ナイツオブソードオンライン
第66話四つの領土の下側の世界《デスヘル高原》
何とか勝てたか...、にしてもーー。
ジャッチマスターは、こちらをじっと眺めたままだ。
ジャッチマスターっと言う符号の割には、強くないかな...。
第1層...本当にソロで勝ったのか?って疑いたくなるぐらいだな。
レクトの脳裏に浮かぶのは、ボスモンスターの耐久値の高さとジャッチマスターの初心者並の動きの二つ。
ボスモンスターに至っては、仕様的にしょうがないが、ジャッチマスターの動きが...初期状態に近い状態にしか見えない。
理由を上げるとなれば、身体能力が低いければ『実戦経験』がまるで無い
『不服だ、貴様に...任せてしまうとはな。だが、その武を示したーーついて来い』
ガチャガチャと鎧を鳴らしながらレクトの真横を歩き始める。
レクトは突き刺さる白い刀を抜き、青い剣を左肩にある鞘に収めて言う。
『なぁ?お前...本当にジャッチマスターなのか?』
歩む橋を一時止め、背中越しでジャッチマスターは答える
『真実は、常に闇の中にある。守れなかった者が居れば、奪い取る者までいるーー貴様はどちらだ?』
レクトは、首を傾げて頬を掻く。
ジャッチマスターは、そのまま再び歩き始める。
『ねぇ、ジャッチマスターさんってさ...』っとレクトに並ぶ様に立つアリスは言った。
『多分本来の力を失ってるんだろうな...。ただ、1層での話は本当らしいから、矛盾してるよな』
レクトが、そう言いジャッチマスターの後を追い歩き始める。
石畳の階段を登り、巨大な門の前に辿り着く。
普段なら、この門を開けるには...キーアイテムとボスを撃破が条件とされている。だが、ジャッチマスターは刃が折れた自身が所有する剣を脇差から抜き取り、巨大な門にある小さい刻みに向かって振り落とす。
キーンという効果音を鳴らし、巨大な門が開き始めるーー
鈍く引き摺る音を鳴らし、開く門をジャッチマスターは歩き始める
その後を追うように、レクト達も巨大な門を歩き通り抜ける。
門が閉まる音が鳴るのと同時に、周りの景色が映し出される
周りの景色は、無残にもボロボロになっていた城が一つ目に留まり
周りも、激しさを物語る様な殺風景が広がる。
戸惑いをあらわにするレクト達ーー
そんなさなかで、ジャッチマスターはその歩みを止めて立ち止まる。
肩越しに向き、ジャッチマスターは言う。
『精霊らには分からない地だろ?』
『あ、あぁ...何だ...この場所?』
『死都アルティク。最果ての地に、こんな城があることに不自然ではないかと思わんか?』
『不自然と言うか、おかしいだろ...死都と呼ばれてるぐらいだ。城があるから、元々は人が居たんだろ?』
『『かつてはな』。10年前、この街アルティクは帝国として栄えていた軍人の街だ。だが、そんなある日ーーある人物によって戦争が引き起こされた』
『戦争...』
『私は、10人居るジャッチマスター中でも1番手に立つ者だ。自国を維持する主に仕えていた番犬だったのだがーーー。』
そっから先の話は、あまりにも酷な話だった。
仕えていた主は暗殺、守るものを失くし、次に仕えた次期王子。あらゆる命令に背かず忠実にこなしていたある日だーーー、その王子は...いまの帝国内でクーデターを引き起こし内戦に勃発
反乱軍と帝国軍に二つに分かれた。
長く続いた戦いに終止符として使われた《魔石》の力により、アルティクは消し飛んだーーっと言う話だ。
その魔石と王子は、姿を消し行方不明
生きてるかさえわからなければ、全てを失っていた。
石畳に積み重なった門を眺めるジャッチマスター。その背中に映るのは屈辱と言う言葉しか浮かばない
レクトとアリスは、互いの顔を見合わせて頷く。
『なぁジャッチマスター、《魔石》ってこんな形してないか?』
レクトが手に持っていたのは、五角形に削られた淡い青い光を放つ《宝石》
だ。武器を強化する時に属性を追加出来る素材でもある《宝石》ーーー。
ジャッチマスターは、驚きながらその《宝石》を手に取り言う
『貴様ら、これをどこで?』
『モンスタードロップ品かな』
『容易く手に入るのか?』
『いや、ごく稀だから...たやすくには手に入らない』
『妖精の世界には《魔石》と同じ力を持つ石があるのか...』
