セブンスソード
2 プロローグ
彼女もそうだが俺だってお腹は減っている。このままなにも食べなかったら殺される前に餓死だ。
「とりあえず食べ物がありそうな場所を探してみよう。まだなにか残ってるかもしれない」
「うん」
俺は彼女の手を引いた。
これといって目的地があったわけじゃない。あてどもなく歩き、周囲にめぼしいものがないか探していく。だけどどこも似たような場面が続き収穫はない。
そのうち会話もなくなって、だんだん俺たちまで寂しい雰囲気になっていく。
「なかなか見つからないね」
そんな空気を払うように、香織が小さく笑った。
「そうだな。でも、きっと見つかるさ」
「うん」
俺も笑顔を浮かべて彼女の明るさに合わせる。
「そういえば以前の避難先でみそ汁が出たことあっただろ? あれ旨かったよな、野菜がたくさん入っててさ。その時の人が優しくて笑顔で渡してくれたんだよ。頑張ってねって。嬉しかったな」
こんな世の中ではあるけれど人を思う気持ちまで死んだわけじゃない。形には残らないけれど、そうした気持ちがとても嬉しいんだよな。
「ふーん」
「ん?」
それは香織も同じだと思っていたんだけれど。おかしいな、あまり喜んでいないようだ。いつもなら人の優しさとかそういうのに喜ぶのに。
「嬉しかった、かー。そういえばあの人きれいだったもんねえ」
「はあ!?」
なに言ってるのこの人!?
「ちょっと待ってくれ、おかしいだろ! 俺はその人の気遣いっていうか優しさが嬉しかったのであって、べつに綺麗だったからじゃないよ」
「ほんとにー?」
「本当だって」
どこを疑ってるんだ。なんだその目は。疑いの眼差しを今すぐ止めてくれ。
「じゃあ綺麗だとは思わなかった?」
「まあ、綺麗だとは思ったけど」
「やっぱり」
「ちげえよ!」
なんでそうなる!? これとそれは違うだろ!
「あのなあ、何度も言うけどそういうのじゃないから。いちいち深読みしないでくれ」
「むう」
「そんな顔しても駄目だ」
「むうー、分かった」
「まったく」
なんで俺がこんな目に。ただ場を明るくしようとしただけなのに。悲しい。
「でも気をつけてよね」
「ん? なにがだ?」
この状況で改めて気をつけることってなんだ? 香織は先回りすると俺にビシっと指を突きつけてきた。
「聖治君カッコイイんだから。ボーッとしてるとどんな女が寄ってくるか分かったもんじゃないよ」
「あのなあ」
本気か? こんな時になんの心配をしているんだ。
「どこを気にしてるんだ、あるわけないだろ」
「そんなことないよ!」
止めてくれ、余計疲れる。
「聖治君は意識してなかったかもしれないけれど、私の周りでも聖治君のことよく言ってる人多かったんだから」
「そうなのか?」
「ま、聖治君のことを一番推してたのは私だったけどね」
「なぜそこで勝ち誇る顔を?」
その得意げな顔はなんなんだ。
「ねえ見て見てこの画像」
「ん?」
香織はスマホを取り出すと画面を見せてきた。そこには体育の授業で俺がサッカーボールを蹴っている画像が映っていた。
「これめちゃくちゃかっこよくない? お気に入りなんだよねえ」
「ど、どうも」
自分の画像を出されてもなんて反応すればいいんだ。
「あとはねー」
「他にもあるのか?」
「当然。聖治君ガチ勢としてはあらゆる場面のコンプを目指してるんだから」
「…………」
ガチ勢ってなんだ。勢ってなんだ。
「とりあえず食べ物がありそうな場所を探してみよう。まだなにか残ってるかもしれない」
「うん」
俺は彼女の手を引いた。
これといって目的地があったわけじゃない。あてどもなく歩き、周囲にめぼしいものがないか探していく。だけどどこも似たような場面が続き収穫はない。
そのうち会話もなくなって、だんだん俺たちまで寂しい雰囲気になっていく。
「なかなか見つからないね」
そんな空気を払うように、香織が小さく笑った。
「そうだな。でも、きっと見つかるさ」
「うん」
俺も笑顔を浮かべて彼女の明るさに合わせる。
「そういえば以前の避難先でみそ汁が出たことあっただろ? あれ旨かったよな、野菜がたくさん入っててさ。その時の人が優しくて笑顔で渡してくれたんだよ。頑張ってねって。嬉しかったな」
こんな世の中ではあるけれど人を思う気持ちまで死んだわけじゃない。形には残らないけれど、そうした気持ちがとても嬉しいんだよな。
「ふーん」
「ん?」
それは香織も同じだと思っていたんだけれど。おかしいな、あまり喜んでいないようだ。いつもなら人の優しさとかそういうのに喜ぶのに。
「嬉しかった、かー。そういえばあの人きれいだったもんねえ」
「はあ!?」
なに言ってるのこの人!?
「ちょっと待ってくれ、おかしいだろ! 俺はその人の気遣いっていうか優しさが嬉しかったのであって、べつに綺麗だったからじゃないよ」
「ほんとにー?」
「本当だって」
どこを疑ってるんだ。なんだその目は。疑いの眼差しを今すぐ止めてくれ。
「じゃあ綺麗だとは思わなかった?」
「まあ、綺麗だとは思ったけど」
「やっぱり」
「ちげえよ!」
なんでそうなる!? これとそれは違うだろ!
「あのなあ、何度も言うけどそういうのじゃないから。いちいち深読みしないでくれ」
「むう」
「そんな顔しても駄目だ」
「むうー、分かった」
「まったく」
なんで俺がこんな目に。ただ場を明るくしようとしただけなのに。悲しい。
「でも気をつけてよね」
「ん? なにがだ?」
この状況で改めて気をつけることってなんだ? 香織は先回りすると俺にビシっと指を突きつけてきた。
「聖治君カッコイイんだから。ボーッとしてるとどんな女が寄ってくるか分かったもんじゃないよ」
「あのなあ」
本気か? こんな時になんの心配をしているんだ。
「どこを気にしてるんだ、あるわけないだろ」
「そんなことないよ!」
止めてくれ、余計疲れる。
「聖治君は意識してなかったかもしれないけれど、私の周りでも聖治君のことよく言ってる人多かったんだから」
「そうなのか?」
「ま、聖治君のことを一番推してたのは私だったけどね」
「なぜそこで勝ち誇る顔を?」
その得意げな顔はなんなんだ。
「ねえ見て見てこの画像」
「ん?」
香織はスマホを取り出すと画面を見せてきた。そこには体育の授業で俺がサッカーボールを蹴っている画像が映っていた。
「これめちゃくちゃかっこよくない? お気に入りなんだよねえ」
「ど、どうも」
自分の画像を出されてもなんて反応すればいいんだ。
「あとはねー」
「他にもあるのか?」
「当然。聖治君ガチ勢としてはあらゆる場面のコンプを目指してるんだから」
「…………」
ガチ勢ってなんだ。勢ってなんだ。
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