人外と友達になる方法
第3話 河童チェイス 〜洞窟篇〜
突如目の前に現れた異形のそれに悠火と光秀の目と意識は奪われた。
「な、なんだよ!こいつ!」
悠火は目の前で起こっている異常を頭では理解することが出来ずにいた。
「信じられない! こんなものが存在するなんて!」
秀才光秀でもこの状況は飲み込めないらしい。
それもそうだ、目の前いるのは妖怪、河童なのだから。
「何をしに来た……人間……」
やはり先程聞いた誰のものでもない声はやはり河童のものだったようだ。
「会話が出来るのか……?」
光秀が恐る恐る話しかける。
「儂を畜生や虫螻と同じだと思っておるのか? さっさと要件を言え」
要件と言っても、三人は肝試しに来たのだ。
何か用があって来たわけではない。
「僕たちは肝試しに来たんだ。決して危害を加えるつもりはないし、口外もしない」
光秀が包み隠さず正直に言う。
しかしそれに対する河童の答えは嘲笑だった。
「ふんっ、何を勘違いしておる。危害を加えるつもりないだと? 貴様ら下等な人間なんぞが儂に傷などつけれるものか」
河童は薄っすらと笑いを浮かべている。
悠火はふと気になったことを聞いた。
「最近噂になってる、魂が抜けたみたいな人たちはお前がやったのか?」
「ああ、そうだ。尻子玉と言ってな、お陰で少しだが妖力が回復したよ。これで儂をここに封印した憎き妖術師共に復讐ができる」
「妖術師……?」
小説や漫画でしか聞いたことのない単語が河童の口から出たことに悠火は驚いた。
「さてと、おしゃべりが過ぎたな。貴様らの魂も儂が食ってやる」
河童は地面に横たわり気絶している奏鳴の方をチラリと見ると、そのままゆっくりと手を伸ばす。
「おいっ! やめろ!」
悠火は咄嗟に手に持っていたライトで河童の顔を照らす。
「なっ! なんだ! それは!」
どうやら河童は人間が開発したライトを知らないようだ。
河童が怯んだ隙に悠火は奏鳴を抱えて光秀と共に洞窟から脱出する。
「待て!」
河童は三人を追いかけ来る。
洞窟を抜け、三人は麓を目指して走る。
しかし、河童も足が速くこのままでは追いつかれてしまう。
体力に自信があるとはいえ奏鳴を背負っている悠火はそこまで速く走れない。
「光秀! どうする!?」
光秀は顎に手を当てて考える。
額には汗が滲み、呼吸も荒い。
「確かこの辺りに古い神社があったはずだ!あいつが妖怪なら神社には入れないかもしれない」
「それ、どこにあるんだよ!」
光秀は後ろから迫りくる河童を横目に確認し、覚悟を決めたように一度目をギュッと瞑った。
「付いて来て!」
光秀のナビに付いて行き、何とか古びた神社まで逃げ切ることができた。
三人は建物の中に入ると、扉を木の棒で塞いだ。
「な、何とかここまで来たけど……本当にあいつにバレないのか?」
「わからないよ……今はとにかく祈るしかない」
一先ずすぐに河童が入ってくる気配はない。
その間に悠火は何か武器になるものはないかと、神社内を物色する。
すると、神棚に木の箱が置いてあるのに気がついた。
「ん? 何だ? あれ……」
背伸びをして何とか木の箱を手に取る。
恐る恐る箱を開けると、中には御札の貼られた狐の面が入っていた。
「狐の面? 何なんだこれ?」
悠火は狐の面を持ち上げる。
すると、持ち上げた拍子に御札が1枚剥がれてしまった。
「あ、やべ!」
慌てて付け直し、狐の面を箱に戻す。
再び武器になるものを探そうともう一度寺の中を見渡した。
「ぐぁ!」
すると突然光秀の悲鳴が聞こえた。
悠火が声がした方を向くとそこには先程の河童が立っていた。
足元には右腕から血を流している光秀が倒れている。
「な、なんで!? ここは神社だから妖怪のお前は入ってこれないんじゃねぇのかよ!」
「ん? ここ神社だったのか? 結界がショボすぎて気づかなかったぜ。さてと、鬼ごっこは終わりだ。儂の妖力の糧となれ!」
河童は悠火に水滴を飛ばす。
ただの水であることは間違いない、しかしそれは銃弾のようなスピードで飛んで来る。
「くっ!」
悠火の脳裏には走馬灯のように記憶が巡った。
そして、直後に悠火は水に体中を撃ち抜かれるだろう。
しかし、いつまで経っても水は来ない。
悠火はゆっくり目を開けると、悠火と河童の間に和装の少女が立っていた。
「まったく。妾の社で好き勝手暴れるでない」
「何だ貴様? 何処から湧いて出てきた!」
驚いているのは悠火だけではなかった。
「人に物を聞く時は“お願いします”をつけぬか、馬鹿者。じゃが、寛大な妾は答えてやろう」
少女は右手を胸に当て、自信ありげに言った。
「妾の名は妖狐。全ての妖の中で最高の妖力を有する妖怪じゃ」
これが俺と妖狐の初めての出会いだった。
読んでいただきありがとうございます。コングです。
今回は少し長くなってしまいました。申し訳ないです!
現代アクション小説のため、妖怪たちに能力を与えています。
本来はこんな能力あるはずないんですけど……
まあそこは、フィクションなので!
それではまた次回!