ジャッチマスターは、その石をレクトに投げ飛ばす。
レクトは石を左手で掴み、ゆるい声で話す
『その《魔石》とやら、ちょっと興味がある。もしかしたら、俺達が知る《超合金》かもしれない』
『貴様らもか...《魔石》に興味を示すのか。悪い事は言わん、アレを扱うには...力が必要だ。貴様らでは無理に等しい』
レクトは、少しだけ残念そうな顔を浮かべながら言う
『そっか、なら仕方が無いな』っと石畳の門を見上げた瞬間、目に止まる人影。
橋と連結している門だが、今やその形すら危うい状況だ。
そんな足場も悪い、石畳の門の上に人が居ると到底思えない。
ジャッチマスターは、見上げたままこう答える。
『見えたか今の奴...?』
無論、見えたのには変わりがない
『あぁ...なんだ今の人影』っと肩越しに後ろをちらっと向く。
レクトの視線に映るのは、冷や汗を掻きながら動揺を隠すアヤ。上半身裸で、天を見上げる上杉将軍。そしてーー青ざめて動揺を隠しきれないアリス。
レクトは、再び前を振り向く
石畳の門からその人影が落ちて来る瞬時に、ジャッチマスターは叫ぶ
『来るぞ、貴様らの力を奴に放て!』
人影は着地後、風圧と砂を巻き上げる
その狭間と同時に砂煙の中から、一人の青年がレクトに向かって飛んでくる一瞬でジャッチマスターがレクトの盾になる様に動き青年は剣を振り落とす。
青年の握る剣手首に、相殺するようにジャッチマスターも手首で振り落とす剣を止める。
『久しいな、祖国を捨てたジャッチマスターが何故ここにいる?』
『祖国を捨てたのはどちらだ?生きる死がねに成り果てた貴様がそれを私に言う権利があるのか?』
『ほざけ、忠誠する者が無い今、ジャッチマスターが生きる価値なんてとうに失ってる!この国諸共、崩壊に導いた罪人がなんの価値がある!』
『罪人...私には等しい対価だ。なら貴様は、その肉塊を無くしてまでなぜ尽くそうとする?生きる意味をとうに見失ってる廃人ではないかーー!』
お互いの腕を押し合い、弾くーー。
ジャッチマスターは、レクトにこう告げる。
『貴様らをここに連れてきた理由、奴を解き放って貰いたい。力をなくして、無の力に囚われ、やがて肉塊はなくともあの様な廃人になり落ちる』
レクトは、そっと頷き、そして青い剣を引き抜き、白い刀をジャッチマスターの前に突き刺して言う。
『貸してやる、後できっちり返せよ』
レクトは、ゆっくりと前に歩き青い剣を構えてその青年に向かって言い吐く
『主を失っても尚、廃人としても、忠誠を尽くそう頑張る...悪くないが。行ける世界すら拒む、なぜだか分かるか?』
青年は、体を揺らすだけで答えない
それを見てレクトは、少しだけトーを低めに言う
『自分自身に縛られてる。これが、お前にはお似合いな言葉さ』
青年は、床を蹴り走り出す
白銀に光らせる刃を糸を引き、レクトに攻め寄る。
その瞬時、レクトは胸に剣を引き寄せ
静かに呟く
『青い光を、今こそ解き放つーー蒼き刃を時を止めろ』
時間がゆっくりと時が止まり始める
レクトは軽くなぎ払い、三回連続切り
ーーそして、穿つ突きを放ち、振り返りと同時に切り上げる。
レクトが剣を再び振ると、時が流れ始め時差を感じさせるように青年に放たれる
複数の紫色の雷光が青年に当たり
背後に青い雷光が一直線に伸びる。
『ぐはっ...?!』
一瞬の出来事で、騒然とするアリス達の眼差しはレクトに向けられる。
北西大陸の天空城に、秘蔵されていた《宝剣・蒼刻の剣》。
一つ目の使い方は、《ソード・ブレイド》で二つ目が、《時のゾーン》だ。
伝説の剣とも呼ばれ、その力は計り知れないと言われている武器。何故スキル状に存在しないスキルが存在するかのか、それは極めて簡単で...。
《武器オートスキル》、省略すると《BSO》、武器に付いているオートスキルでこうゆう類のオートは伝説武器種ならあると言う噂がある。
ま、実践で使ったのはこれが初めてだ
ーーだが。
青年のHPゲージは減ってはない。
異様な眼差しで後ろを振り返るレクト、カーソルを飛ばしターゲットアイコンに表示される文字を見る。
《HFO》っと表示されることに気づく
HFOは破壊不可能オブジェクトの略、つまり彼は...不死状態を表す。
不死存在!?この世界にそれは存在しないはずだ...!どうゆう事だ!?
