刑という異様な場面だというのにその人は悠然と歩いている。殺人を楽しむというこの場所ですら平然と。その静けさはまるで亡霊かと見紛うほどだ。
そのまま俺の前に近づいた。背は大きい。それにこうして近くで見て分かるけど体格もそれなりにしっかりしているのが分かる。見上げているが、顔は影になっていてよく見えない。
『君は、力が欲しいか?』
「ッ」
「見せしめだよ。それと供物さ。当然だろ、殺戮王は殺しを楽しんでる」
「楽しむ? 狂ってる!」
「馬鹿が。そんなこと思ってるからおまえ等はこんな目に遭うんだ」
処刑されるって? あんなので香織は殺されるのか? そんなの惨すぎる。肉が引き裂かれるんだぞ。どれだけ痛いのか、想像もできない。
「頼む、あの子を放してくれ。お願いだ! 殺すのだけはやめてくれ!」
「するわけないだろ、そんなことしたら俺たちが殺されちまうよ。悪魔が屋上で見張ってるだろ」
「そんな……!」
香織に目を向ける。風車の上で、今にも泣きそうだ。
「香織!」
「聖治君!」
彼女の瞳から、涙がこぼれ落ちる。その姿に周囲からは笑い声があがっていた。
歯をかみしめた。悔しさに頭が下がる。
これが、同じ人間のやることなのか? 信じられない。目の前で広がるこの狂宴が、人間のやることだって? 人はこんなにも残虐な生き物だってのかよ!
「なんで、なんでこんなことが平然とできるんだ? 同じ人間だろ? おまえ等には心がないのかよ!?」
「心? あるよ? 当たり前だろ。まったく。おまえみたいなことを言うやつには反吐が出る。いいか、世界は変わったんだ。重要なのはその世界でどう立ち回るかなんだよ」
そんな資格もないくせに、男が偉そうに言う。
「お前らも馬鹿だよな。さっさとこっち側につけばこうはならなかったのにさ」
はっはっはと笑っている。
「……ふざけるなよ」
「あ?」
気づけば口にしていた。だけど止めようとは思わなかった。
「馬鹿だ? ふざけんなあああ! お前らなんてただ銃があるだけのクズだろうが!」
「んだとガキ!」
頬を思いっきり殴られた。でも止めない。
「悪魔なんかにつきやがって。お前なんてその銃がなければただのクズだ、そうだろう! 人類を裏切って力に酔ってるだけの本当のクズだ! 馬鹿はお前の方だ! 良識も、良心も、人も捨てた、お前らは悪魔だ!」
腹を殴られる。足を蹴られる。どんどん痛みが加わっていく。
「止めてぇ!」
香織が叫ぶ声が衝撃の隙間に聞こえてくる。
悔しい。悔しい! こんな連中が笑い、俺たちが惨めに殺される。
悔しい。怒りや、憎しみがわき上がるのにそれをぶつけることもできない。
「回せ!」
「止めろ!」
合図の声が聞こえる。それにより風車がゆっくりと動き始めた。香織の体を引っ張っていく。
「ううう!」
「止めろぉおお!」
香織の悲鳴が聞こえる。大勢が歓声をあげる。
なんだよ、これ。なんで、どうして。
こんなの間違ってる。間違ってるだろ。いいわけないだろ!
「力さえあれば、この俺があ!」
無力な自分が悔しくて、彼女を傷つけるすべてを壊したかった。
人も。悪魔も。世界も。
すべて。
力さえあれば!
その時、うるさいほどだった音が、すべて消えていた。
「…………?」
なんだ、どうしたんだ? なんで誰もなにも言わないんだ?
近くに立つ男を見る。その顔は中央の処刑を楽しそうに見つめている。そのまま固まったように動かない。
他の連中もそうだ。まるで金縛りにあったようにぴたりと動きを止めている。まるで写真のようだ。すべてが止まってる。
「なんだよ……いったいなんなんだよ……」
薄暗い世界はさらに灰色となり、白黒の世界のようだ。
その時、足音が聞こえてきた。
道の向こうから、それは黒のロングコートを着て、フードを被っていた。
なんとも言えない不思議な印象を覚える。時間が止まった世界、そうでなくても処刑という異様な場面だというのにその人は悠然と歩いている。殺人を楽しむというこの場所ですら平然と。その静けさはまるで亡霊かと見紛うほどだ。
そのまま俺の前に近づいた。背は大きい。それにこうして近くで見て分かるけど体格もそれなりにしっかりしているのが分かる。見上げているが、顔は影になっていてよく見えない。
『君は、力が欲しいか?』
「ッ」
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