2020/3/25一部改稿
「な、なんだよ!こいつ!」
悠火は目の前で起こっている異常を頭では理解することが出来ずにいた。
「信じられない! こんなものが存在するなんて!」
秀才光秀でもこの状況は飲み込めないらしい。
それもそうだ、目の前いるのは妖怪、河童なのだから。
「何をしに来た……人間……」
やはり先程聞いた誰のものでもない声はやはり河童のものだったようだ。
「会話が出来るのか……?」
光秀が恐る恐る話しかける。
「儂を畜生や虫螻と同じだと思っておるのか? さっさと要件を言え」
要件と言っても、三人は肝試しに来たのだ。
何か用があって来たわけではない。
「僕たちは肝試しに来たんだ。決して危害を加えるつもりはないし、口外もしない」
光秀が包み隠さず正直に言う。
しかしそれに対する河童の答えは嘲笑だった。
「ふんっ、何を勘違いしておる。危害を加えるつもりないだと? 貴様ら下等な人間なんぞが儂に傷などつけれるものか」
河童は薄っすらと笑いを浮かべている。
悠火はふと気になったことを聞いた。
「最近噂になってる、魂が抜けたみたいな人たちはお前がやったのか?」
「ああ、そうだ。尻子玉と言ってな、お陰で少しだが妖力が回復したよ。これで儂をここに封印した憎き妖術師共に復讐ができる」
「妖術師……?」
小説や漫画でしか聞いたことのない単語が河童の口から出たことに悠火は驚いた。
「さてと、おしゃべりが過ぎたな。貴様らの魂も儂が食ってやる」
河童は地面に横たわり気絶している奏鳴の方をチラリと見ると、そのままゆっくりと手を伸ばす。
「おいっ! やめろ!」
悠火は咄嗟に手に持っていたライトで河童の顔を照らす。
「なっ! なんだ! それは!」
どうやら河童は人間が開発したライトを知らないようだ。
河童が怯んだ隙に悠火は奏鳴を抱えて光秀と共に洞窟から脱出する。
「待て!」
河童は三人を追いかけ来る。
洞窟を抜け、三人は麓を目指して走る。
しかし、河童も足が速くこのままでは追いつかれてしまう。
体力に自信があるとはいえ奏鳴を背負っている悠火はそこまで速く走れない。
「光秀! どうする!?」
光秀は顎に手を当てて考える。
額には汗が滲み、呼吸も荒い。
「確かこの辺りに古い神社があったはずだ!あいつが妖怪なら神社には入れないかもしれない」
「それ、どこにあるんだよ!」
光秀は後ろから迫りくる河童を横目に確認し、覚悟を決めたように一度目をギュッと瞑った。
「付いて来て!」
光秀のナビに付いて行き、何とか古びた神社まで逃げ切ることができた。
三人は建物の中に入ると、扉を木の棒で塞いだ。
「な、何とかここまで来たけど……本当にあいつにバレないのか?」
「わからないよ……今はとにかく祈るしかない」
一先ずすぐに河童が入ってくる気配はない。
その間に悠火は何か武器になるものはないかと、神社内を物色する。
すると、神棚に木の箱が置いてあるのに気がついた。
「ん? 何だ? あれ……」
背伸びをして何とか木の箱を手に取る。
恐る恐る箱を開けると、中には御札の貼られた狐の面が入っていた。
「狐の面? 何なんだこれ?」
悠火は狐の面を持ち上げる。
すると、持ち上げた拍子に御札が1枚剥がれてしまった。
「あ、やべ!」
慌てて付け直し、狐の面を箱に戻す。
再び武器になるものを探そうともう一度寺の中を見渡した。
「ぐぁ!」
すると突然光秀の悲鳴が聞こえた。
悠火が声がした方を向くとそこには先程の河童が立っていた。
足元には右腕から血を流している光秀が倒れている。
「な、なんで!? ここは神社だから妖怪のお前は入ってこれないんじゃねぇのかよ!」
「ん? ここ神社だったのか? 結界がショボすぎて気づかなかったぜ。さてと、鬼ごっこは終わりだ。儂の妖力の糧となれ!」
河童は悠火に水滴を飛ばす。
ただの水であることは間違いない、しかしそれは銃弾のようなスピードで飛んで来る。
「くっ!」
悠火の脳裏には走馬灯のように記憶が巡った。
そして、直後に悠火は水に体中を撃ち抜かれるだろう。
しかし、いつまで経っても水は来ない。
悠火はゆっくり目を開けると、悠火と河童の間に和装の少女が立っていた。
「まったく。妾の社で好き勝手暴れるでない」
「何だ貴様? 何処から湧いて出てきた!」
驚いているのは悠火だけではなかった。
「人に物を聞く時は“お願いします”をつけぬか、馬鹿者。じゃが、寛大な妾は答えてやろう」
少女は右手を胸に当て、自信ありげに言った。
「妾の名は妖狐。全ての妖の中で最高の妖力を有する妖怪じゃ」
これが俺と妖狐の初めての出会いだった。
読んでいただきありがとうございます。コングです。
今回は少し長くなってしまいました。申し訳ないです!
現代アクション小説のため、妖怪たちに能力を与えています。
本来はこんな能力あるはずないんですけど……
まあそこは、フィクションなので!
それではまた次回!
2020/3/25一部改稿
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6
コメント
コング“シルバーバック”
有ろう筈もございません
黄崎うい
読んだ、面白かった、もっと早く読めば良かった、文句ある?