『俺は死なねぇ...いくら叩かれようと、死にやしねぇんだ!!』
青年は両手を開き前に翳して、紫色の光線を放つ。バチッと音が鳴り響き弾かれるレクトは床を転がるーー
アリスはレクトの元に駆け寄り
問いかける。目をうっすら開け、残りHPバーを眺める
レットゾーンを示していた、たった一撃で半数以上のダメージを喰らったのだ。
アリスからエックスポーションを口に突っ込まれ、少し驚き顔をする
ほんのり甘い味わいで、奥深い濃厚な味でビリビリ刺激する炭酸が効いて病みつきになりそうな味を堪能して、目を一気に開き体を起こす。
口にくわえていた空瓶を手に取り、投げ飛ばす、パリィンっとガラスが割れる音が鳴る。
『サンキューアリス...』
『いきなり死にかけないでよ、レクトがこっから消えたらまた一番最初の場所まで戻るはめになるんだからね』
『肝に銘じます...迂闊だったから許して...』
『じゃあ、伝説武器の探してくれるなら...許す』
『え...分かった...』
レクトは、座り込みあぐらを書きながら、アリスにさっきの事を説明を兼ねて告げた。
アリスもやはり、レクトと同じような表情を浮かべ驚きを隠せない
だが、引き摺る強ばったアリスの表情にレクトは笑い言う
『本当にアリスってゴースト種ダメだよなぁ?』
『わ、わ、笑わないでよ!?』
『まぁ、それはそれとしてーーー』
レクトは目線を細めトーンを低めて話し始める。
『帝国戦記だから、俺達はメインじゃない。ジャッチマスターが話のメインの筈だから、あの青年を倒せないかもしれない。』
『不死存在だもんね...、私達じゃどうにもできない部分。でも、ジャッチマスター動く気配すらしないわよ?』
レクトは、黒曜石の瞳を光らせながらさらに話す
『ジャッチマスターって十人居るんだろ?もしかしたら、揃えなきゃ進まないんじゃないかって思うんだけど...あと九人の居場所さがすとなるとなぁ』
『砂の蟻を探すような感じよね...』
お互いため息をつき、レクトはゆっくりと立ち上がりジャッチマスターに向かって言う
『悪いけど、俺達一回戻る』っと告げた瞬間、空間が捩れる感覚に晒され
『ふん、腰抜け共め。戦前離脱は騎士の恥だーーー。』っと言う声が聞こえた。浮遊に浮く体を石柱に掴み、キーンっと言う金属音が鳴り響くーー
捻れた空間はやがて、視界は元通りになり
見慣れない場所に、5人は佇すんでいた。
竹林が生い茂、和を感じさせる整備された道筋が目の前に止まる。
レクトは、青い剣を背中にある鞘に収め、周りを見渡しアリスは、MAPを開き現在地を確認、アヤは、ストレージを開きアイテム数を確認、上杉将軍は、怠惰したように両肩をがっくり下げて下を俯けば、ビルガは腰に手を当て待機する。
第2層クリア後、普通なら一時休憩エリアに繋がるが、ジャッチマスターが案内された《異空間》の《死都アルティク》そして、この見知らない場所と来たか...。
すると、アリスはMAP越しに言う
『四つの領土の裏側世界...かな?』
『と言いますと?』
『地獄...つまり、デスヘル高原って場所を示してるわよ』
『つまり、領土の裏側じゃなく、下側の世界って事か...。恐ろしく強いんだろうな、敵』
自分達が踏んで歩いてる地面の真下側の世界、そんな場所の敵の強さを考えれば...嫌気がさす。
とは言え、先に進まなきゃ意味が無い
先に進まなきゃ意味が無いーーか。文字通りの仕様だな、嫌になるぜ
ローカルプレニング、略せば誰もが分かる《RPG》だ。
