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第24章 真影種再来!乗っ取られたアズ!

ある日俺は硬い床の感触を感じながら目を覚ます

「ふも!?ふももう!?」

何事かと叫ぼうとした所で声が出ない事に気が付く
なんだ!?一体何事だ!?
というかこのくだり、すごいデジャヴを感じるぞ!?

そんな自由がきかない俺の体が勝手に動き出す
俺は焦りながらも周りを見渡し
目の前に立つ信じられない人物に目を見開く

背丈はあまり変わらないが少し古くなった学園の制服
ボサボサの青い髪は以前より少し長くなっている
金色の眼が眠たそうにこちらを覗き込んでいる

「お・・・俺・・・?」

目の前のスタンドグラスに映るのは間違いなく俺
しかし俺はそれをまるで外から見ているかのような感覚だ

「くっくっく・・・我こそは真影種が四天王の一人、影弐様だ!分け合って貴様の体を借りている」

またお前らかよ!なんなんだよ真影種って!

「恐怖で声も出ないようだな・・・」

いや?よく考えろ?お前が体乗っ取ってるから喋れねぇんだよ!真影種はバカしかいないのか!?

「おっと!心の声は我に聞こえているぞ?口は慎むように」

聞こえてんのかよ!さっきの声が出ない云々はなんなんだよ!!
しかし護衛のルピーはどうした?・・・そうか!今日は実家の方に報告に行ってるのか!

「この姿・・・6人目の大貴族の姿なら国王の暗殺も容易というものよ・・・カーゲカゲカゲカゲ!」

何?真影種の笑い方はそれが基本なの?というか前のやつも全く同じ事言ってたぞ?

「貴様には影壱が世話になった恩がある・・・せめて仲間が無残に殺される所を特等席で見る権利を与えよう」

俺の意思とは関係なく体が動き出す

「さぁ!この国を混沌に陥れてくれよう!」
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謎の空間から外に出た俺達の目の前に、いつもの俺の部屋が映し出される

「くっくっく・・・この場所を拠点にこの城を恐怖に陥れてくれるわ!!」

そう叫びながら俺達が振り向くと
ルピーがメモを片手にテーブルに座っている

『おいおいおい!こんなの黒歴史確定じゃないか!?厨二乙!やめてくれ!?』

ルピーはじっと俺を見つめると
失笑してメモを取り出す

[お腹が空きました]

恐らく俺に実体があれば赤面して当分動けない場面だ
しかし影弐はルピーを無視して部屋から出ようとする

ルピーはそんな俺にピクリと反応すると
俺の肩を掴んで再びメモを見せつける

「ええぃ!そんなもの自分で作れ!」

影弐が乱暴にルピーを振り払う

『ば・・・ばか!なんて事を!?』
「くっくっく・・・仲間が危険な目に合うのを許せないとは人間種はこれだから・・・」

しかし影弐の言葉はルピーによって遮られる

[ご飯]

ルピーの刀の切っ先が首筋に当たる

『「ひぃ!!」』

『馬鹿野郎!ルピーにとっては俺の命より日々の飯のほうが大事なんだよ!』
「貴様本当にこの娘の主人か?」

困惑に彩られた声を発しながらも影弐がエプロンを着用
俺達は震えながらも料理を開始する

『なんだ、あんた真影種の癖に料理は上手いんだな』
「ふん!我ら真影種は常に影に潜む者、対象の動きを模倣する事など赤子でも出来るわ」

得意げに語る影弐
敵対関係じゃなければ一家に一台いても良いかもしれない

軽く料理を済ました影弐が廊下を徘徊しだす

「さて・・・お次は・・・」

獰猛に笑う影弐の元にムートンが近づいてくる

「何呆けてるんだ!もうすぐルト教諭の授業だぞ!?」
「くっくっく・・・さっきは失敗したが今度は上手くやってやろう」

影弐はそう言いながら荒く息をすると地面にへたり込む
なんかもう嫌な予感しかしないんだが?

