異能学園のアークホルダー
頑張ろうか、一緒に
そんな錬司を信也は見下ろした。忌々しく呟かれる言葉は悔しそうだが、しかし錬司はすぐに笑みを浮かべた。
「いいさ、俺の負けだ。今のはただの言い訳だ。言ってみたかっただけさ」
それは、満足気な笑みだった。
納得した男の表情だった。
「あーあー、俺が負けちまうなんてな~。でも、不思議と気分はいい」
信也は錬司を見て思う。そして先ほど自分が言った言葉を思い出していた。
自分にとって特別だったこと。
錬司は、誰よりも特別だったのだと、言わずにはいられなかった。
こんなにも、自分を夢中にさせた男へ言いたかった。
そして憧れ続けた想いは届いた。
それが勝利へと繋がったのだ。
信也は嬉しく思った。彼は憧れであり友人だ。
「……ありがとう、錬司」
「俺はなにもしてねえよ。お前を殺そうとしただけさ」
まったくその通り。なのになぜ礼を言ったのか、信也は不思議で笑って誤魔化した。
「はは……、そうだな」
「ああ、そうだよ……」
それから二人は黙った。会話が止まる。
「…………」
「…………」
だけど。
「ふっ」
「くく」
どちらからともなく、笑い声が溢れてきた。
「「はっははははは! あっはははは!」」
二人は笑った。笑い声はフロアに響いた。愉快で明るい、そんな笑い声が長い間続いていた。
審判者事件はこうして幕を下ろした。二人の決着の後アカデミアの実働部隊が突入し錬司を拘束した。
錬司は抵抗せず両手に手錠をかけられ連行されていく。その間際だった。
廃ビルの入口前。車に乗り込む時、錬司が振り向いた。
「信也」
自分の名前が呼ばれ、信也は嬉しさと早く応えなければならないという気持ちが湧き上がり急いで声を上げた。
「なんだ?」
錬司は顔だけを信也に向けて、こう言った。
「よかったぜ、お前の可能性」
そして錬司は車に入り込んでいった。扉が閉められ車は走り出していく。
車が消えていくのを信也はいつまでも見つめ続けていた。
その間、信也の胸はずっと熱かった。
「行っちゃったね」
「そうだな」
車が完全に視界から消えてから姫宮が声をかけてきた。
「なんだか嬉しそうだったね」
「ああ」
「信也君も嬉しい?」
「ああ」
彼女の質問に信也は肯定で答える。
「俺さ、初めて錬司と同じ場所に立てた気がするんだ」
一緒に笑い合った時心が通じた気がした。憧れと目指す者じゃない、対等な存在としていられた気がしたのだ。
「それが、嬉しかったんだ」
満足して、信也はそう言った。
「夢が叶ったんだね」
信也がずっと追い求めてきた夢の達成。それを姫宮は静かに祝福してくれた。
「ありがと。でも、まだまだこれからだよ」
信也は軽く顔を横に振ってからこれからの思いを話した。
「アカデミアは今もランク至上主義だ。それに苦しんでいる人は大勢いる。俺は、それを見て見ぬフリをしようとは思わない」
「信也君の夢はまだまだ続いていくんだね」
「それは姫宮も同じだろ?」
「もちろん! わたしはアイドルになって、みんなを笑顔にするんだ!」
姫宮の笑顔が咲き誇る。胡桃色の髪は優雅に揺れて、彼女は自分の夢を語った。
二人は見つめ合った。お互いに夢を追う者同士、共に引き合った。
「頑張ろうか、一緒に」
「うん! 一緒だね」
夢を話した後、二人は自然と夕日へと視線を向けていた。オレンジ色の光が二人を包む。
夢を追うことは楽しいことばかりではない。時には辛いことも苦しいこともあるだろう。誰かに否定され諦めたくなることもあるだろう。
それでも人は夢を見る。
そして、挑戦することにきっと意味はある。
誰に否定されても、自分を信じて進んでいけばいい。
一日が静かに終わっていく。夕日に染まった二人の横顔は、どちらもまっすぐな眼差しだった――