ジャンル的には、この作品だけがまともでファンタジーな仕様が様々だが、唯一、一人だけ世界観ぶち壊す存在もいる。それでも、問題なく進行できるクエストはなかなかである。
竹林の道を歩き進むと、小さく可愛いモンスターとエンカウントする
気が抜けたようなその愛らしい顔に、アヤは近づき撫でようと手を伸ばそうとした瞬間、腕をレクトはガッと掴み苦笑いを浮かべながらいう
『アヤ、それ触れたら...腕飛ぶぞ?』
『へ?可愛いモンスターですよ...?腕を吹き飛ばすようには見えないですよ』
レクトは、目線を細めライブラを発動してモンスター詳細を調べる。
出たデータをゆっくりとした口取りで言う
『推定レベル...98、自然体モンスターの中では凶悪な精霊種。迂闊に触れると、非常に強い麻痺を浴びて...スタンさせてから、キラーモンスターと同様な速い攻撃を仕掛けてくる...らしい』
アヤは、疑いの目をそのモンスターに向けながら話す
『本当でしょうか...ね?』
つぶらぬ瞳の輝きが、アヤに向けられ
触りたい意欲が加速する。
レクトは、アヤの腕を引っ張り、引き摺りながら歩き始める
『あぁ~!レクトさん、鬼畜ですよ~!』
『誤解される言い方するなよ...ーーー
ハッ!?』
殺意はレクトの背中に向けられ突き刺さる、間違いなくーーアリスの嫉妬そのものだ。
背中越しに燃えるような熱い熱気を感じさせる視線は痛いほど感じる。
な、何か切れてるな...
でも、今アヤを手放したら...確実に触りに行くだろ。
そうなったら、あのモンスター誰が止めるんだよ...
すると、上杉将軍は...レクトに向かって『全て、私にぶつけてくれ...』っと干からびれた頬と肉体、痩せた顔つきでそういってくる。
仕方がないーーっとアヤの腕を離した瞬間、自然体モンスターのHPゲージの色がグリーンからレットに切り替わった。
つまり、この地点で、逃げなきゃパーティー全滅する知らせを肌に感じ取ったレクトーー。
『に、逃げるぞーーー!!』
『えっ?えぇぇぇーー!?』
『ちょ、ちょっと、レクト待ってよーー!!』
アヤ、レクト、アリスは戦闘から離脱した。
ビルガは、上杉将軍を呼び起こす。
上杉将軍は、返事がないしがねのようだ...。
ビルガは、復活の呪文を唱えた。
上杉将軍には、効果がないようだ...。
ビルガは、復活する薬を飲ませた。
上杉将軍は、口から泡を吹き白目を剥き始めた、アウェイ状態になった。
ビルガは、上杉将軍を見捨てた...
上杉将軍は、仰向けになり1のように地面に立てになる。
妖精ラビットは、上杉将軍の体全体にクリティカルヒットを連発した。
上杉将軍は、正気を取り戻した。
上杉将軍は、反撃の《美肌ハイウェイ》を放った。
妖精ラビットに、異常状態を引き起こし、最大HPゲージを半分にした。
上杉将軍は、《ジャスティス・マイ・ボディ》を放った。
妖精ラビットは、精神的ダメージを受け術力半減した。
妖精ラビットは《怒りの快進撃》を放った。
上杉将軍は、受けたダメージを回復した。ランランとした眼差しになった
妖精ラビットは《ライフ・ア・デス》
を放った。
上杉将軍は、パンイチになった。
上杉将軍は、《布切れ1枚の怒り》を放ったがミスした。
妖精ラビットは、仲間を呼んだ。
なんと、フンババが姿を現した。
ーーーーー上杉将軍はパーティーから外れました。っとログを通じて知らせをウィンドウ越しに眺めていたレクト。
お前の勇姿を...忘れないぞ。っと内心的に思って、ウィンドウを閉じる
ある問題を兼ねて...。
逃げた先は、荒れ果てた荒野...
