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第21章 6番目の席

「アンビリーバボー!まさかロウとシルバを倒してしまうなんて」

ハイタッチする俺とムーたんにエサ外国人のような声が聞こえてくる
声の方には拍手をしながら笑みを浮かべるマーク
・・・足元にはダメージ過多により防衛魔術に包まれ、観客席に飛んでいくアレンの姿

「どーやら少しは楽しませてくれそうデース」
「まさか!?アレンさんがやられたのか!?」

驚愕の表情を浮かべるムーたん
だが俺も同じ感想だ
マークは俺達の様子に満足したかのように頷く

「いかにスニーキー嬢が天才でも・・・このホークアイの力には無力!」

そう言いながらホークアイを見せつけるマーク
なるほどあのチートアイテムのせいか・・・しかし・・・

「おいアレン!お前もチートアイテム使えよ!」

俺の言葉に治療を受けているアレンが険しい表情を浮かべる

「馬鹿を言うな・・・あれは本来その代のトップが保管する秘宝だぞ・・・?」
「え?でも皆使ってるし・・・なぁムーたん?」

ムーたんは首を縦に振るう

「僕のは勝手に持ち出しただけだからな!もしかしたら大騒ぎになっなにをする!?やめろぉ!?」

この野郎!この野郎!
俺がムーたんの胸倉をつかんで振り回しているとマークが呆れたように溜息を吐く

「やれやれデース、まぁミーの場合他の5大と違い正式に預かっている物なのデスガ・・・」

つまり自分がトップであるという意味か・・・?
マークの周りで赤い発光体が脈打つ

「幼少の頃に事故で片目を失ったミーの為にパピーとマミーが預けてくれたのデース!」

マークの声と共に赤い発光体から炎が形成され
目にも止まらぬ速さで避けようとしたムーたんを貫く

ムーたんの周りに防衛魔術が施され、観客席に飛んでいく

「どのように動こうとホークアイからは逃れられない」

やれやれと手を横に振るうマークの周りに再び赤い発光体が集まっていく

「ミーはユー達が少し体を動かした方にプロミネンスを放てば良いだけデース」
「このチート野郎!大体荒ぶる鷹のポーズをしないと発動しないんじゃないのか!?」

俺の抗議にマークは首を縦に振る

「確かにホークアイの条件は荒ぶる鷹のポーズ・・・しかしホークアイと一体化したミーはその身にホークアイの力を宿したのデース!」

マークの力強い言葉と共に
周囲を漂っていた発光体が形をなしていく

BGOでいう所のエピックスキルってやつか・・・
特別な条件で特別な事をすると手に入るスキル
確かにそういったスキルを一人一個は習得出来るように設計した覚えがある
しかしまさかプレイヤー以外でも習得出来るとは・・・

一人納得した俺は赤い発光体が一際輝くタイミングで横に飛びのく
狙い通り俺のいた場所を赤色の奔流が通り過ぎる

「オーウ!ミーの攻撃を避けたのはユーが初めてデース!」

うれしそうに拍手するマーク
俺は赤い発光体が見えているから回避できているが
この速さ・・・他の人間にはほぼノーモーションで魔法を撃っている風に見えるのだろう

しかし俺には赤い発光体という予測線が見える!
次々と射出されるプロミネンスを避けながら俺はドヤ顔を決める

「あたらなければどうという事は無い・・・ってね!」

そしてマークは魔法を行使している以上必ずMPを回復する為に動きを止める
俺は狙い通りMP回復で動きを止めたマークに向けて突進
杖を振り上げる

「これでもくらえー!」
「ホワッツ!?」

マークは驚きながらも俺の打撃を銃で受け止める

「イェース!アメイジーング!」

俺とマークの力が拮抗する

「へ!パワーに関してはどうやら互角みだいだな!」
「オーウ!確かにパワーは互角のようデース!」

パワーが互角なら先に攻撃をしかけた俺が押し勝つ!
俺は笑みを浮かべようとして腹部に走る痛みに仰け反る
そんな俺にマークは嬉しそうに笑う

「しかしバトルセンスはミーのほうが上のようデース!」

下から蹴り上げられた俺は飛びそうになる意識をかろうじて繫ぎ止める

BGOでは一度にHPの半分以上が削れると自動で気絶判定が入る
つまり蹴り上げられただけで虫の息って事だな

「だがまだ戦える!」

気絶判定に成功した俺は苦笑いを浮かべながらマークに向き直り、表情を凍り付かせる
マークの銃の先に赤い発光体が集中している
バランスを崩している俺は避ける術がない

「これで終わりデース!」

マークの宣言と共に炎の閃光が迸り、俺の胸を貫く
観客席からアレンとムーたんの悲鳴が聞こえる

ああ・・・やっぱり今回もダメだったよ・・・あいつは話を聞かないから・・・ん?
俺は全くダメージを受けていない事に気が付く

「ま・・・まさか!?このタイミングで!?」

誰の声か、はたまたその場の全員の声だったのか
周りの人間が全員俺に視線を向けている
正確には俺の胸辺り・・・指輪を見ている

「ああ!指輪のおかげで助かったのか!」

俺は場違いな発言をしながらも指輪の異常に目を見張る
指輪からは迸る程の光をかもしだしている

「今こそ!その指輪の能力を解放せよ!」

俺が声の方向を振り向くと
主賓席で立ち上がっている国王が目に映る

指輪は国王の言葉に同調するかのようにいっそう輝き出す

「なんだなんだ!?」

突然の出来事に国王以外の全員が唖然とする中
マークがぽつりと呟く

「ま・・・まさか・・・六つ目の紋章だと?」

キーンという音と共に光が消えると
指輪に二足歩行の動物の紋章が刻印される
なんだこれ?人か?サルか?

「・・・!アズ君!その能力を使うんだ!」

俺含め、呆然とする集団の中で観客席のアレンが叫ぶように声を荒げる
俺は急いで効果を発動すると目の前にターゲットアイコンが現れる

「さ・・・させまセーン!」

MPは回復中なのか焦っているだけなのか
マークが慌てて俺に駆け寄る
どんな効果かはわからないがもうこれしか無い!

ターゲットをマークに設定して効果を発動
すると目の前に文字の羅列が出現する

「あれ?・・・これって・・・」
「どのような能力だろうと!ホークアイと一体になったミーの相手では「趣味は覗き、ここ最近は城の庭からメイドの更衣室を覗くのが日課」・・・」

俺が迫り来るマークに対抗すべく文字を音読すると
マークの動きが止まる

「ホワッツ?え?いや?え?」

目の前で困惑するマークの顔に俺は確信を得る

「10歳の誕生日に、親が見せてくれたホークアイを面白半分で目に嵌め込み一体化、取り外す術が無い為、現在はマークの所有物という名目になっている」
「ウェイト!?それは誰にも言ってない秘密デース!?」

いよいよ慌て出すマークの姿を見て楽しくなってきた

「まだまだあるぞ?えーと・・・幼少の頃の事件とは単に・・・」
「ミーの負けデース!!!調子乗ってマシター!!!ミーの負けデース!!!

続けざまに黒歴史を暴露しようとしていると叫びながら土下座をするマーク
演習場の中を悲鳴にも近いマークの叫びがこだまし、辺りに静寂が訪れる

静まり返る演習場の中、国王の声がこだまする

「勝者!チームロッテ!!!」
『『『納得いかねー!!!!????』』』

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