人外と友達になる方法

コング“シルバーバック”

第48話 またね 〜黄昏の告白篇〜

 悠火が部屋で漫画を読んでいると、狐々愛が帰ってきた。

「おう、お帰り」

「ただいま」

 悠火は明智と何を話したかは聞かないつもりだ。
 しかし、狐々愛の方から話してきた。

「明智に妾が妖怪だとバラした」

「ふ〜ん……そっかそっか……はぁ!?」

 危うく聞き流してしまうところだった。

「バラしたって! なんで!?」

「妾のことをあんなに好いてくれておるのに秘密にするわけにはいかんじゃろ! それにこのことは秘密にしておいてくれるそうじゃし、心配は無用じゃ」

 確かに狐々愛の言うことには一理ある。
 明智を信用していないわけではないが、本当に大丈夫だろうか。

「心配するな。彼奴は妾にゾッコンじゃからな」

「そんなに?」

「うむ!」

 そう言って狐々愛は控えめな胸を張った。




 翌日。悠火は明智と話をするために朝早く学校に行った。
 ちなみに昨夜は眠れた。

「おはよ明智」

「おはよう伊鳴君」

 悠火はてっきり明智は意気消沈しているものと思っていたが、そうでもない。
 むしろ元気そうだ。

「振られました」

 開口一番に明智は言った。
 その言葉に後悔はないように聞こえた。

「そっか……お疲れさん」

 結果を知っていたとはいえ、悠火は明智を労わずにはいられなかった。

「狐々愛さんのこと、伊鳴……悠火君は知ってたんでしょ?」

 何を、とは言わないが妖怪のことだろう。

「そりゃな。黙ってて悪かった」

「いいよ。簡単に言えないことだってことくらいわかるから。このことを他に知ってる人は?」

「奏鳴と光秀だ」

「やっぱりその2人もか……」

 明智は少し寂しそうな表情をした。
 悠火はともかく、自分より先に奏鳴や光秀に正体を明かしたが悔しいようだ。

「今回の転校も、大方妖怪がらみの何かでしょ?」

「やっぱりわかるよな……」

 悠火は観念して妖術師のことを明智に話した。

「にわかには信じ難いけど、信じるしかないよね。狐々愛さんや悠火君が嘘をつくとは思えないし」

 どうやら信じてくれたようだ。

「妖術師は危険なことも多いと思う。絶対に無茶はしないでね。悠火君も狐々愛さんも鬼嶋君や西園寺君もみんな大切な友達だから!」

 悠火は明智がこんなにも自分たちのことを思っていたのを知らなかった。
 明智の言葉に思わず胸が熱くなる。

「ああ! 任せとけ!」

 明智は紛れも無い友達だ。
 悠火にとって守らなくてはならないものがまた一つ増えた。

「それはそうと、悠火君は狐々愛さんの好きな人の話を聞いた?」

「え? 何それ?」

 そんな話聞いたことがない。

「あ、ならこれは秘密ですね」

「おい! 教えろよ! 友達だろ!」

「ダメです。狐々愛さんに直接聞いてください」

 あの狐々愛が悠火にそんな話をしてくれるはずがない。
 なんとしても明智の口から聞かなくては。
 しかし結局明智から聞き出すことは出来なかった。
 そして時は流れ、いよいよお別れの時がやって来た。




 悠火たちは宮園家が用意してくれた家に住むことになる。
 静香を一人にするのは申し訳ないが、静香は快く送り出してくれた。
 奏鳴の方も一悶着あったらしい。
 しかし祖父の新明が母親の面倒を見てくれることになり、一先ず落ち着いた。
 そして一番手こずるかと思われた光秀の説得は簡単に終わった。
 何でも全国模試で一位を取ったら好きにしていいと言われ、何と本当に一位を取ったのだ。秀才は恐ろしい。
 というわけで、三人とも無事に転校が可能となったのだ。
 そして今学校でお別れ会をしている。
 冬休み中だが、特別に許可を取って教室を借りたそうだ。
 企画運営はもちろん明智だ。

「短い間だったけどお世話になりました。ありがとうな!」

「本当テストの時クラス平均下げてばっかりでごめん! 今までありがとう!」

「えっと……今日までお世話になりました。これからもみんな仲良くしてください」

「半年くらいの短い間だったけど、みんなと出会えて楽しかったよ! また会ったらいっぱい遊びましょうね!」

 四人がそれぞれの思いを述べる。
 クラスメイトもそれぞれ言いたいことがあるだろうが、代表して明智が挨拶をする。

「君たちと過ごしたこの月日は一生の宝物です。僕たちは君たちという友のことを生涯忘れません。転校先でも、息災で!」

 明智は四人と固く握手を交わす。
 そしてみんなで記念撮影となった。

「準備はいい〜? はい! チーズ!」

 そしてお別れ会も大詰め。ここで狐々愛が色紙を取り出した。
 四人で話し合い、クラスメイト全員にメッセージカードとしてプレゼントすることにしたのだ。
 それを一人一人に渡していく。
 みんな涙を流して別れを惜しんでくれた。
 本当にいい奴らだ。

「それじゃ。これでお別れ会を終了します。みんな気を付けて帰ってください」

 悠火たちは、お別れ会の後すぐに移動することになっている。
 そのため二次会のようなことはできない。

「じゃあねみんな!」

「それじゃあな!」

「またな!」

「お元気で!」

 別れの挨拶を済ませ、悠火たちは宮園家の手配した車に乗り込む。
 クラスメイトたちは悠火たちの乗った車が見えなくなるまで手を振っていた。




 明智は色紙に書かれたメッセージを読んでいた。

『話してみると面白い奴だな! 今度会ったらもっと話しようぜ! またな!』

『いつもノート写させてくれてありがとな! 助かったぜ!』

『勉強において素晴らしいライバルでした。次も負けません!』

『短い間だったけど、ありがとう! あのことはみんなには秘密ね! もちろん好きな人のことも! これからもクラスのみんなを引っ張っていってね。みんなを頼んだよ!』

 色紙を読み終えた明智の目には薄っすらと涙が浮かんでいた。

(さよならは言いませんよ。また会いましょう! 狐々愛さんを、どうか幸せにしてあげてくださいね、悠火君……)

「これからも頑張ってくださいねー!」

 明智は共に学校生活を過ごした友に心からのエールを送った。




読んでいただきありがとうございます。コングです。

3話目が少し長くなってしまいました。
これにて黄昏の告白篇は終わりです。そして、この小説の第1部が終了です。
第1部という明確な表記があるわけではないですが、本格的に妖術師としての活動が始まるまでが第1部、これからの妖術師としての活動が第2部です。

これからも『じんとも』をよろしくお願いします!

それではまた次回!



2020/5/12一部改稿

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