剣が地面に何本も突き刺さっている
空は薄暗い曇り、視界を遮る様な紫色の霧が周りの見通しを悪くしていた
動けない状態っとしか言えない。
だが、問題はもう一つあるそれが、パーティーとはぐれた...。逃げるタイミングは一緒だった筈だが、どっかではぐれたに違いない。
霧が晴れるのを伺うが、どうもこの地帯は霧が発生しやすい場所らしい
ため息をついて、手頃なサイズの岩に座り周りを眺めるーー。
ジャッチマスターは、こちらをじっと眺めたままだ。
ジャッチマスターっと言う符号の割には、強くないかな...。
第1層...本当にソロで勝ったのか?って疑いたくなるぐらいだな。
レクトの脳裏に浮かぶのは、ボスモンスターの耐久値の高さとジャッチマスターの初心者並の動きの二つ。
ボスモンスターに至っては、仕様的にしょうがないが、ジャッチマスターの動きが...初期状態に近い状態にしか見えない。
理由を上げるとなれば、身体能力が低いければ『実戦経験』がまるで無い
『不服だ、貴様に...任せてしまうとはな。だが、その武を示したーーついて来い』
ガチャガチャと鎧を鳴らしながらレクトの真横を歩き始める。
レクトは突き刺さる白い刀を抜き、青い剣を左肩にある鞘に収めて言う。
『なぁ?お前...本当にジャッチマスターなのか?』
歩む橋を一時止め、背中越しでジャッチマスターは答える
『真実は、常に闇の中にある。守れなかった者が居れば、奪い取る者までいるーー貴様はどちらだ?』
レクトは、首を傾げて頬を掻く。
ジャッチマスターは、そのまま再び歩き始める。
『ねぇ、ジャッチマスターさんってさ...』っとレクトに並ぶ様に立つアリスは言った。
『多分本来の力を失ってるんだろうな...。ただ、1層での話は本当らしいから、矛盾してるよな』
レクトが、そう言いジャッチマスターの後を追い歩き始める。
石畳の階段を登り、巨大な門の前に辿り着く。
普段なら、この門を開けるには...キーアイテムとボスを撃破が条件とされている。だが、ジャッチマスターは刃が折れた自身が所有する剣を脇差から抜き取り、巨大な門にある小さい刻みに向かって振り落とす。
キーンという効果音を鳴らし、巨大な門が開き始めるーー
鈍く引き摺る音を鳴らし、開く門をジャッチマスターは歩き始める
その後を追うように、レクト達も巨大な門を歩き通り抜ける。
門が閉まる音が鳴るのと同時に、周りの景色が映し出される
周りの景色は、無残にもボロボロになっていた城が一つ目に留まり
周りも、激しさを物語る様な殺風景が広がる。
戸惑いをあらわにするレクト達ーー
そんなさなかで、ジャッチマスターはその歩みを止めて立ち止まる。
肩越しに向き、ジャッチマスターは言う。
『精霊らには分からない地だろ?』
『あ、あぁ...何だ...この場所?』
『死都アルティク。最果ての地に、こんな城があることに不自然ではないかと思わんか?』
『不自然と言うか、おかしいだろ...死都と呼ばれてるぐらいだ。城があるから、元々は人が居たんだろ?』
『『かつてはな』。10年前、この街アルティクは帝国として栄えていた軍人の街だ。だが、そんなある日ーーある人物によって戦争が引き起こされた』
『戦争...』
『私は、10人居るジャッチマスター中でも1番手に立つ者だ。自国を維持する主に仕えていた番犬だったのだがーーー。』
そっから先の話は、あまりにも酷な話だった。
仕えていた主は暗殺、守るものを失くし、次に仕えた次期王子。あらゆる命令に背かず忠実にこなしていたある日だーーー、その王子は...いまの帝国内でクーデターを引き起こし内戦に勃発
反乱軍と帝国軍に二つに分かれた。
長く続いた戦いに終止符として使われた《魔石》の力により、アルティクは消し飛んだーーっと言う話だ。
その魔石と王子は、姿を消し行方不明
生きてるかさえわからなければ、全てを失っていた。
石畳に積み重なった門を眺めるジャッチマスター。その背中に映るのは屈辱と言う言葉しか浮かばない
レクトとアリスは、互いの顔を見合わせて頷く。
『なぁジャッチマスター、《魔石》ってこんな形してないか?』
レクトが手に持っていたのは、五角形に削られた淡い青い光を放つ《宝石》
だ。武器を強化する時に属性を追加出来る素材でもある《宝石》ーーー。
ジャッチマスターは、驚きながらその《宝石》を手に取り言う
『貴様ら、これをどこで?』
『モンスタードロップ品かな』
『容易く手に入るのか?』