「お・・・おい!?どうした!?」

唐突な俺の変化に慌てるムートン
流石に乗っ取られてるとかは気付かないか・・・
やっぱりムーたんだなこいつ

影弐が何をするのかと見ていると
頬を赤らめながらムートンを見上げる

『や・・・ヤメロォォォォ!?おま!?俺の体で何をする!?』
「くっくっく!人間種はこういう色仕掛けに弱いのだろう?あれ?お前男だっけ女だっけ?」

そんな事はどうでも良い!
ムートンが俺の奇行に完全に放心状態になっているじゃないか!
おいおいおいおい!こんなの黒歴史確定だろ!

これ以上勝手に黒歴史を作られないように俺が心の中で神に祈っていると
救世主が現れる

「おや?アズ様ではないですか!それは新しい被験体でありますか?」

ニコニコ笑みを浮かべるロッテの手にはフラスコが準備されている

「ちっ!これだから目の良いエルフは!」

影弐が舌打ちをしながらダッシュで廊下を駆け抜ける

「はぁ・・・はぁ・・・追ってきてはないようだな・・・」

なんか影弐が凄い疲れてるけど
乗っ取られてると俺は疲れないんだな
頬の汗を拭う影弐の進行方向を新たな人影が遮る

「アズ君!こんな所で何やってるんだい!」
「え?」

そこには動きやすさ重視の服装に
髪を後ろで束ねたポニテアレン
ムーたんは見破れなかったがアレンなら・・・

しかし影弐は唐突にアレンを壁にぶつけると顎先をそっと持ち上げ・・・下ろす

これは・・・壁ドゥーン!?
まさかこいつまだ俺の黒歴史を更に増やす気か!?
というか俺の背が足りてないせいで色々台無しになってるし・・・
アレンに関してはまったく動じてない

「アズ君!何遊んでるんだい?はやく行かないと尻筋1000回だよ!?」
「え?」

おいおい?こいつは重度のシスコンだからこの手の技は効かないぜ?
俺は心の中でほくそ笑む

状況についていけない影弐がアレンに手を引っ張られて演習場に連れて行かれる
演習場にはチラチラ俺を見て頬を染めるムートンと・・・

「おう!ギリギリ間に合ったようだな!」

そこにはいつものケツプレートアーマーを着用したルト先生

「な!?なんなんだあの変態は!?」

ルト先生を見た影弐が驚きの声をあげている
あぁそうか
最近見慣れてたから疑問にも思わなかったが・・・
それが普通の反応だよな

「どうしたんだいアズ君?また由緒正しきケツプレートアーマーの伝説を聞きたいのかい?」
「今更何言ってんだよ?」

平然とする二人に影弐が挙動不審になっている
あとアレン、やめろ、お前のケツプレート談義は丸一日潰れるからやめろ

「よし!それではまず走り込みからいくぞ!!」

流石の影弐も三人の前では俺のフリをするしかないようで
渋々アレンに続いて走りだす
そんな俺を見ながらルト先生がニヤリと笑みを浮かべる

「ほう?今日はいつもより良い動きじゃないか?」

そう言いながら俺とアレンに並走するルト先生

「あれ!?いつもこんな動かないの!?」

困惑の声をあげる影弐
俺がアレンとルト先生と同じペースで?
当たり前だ!俺の虚弱さをなめるな!まったく!
ムートンなんてとっくの昔に隅でうずくまってるぞ?

結局いつもの倍以上の訓練をする事になった俺達は息も絶え絶えに演習場から離れる

「っく!この体は失敗だな」
『おい?人の体を失敗作みたいに言うなよ!』

演習場から離れると同時に俺の体から影弐が飛び出る
それと同時に俺の体に痛みが走る

「あだ!?あだだだ!?なんで!?」

俺の悲鳴に影弐はゆらりと揺らめく

「ふん!ただの筋肉の使い過ぎだ・・・だが貴様は俺を怒らせた・・・」
「いや、勝手に自爆しただけだろ!?」
「うるさい!このままなぶぅ!?」

低い声で俺を睨んでいた影弐が変な声と共にいつのまにかフラスコに入っている
何が起きたのか影弐が恐る恐る後ろを振り返る

「いや〜ちょうど被験体がもう一体欲しかったのでありますよ」

ニコニコとフラスコを懐にしまうロッテに
俺は苦笑いを浮かべるのであった

後日、ヒューマ・アズは男も女もイケるという話がメイド達によって拡散される事になるがそれはまた別のお話
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ロウ「あらぁん!アズちゃんってばアタシと話が合いそうじゃなぁい!?」

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