セブンスソード
3 プロローグ
「登校中一人でスマホをいじってるところでしょ、トイレから出てきて手を洗ってるところでしょ」
「ん?」
「最近なんてこの寝顔が可愛くて」
「ちょっと待て」
待て待て待て。
「なあ」
「ん?」
ん? じゃないだろ、本気で分かってないのか?
「これいつ撮ったんだ? てか撮っていいなんて俺言ってないぞ?」
別に絶対嫌ってわけじゃないが少しは恥ずかしいしこういうのって付き合ってても相手に断りを入れてから撮るもんじゃないのか?
「…………」
固まるな。
「とりあえずこれ消すぞ」
「ダメー! 私の大切なコレクションなの、お宝なの~!」
「知らん」
「ダメダメ、勝手に触らないでプライバシーの侵害だよ!」
「どっちがだ」
よく言えたなその台詞。
俺と香織でスマホの取り合いになる。
その時だった。
「!?」
どこかで羽ばたく音が聞こえた。すぐに香織の手を引き車の陰に隠れる。体を屈め周囲を見渡した。
俺の手を握る香織の力が強まる。
「いる?」
怯えた表情で俺を見てくる。俺は必死に音の出所を探した。
すると崩れたビルの先端に一羽のカラスが止まっていた。
「ふぅ」
緊張していた体から息がこぼれる。肩にまで入っていた力が抜けていく。
「大丈夫だ香織、カラスだ」
「ほんと?」
「ああ」
「よかったあ」
香織も安心感から体の力が抜けている。そんな仕草がなんだか可愛い。
俺は車から顔を出しもう一度カラスを見た。
「!?」
瞬間、全身が雷に打たれたようだった。
油断していた。目に映ったものに心臓が跳ね上がる。
やつらが、いたんだ。
ちょうど進行先にある街角、そこから出てきたところだった。
二足歩行で歩く、黒い体。禿げた鳥のような体表をしており、足は太いのに両腕は赤子のように小さい。顔はカマキリのようで髪はない。背中にはコウモリのような翼があり赤い眼球を動かし、首をフクロウのように回しては周囲を探していた。
これが、俺たちの敵。悪魔だ。五年前突然現れて人類を襲い出した。そして去年、人類はやつらに敗北した。今だって生き残った人たちを殺し回ってる。
もはや、やつらを敵と呼ぶ者すら少なくなっている。人類が敗北したことで立場は変わった。
やつらは捕食者だ。俺たちは無力な生け贄なんだ。
出していた顔を引っ込める。香織に目だけでやつらがいることを知らせる。香織の顔がひきつる。
さらに体を屈め車と地面の隙間からやつを見る。ニワトリのように太股は太いが足は細い。隙間からはやつの足だけが見える。
その足がこちらに近づいてきた。アスファルトを踏みつける音が大きくなってくる。時折キシャー、という鳥のような奇声を上げていた。
そこで羽ばたく音が聞こえたかと思うと、新しい足が上から降りてきた。
「いたか?」
「いや、見つからない」
……喋ってる。
甲高くて、かすれたような、耳障りな声だ。
「ここにはもういないんじゃないのか?」
「殺戮王の命だ、生き残りは許されない。仕事ができない者もな」
「分かっている」
やつらはそれだけを話すと一体はまたどこかへと飛んでいく。俺たちとは反対方向だったらしく音が遠ざかる。
だけど、まだ最初の一体がいる。
どうする? このままやり過ごすか? それとも逃げ出すべきか? でも見つかったら逃げきれない。
カラン。
「!?」
「ん?」
「最近なんてこの寝顔が可愛くて」
「ちょっと待て」
待て待て待て。
「なあ」
「ん?」
ん? じゃないだろ、本気で分かってないのか?
「これいつ撮ったんだ? てか撮っていいなんて俺言ってないぞ?」
別に絶対嫌ってわけじゃないが少しは恥ずかしいしこういうのって付き合ってても相手に断りを入れてから撮るもんじゃないのか?
「…………」
固まるな。
「とりあえずこれ消すぞ」
「ダメー! 私の大切なコレクションなの、お宝なの~!」
「知らん」
「ダメダメ、勝手に触らないでプライバシーの侵害だよ!」
「どっちがだ」
よく言えたなその台詞。
俺と香織でスマホの取り合いになる。
その時だった。
「!?」
どこかで羽ばたく音が聞こえた。すぐに香織の手を引き車の陰に隠れる。体を屈め周囲を見渡した。
俺の手を握る香織の力が強まる。
「いる?」
怯えた表情で俺を見てくる。俺は必死に音の出所を探した。
すると崩れたビルの先端に一羽のカラスが止まっていた。
「ふぅ」
緊張していた体から息がこぼれる。肩にまで入っていた力が抜けていく。
「大丈夫だ香織、カラスだ」
「ほんと?」
「ああ」
「よかったあ」
香織も安心感から体の力が抜けている。そんな仕草がなんだか可愛い。
俺は車から顔を出しもう一度カラスを見た。
「!?」
瞬間、全身が雷に打たれたようだった。
油断していた。目に映ったものに心臓が跳ね上がる。
やつらが、いたんだ。
ちょうど進行先にある街角、そこから出てきたところだった。
二足歩行で歩く、黒い体。禿げた鳥のような体表をしており、足は太いのに両腕は赤子のように小さい。顔はカマキリのようで髪はない。背中にはコウモリのような翼があり赤い眼球を動かし、首をフクロウのように回しては周囲を探していた。
これが、俺たちの敵。悪魔だ。五年前突然現れて人類を襲い出した。そして去年、人類はやつらに敗北した。今だって生き残った人たちを殺し回ってる。
もはや、やつらを敵と呼ぶ者すら少なくなっている。人類が敗北したことで立場は変わった。
やつらは捕食者だ。俺たちは無力な生け贄なんだ。
出していた顔を引っ込める。香織に目だけでやつらがいることを知らせる。香織の顔がひきつる。
さらに体を屈め車と地面の隙間からやつを見る。ニワトリのように太股は太いが足は細い。隙間からはやつの足だけが見える。
その足がこちらに近づいてきた。アスファルトを踏みつける音が大きくなってくる。時折キシャー、という鳥のような奇声を上げていた。
そこで羽ばたく音が聞こえたかと思うと、新しい足が上から降りてきた。
「いたか?」
「いや、見つからない」
……喋ってる。
甲高くて、かすれたような、耳障りな声だ。
「ここにはもういないんじゃないのか?」
「殺戮王の命だ、生き残りは許されない。仕事ができない者もな」
「分かっている」
やつらはそれだけを話すと一体はまたどこかへと飛んでいく。俺たちとは反対方向だったらしく音が遠ざかる。
だけど、まだ最初の一体がいる。
どうする? このままやり過ごすか? それとも逃げ出すべきか? でも見つかったら逃げきれない。
カラン。
「!?」
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