『いや、ごく稀だから...たやすくには手に入らない』
『妖精の世界には《魔石》と同じ力を持つ石があるのか...』
ジャッチマスターは、その石をレクトに投げ飛ばす。
レクトは石を左手で掴み、ゆるい声で話す
『その《魔石》とやら、ちょっと興味がある。もしかしたら、俺達が知る《超合金》かもしれない』
『貴様らもか...《魔石》に興味を示すのか。悪い事は言わん、アレを扱うには...力が必要だ。貴様らでは無理に等しい』
レクトは、少しだけ残念そうな顔を浮かべながら言う
『そっか、なら仕方が無いな』っと石畳の門を見上げた瞬間、目に止まる人影。
橋と連結している門だが、今やその形すら危うい状況だ。
そんな足場も悪い、石畳の門の上に人が居ると到底思えない。
ジャッチマスターは、見上げたままこう答える。
『見えたか今の奴...?』
無論、見えたのには変わりがない
『あぁ...なんだ今の人影』っと肩越しに後ろをちらっと向く。
レクトの視線に映るのは、冷や汗を掻きながら動揺を隠すアヤ。上半身裸で、天を見上げる上杉将軍。そしてーー青ざめて動揺を隠しきれないアリス。
レクトは、再び前を振り向く
石畳の門からその人影が落ちて来る瞬時に、ジャッチマスターは叫ぶ
『来るぞ、貴様らの力を奴に放て!』
人影は着地後、風圧と砂を巻き上げる
その狭間と同時に砂煙の中から、一人の青年がレクトに向かって飛んでくる一瞬でジャッチマスターがレクトの盾になる様に動き青年は剣を振り落とす。
青年の握る剣手首に、相殺するようにジャッチマスターも手首で振り落とす剣を止める。
『久しいな、祖国を捨てたジャッチマスターが何故ここにいる?』
『祖国を捨てたのはどちらだ?生きる死がねに成り果てた貴様がそれを私に言う権利があるのか?』
『ほざけ、忠誠する者が無い今、ジャッチマスターが生きる価値なんてとうに失ってる!この国諸共、崩壊に導いた罪人がなんの価値がある!』
『罪人...私には等しい対価だ。なら貴様は、その肉塊を無くしてまでなぜ尽くそうとする?生きる意味をとうに見失ってる廃人ではないかーー!』
お互いの腕を押し合い、弾くーー。
ジャッチマスターは、レクトにこう告げる。
『貴様らをここに連れてきた理由、奴を解き放って貰いたい。力をなくして、無の力に囚われ、やがて肉塊はなくともあの様な廃人になり落ちる』
レクトは、そっと頷き、そして青い剣を引き抜き、白い刀をジャッチマスターの前に突き刺して言う。
『貸してやる、後できっちり返せよ』
レクトは、ゆっくりと前に歩き青い剣を構えてその青年に向かって言い吐く
『主を失っても尚、廃人としても、忠誠を尽くそう頑張る...悪くないが。行ける世界すら拒む、なぜだか分かるか?』
青年は、体を揺らすだけで答えない
それを見てレクトは、少しだけトーを低めに言う
『自分自身に縛られてる。これが、お前にはお似合いな言葉さ』
青年は、床を蹴り走り出す
白銀に光らせる刃を糸を引き、レクトに攻め寄る。
その瞬時、レクトは胸に剣を引き寄せ
静かに呟く
『青い光を、今こそ解き放つーー蒼き刃を時を止めろ』
時間がゆっくりと時が止まり始める
レクトは軽くなぎ払い、三回連続切り
ーーそして、穿つ突きを放ち、振り返りと同時に切り上げる。
レクトが剣を再び振ると、時が流れ始め時差を感じさせるように青年に放たれる
複数の紫色の雷光が青年に当たり
背後に青い雷光が一直線に伸びる。
『ぐはっ...?!』
一瞬の出来事で、騒然とするアリス達の眼差しはレクトに向けられる。
北西大陸の天空城に、秘蔵されていた《宝剣・蒼刻の剣》。
一つ目の使い方は、《ソード・ブレイド》で二つ目が、《時のゾーン》だ。
伝説の剣とも呼ばれ、その力は計り知れないと言われている武器。何故スキル状に存在しないスキルが存在するかのか、それは極めて簡単で...。
《武器オートスキル》、省略すると《BSO》、武器に付いているオートスキルでこうゆう類のオートは伝説武器種ならあると言う噂がある。
ま、実践で使ったのはこれが初めてだ
ーーだが。
青年のHPゲージは減ってはない。
異様な眼差しで後ろを振り返るレクト、カーソルを飛ばしターゲットアイコンに表示される文字を見る。
《HFO》っと表示されることに気づく
HFOは破壊不可能オブジェクトの略、つまり彼は...不死状態を表す。
不死存在!?この世界にそれは存在しないはずだ...!どうゆう事だ!?