「いいさ、俺の負けだ。今のはただの言い訳だ。言ってみたかっただけさ」
それは、満足気な笑みだった。
納得した男の表情だった。
「あーあー、俺が負けちまうなんてな~。でも、不思議と気分はいい」
信也は錬司を見て思う。そして先ほど自分が言った言葉を思い出していた。
自分にとって特別だったこと。
錬司は、誰よりも特別だったのだと、言わずにはいられなかった。
こんなにも、自分を夢中にさせた男へ言いたかった。
そして憧れ続けた想いは届いた。
それが勝利へと繋がったのだ。
信也は嬉しく思った。彼は憧れであり友人だ。
「……ありがとう、錬司」
「俺はなにもしてねえよ。お前を殺そうとしただけさ」
まったくその通り。なのになぜ礼を言ったのか、信也は不思議で笑って誤魔化した。
「はは……、そうだな」
「ああ、そうだよ……」
それから二人は黙った。会話が止まる。
「…………」
「…………」
だけど。
「ふっ」
「くく」
どちらからともなく、笑い声が溢れてきた。
「「はっははははは! あっはははは!」」
二人は笑った。笑い声はフロアに響いた。愉快で明るい、そんな笑い声が長い間続いていた。
審判者事件はこうして幕を下ろした。二人の決着の後アカデミアの実働部隊が突入し錬司を拘束した。
錬司は抵抗せず両手に手錠をかけられ連行されていく。その間際だった。
廃ビルの入口前。車に乗り込む時、錬司が振り向いた。
「信也」
自分の名前が呼ばれ、信也は嬉しさと早く応えなければならないという気持ちが湧き上がり急いで声を上げた。
「なんだ?」
錬司は顔だけを信也に向けて、こう言った。
「よかったぜ、お前の可能性」
そして錬司は車に入り込んでいった。扉が閉められ車は走り出していく。
車が消えていくのを信也はいつまでも見つめ続けていた。
その間、信也の胸はずっと熱かった。
「行っちゃったね」
「そうだな」
車が完全に視界から消えてから姫宮が声をかけてきた。
「なんだか嬉しそうだったね」
「ああ」
「信也君も嬉しい?」
「ああ」
彼女の質問に信也は肯定で答える。
「俺さ、初めて錬司と同じ場所に立てた気がするんだ」
一緒に笑い合った時心が通じた気がした。憧れと目指す者じゃない、対等な存在としていられた気がしたのだ。
「それが、嬉しかったんだ」
満足して、信也はそう言った。
「夢が叶ったんだね」
信也がずっと追い求めてきた夢の達成。それを姫宮は静かに祝福してくれた。
「ありがと。でも、まだまだこれからだよ」
信也は軽く顔を横に振ってからこれからの思いを話した。
「アカデミアは今もランク至上主義だ。それに苦しんでいる人は大勢いる。俺は、それを見て見ぬフリをしようとは思わない」
「信也君の夢はまだまだ続いていくんだね」
「それは姫宮も同じだろ?」
「もちろん! わたしはアイドルになって、みんなを笑顔にするんだ!」
姫宮の笑顔が咲き誇る。胡桃色の髪は優雅に揺れて、彼女は自分の夢を語った。
二人は見つめ合った。お互いに夢を追う者同士、共に引き合った。
「頑張ろうか、一緒に」
「うん! 一緒だね」
夢を話した後、二人は自然と夕日へと視線を向けていた。オレンジ色の光が二人を包む。
夢を追うことは楽しいことばかりではない。時には辛いことも苦しいこともあるだろう。誰かに否定され諦めたくなることもあるだろう。
それでも人は夢を見る。
そして、挑戦することにきっと意味はある。
誰に否定されても、自分を信じて進んでいけばいい。
一日が静かに終わっていく。夕日に染まった二人の横顔は、どちらもまっすぐな眼差しだった――
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