『俺は死なねぇ...いくら叩かれようと、死にやしねぇんだ!!』
青年は両手を開き前に翳して、紫色の光線を放つ。バチッと音が鳴り響き弾かれるレクトは床を転がるーー
アリスはレクトの元に駆け寄り
問いかける。目をうっすら開け、残りHPバーを眺める
レットゾーンを示していた、たった一撃で半数以上のダメージを喰らったのだ。
アリスからエックスポーションを口に突っ込まれ、少し驚き顔をする
ほんのり甘い味わいで、奥深い濃厚な味でビリビリ刺激する炭酸が効いて病みつきになりそうな味を堪能して、目を一気に開き体を起こす。
口にくわえていた空瓶を手に取り、投げ飛ばす、パリィンっとガラスが割れる音が鳴る。
『サンキューアリス...』
『いきなり死にかけないでよ、レクトがこっから消えたらまた一番最初の場所まで戻るはめになるんだからね』
『肝に銘じます...迂闊だったから許して...』
『じゃあ、伝説武器の探してくれるなら...許す』
『え...分かった...』
レクトは、座り込みあぐらを書きながら、アリスにさっきの事を説明を兼ねて告げた。
アリスもやはり、レクトと同じような表情を浮かべ驚きを隠せない
だが、引き摺る強ばったアリスの表情にレクトは笑い言う
『本当にアリスってゴースト種ダメだよなぁ?』
『わ、わ、笑わないでよ!?』
『まぁ、それはそれとしてーーー』
レクトは目線を細めトーンを低めて話し始める。
『帝国戦記だから、俺達はメインじゃない。ジャッチマスターが話のメインの筈だから、あの青年を倒せないかもしれない。』
『不死存在だもんね...、私達じゃどうにもできない部分。でも、ジャッチマスター動く気配すらしないわよ?』
レクトは、黒曜石の瞳を光らせながらさらに話す
『ジャッチマスターって十人居るんだろ?もしかしたら、揃えなきゃ進まないんじゃないかって思うんだけど...あと九人の居場所さがすとなるとなぁ』
『砂の蟻を探すような感じよね...』
お互いため息をつき、レクトはゆっくりと立ち上がりジャッチマスターに向かって言う
『悪いけど、俺達一回戻る』っと告げた瞬間、空間が捩れる感覚に晒され
『ふん、腰抜け共め。戦前離脱は騎士の恥だーーー。』っと言う声が聞こえた。浮遊に浮く体を石柱に掴み、キーンっと言う金属音が鳴り響くーー
捻れた空間はやがて、視界は元通りになり
見慣れない場所に、5人は佇すんでいた。
竹林が生い茂、和を感じさせる整備された道筋が目の前に止まる。
レクトは、青い剣を背中にある鞘に収め、周りを見渡しアリスは、MAPを開き現在地を確認、アヤは、ストレージを開きアイテム数を確認、上杉将軍は、怠惰したように両肩をがっくり下げて下を俯けば、ビルガは腰に手を当て待機する。
第2層クリア後、普通なら一時休憩エリアに繋がるが、ジャッチマスターが案内された《異空間》の《死都アルティク》そして、この見知らない場所と来たか...。
すると、アリスはMAP越しに言う
『四つの領土の裏側世界...かな?』
『と言いますと?』
『地獄...つまり、デスヘル高原って場所を示してるわよ』
『つまり、領土の裏側じゃなく、下側の世界って事か...。恐ろしく強いんだろうな、敵』
自分達が踏んで歩いてる地面の真下側の世界、そんな場所の敵の強さを考えれば...嫌気がさす。
とは言え、先に進まなきゃ意味が無い
先に進まなきゃ意味が無いーーか。文字通りの仕様だな、嫌になるぜ
ローカルプレニング、略せば誰もが分かる《RPG》だ。
ジャンル的には、この作品だけがまともでファンタジーな仕様が様々だが、唯一、一人だけ世界観ぶち壊す存在もいる。それでも、問題なく進行できるクエストはなかなかである。
竹林の道を歩き進むと、小さく可愛いモンスターとエンカウントする
気が抜けたようなその愛らしい顔に、アヤは近づき撫でようと手を伸ばそうとした瞬間、腕をレクトはガッと掴み苦笑いを浮かべながらいう
『アヤ、それ触れたら...腕飛ぶぞ?』
『へ?可愛いモンスターですよ...?腕を吹き飛ばすようには見えないですよ』
レクトは、目線を細めライブラを発動してモンスター詳細を調べる。
出たデータをゆっくりとした口取りで言う
『推定レベル...98、自然体モンスターの中では凶悪な精霊種。迂闊に触れると、非常に強い麻痺を浴びて...スタンさせてから、キラーモンスターと同様な速い攻撃を仕掛けてくる...らしい』
アヤは、疑いの目をそのモンスターに向けながら話す
『本当でしょうか...ね?』
つぶらぬ瞳の輝きが、アヤに向けられ
触りたい意欲が加速する。
レクトは、アヤの腕を引っ張り、引き摺りながら歩き始める
『あぁ~!レクトさん、鬼畜ですよ~!』
『誤解される言い方するなよ...ーーー
ハッ!?』
殺意はレクトの背中に向けられ突き刺さる、間違いなくーーアリスの嫉妬そのものだ。
背中越しに燃えるような熱い熱気を感じさせる視線は痛いほど感じる。
な、何か切れてるな...
でも、今アヤを手放したら...確実に触りに行くだろ。
そうなったら、あのモンスター誰が止めるんだよ...
すると、上杉将軍は...レクトに向かって『全て、私にぶつけてくれ...』っと干からびれた頬と肉体、痩せた顔つきでそういってくる。
仕方がないーーっとアヤの腕を離した瞬間、自然体モンスターのHPゲージの色がグリーンからレットに切り替わった。
つまり、この地点で、逃げなきゃパーティー全滅する知らせを肌に感じ取ったレクトーー。
『に、逃げるぞーーー!!』
『えっ?えぇぇぇーー!?』
『ちょ、ちょっと、レクト待ってよーー!!』
アヤ、レクト、アリスは戦闘から離脱した。
ビルガは、上杉将軍を呼び起こす。
上杉将軍は、返事がないしがねのようだ...。
ビルガは、復活の呪文を唱えた。
上杉将軍には、効果がないようだ...。
ビルガは、復活する薬を飲ませた。
上杉将軍は、口から泡を吹き白目を剥き始めた、アウェイ状態になった。
ビルガは、上杉将軍を見捨てた...
上杉将軍は、仰向けになり1のように地面に立てになる。
妖精ラビットは、上杉将軍の体全体にクリティカルヒットを連発した。
上杉将軍は、正気を取り戻した。
上杉将軍は、反撃の《美肌ハイウェイ》を放った。
妖精ラビットに、異常状態を引き起こし、最大HPゲージを半分にした。
上杉将軍は、《ジャスティス・マイ・ボディ》を放った。
妖精ラビットは、精神的ダメージを受け術力半減した。
妖精ラビットは《怒りの快進撃》を放った。
上杉将軍は、受けたダメージを回復した。ランランとした眼差しになった
妖精ラビットは《ライフ・ア・デス》
を放った。
上杉将軍は、パンイチになった。
上杉将軍は、《布切れ1枚の怒り》を放ったがミスした。
妖精ラビットは、仲間を呼んだ。
なんと、フンババが姿を現した。
ーーーーー上杉将軍はパーティーから外れました。っとログを通じて知らせをウィンドウ越しに眺めていたレクト。
お前の勇姿を...忘れないぞ。っと内心的に思って、ウィンドウを閉じる
ある問題を兼ねて...。
逃げた先は、荒れ果てた荒野...
剣が地面に何本も突き刺さっている
空は薄暗い曇り、視界を遮る様な紫色の霧が周りの見通しを悪くしていた
動けない状態っとしか言えない。
だが、問題はもう一つあるそれが、パーティーとはぐれた...。逃げるタイミングは一緒だった筈だが、どっかではぐれたに違いない。
霧が晴れるのを伺うが、どうもこの地帯は霧が発生しやすい場所らしい
ため息をついて、手頃なサイズの岩に座り周りを眺めるーー。
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