新学期

新学期、サクラが舞いはじめるこの春ダヨーンと言っても過言ではないこの季節、何故か、強風が吹いてた。

ピューーー

ひらひら

きゃー！！

あわててスカートを抑えているのは沙織さんとペイペイちゃんだったんだけど、二兎を得るものは一とも得られず、かつて、某漫画の主人公と同じくウサギ一匹取ることすらできなかった。学校へ着くと掲示板の３年１組に俺の名前があった。あれだけいろいろとあったのだが、無事進学できたようだ。ついでに沙織さんとペイペイちゃんの名前を探すと同じ１組に名前があった。所詮はコメディー心の中で作者をフルボッコにしていると沙織さんとペイペイちゃんが声をかけてきた。

「恵君、１年間よろしくね」

「恵君よろしく…」

二人に肩を腕を組まれ肩身が狭い思いをしている突き刺さる嫉妬の視線が痛い…
実は、朝からみんなの視線が痛いくらい突き刺さった。電車に乗った時点で、俺の横には沙織さんとペイペイちゃん、更に、紗耶香ちゃんまでいるという他人が見たら羨ましい限りの状態になっていた。美少女３人に男一人、更に、電車に乗ると里奈さんと亜里沙さんが登場することによって、美少女軍団にみんなの視線が集中している中、パッとしない俺、しかも、沙織さんの旦那となっているのだが、そんなことが面白くない男子たちの視線をさらに狂暴化させたのは、沙織さんだけでなくペイペイちゃんと紗耶香ちゃんまでもが俺にべっとりとくっついているからだった。
この状況で俺を呼び出す勇気を持っている学生はこの軟弱青園高校の男子生徒にはいないのだが、嫉妬だけは一人前にしている。流石にこの状況はやばいと思ったのか、佐久間と本田、そして、堀川が俺のそばにやって来て、

「相変わらずお熱いですな」

その言葉を聞いて怒ったのはペイペイちゃんだった。春休みの間に学校での出来事は話していて、学校では俺と沙織さんが夫婦として扱われているということは説明しているが、気に食わない様子は見てよくわかった。しかし、そんな彼女はいたって冷静に、俺の腕をつかんで

「そう…私達…ラブラブなの」

すると紗耶香ちゃんが

「ペイペイちゃんダメよ！！恵君！！わたしよね」

ふたりが俺の両手に取り付いて、取り残された沙織さんが

「あんたたち！！何しているのよ！！」

---

結局、教室に着くと教室には、人だかりができていた。それは、結婚しても学園の絶対的アイドルの沙織さんと超美人のペイペイちゃんの二人がいるものだから、予鈴が鳴るまでは、凄いことになっていた。一方、１年生の紗耶香ちゃんが話題になっていた。

「はぁ～ひまだ…」

沙耶香ちゃんぼそりと呟いた一言だった。そんな彼女の前には男子たちが、告白の順番を争っていた。そんな時だった。３年生の美女が恵君が好きだと言ってパニックになっているという話題がクラス中で持ちきりになって、授業どころではない状態だった。

「大丈夫かな…恵君…」

そんなことを呟いた時だった。目の前の男子が引きつった顔をしていたのだった。

「あ…？」

ひょっとして、私、独り言で恵君の名前を言ったんだろうか？目の前の少年の顔は引くついていて、やや震えているよう…しかも、勇気があるのだろうか、それともバカなのだろうか、こんな状況で普通は聞くはずもないことを聞いてきたのだった。

「あの～水樹さんとあの立原先輩とはどのような関係？」

ん？困ったぞ…一応、私の甥っ子になるんだけと、学校では、お姉ちゃんと恵君が結婚していることになるということは義理の妹が正しいんだけど、さて、どう答えたらいいのやら

「あ…でも、家族みたいなものよ。一緒に住んでいるし…」

「えぇぇぇえええええ？」

「うそ？」

「一緒に住んでいるの」

「ええ…まぁ…」

既に遅かった。噂は一気に爆発したかのような勢いで拡散されていった。気が付いた時には、私の周りに興味津々の人たちが集まっていた。しかも女子ばかりだった。彼女たちの目的は、おねえちゃんと恵君の夫婦生活がどんなものかというものだった。

「毎日、お風呂に入っているの？」

「知らないわよ」

「否定するところは怪しいわよ」

「それとあのペイペイちゃんという美人も一緒に住んでるんですって？」

「確かに…そうだけど…」

「彼女は、立原君とどういう関係なの？」

「どうして、そんなことを？」

「彼女が、立原君のことが好きと言ったのよ」

「へ？」

驚いたのなんの、やっぱり、外国の人は一味も二味も違くことをしてくれる。普通、いきなりそんなことを言うかな？特に、学校が始まったばかりなのに、ＫＹできないようだ。というより、外国人独特の愛情表現何なのだろうか？その余波が私の所までくるとは、想像すらできなかった。

---

「ペイペイちゃん…ひょっとして立原のこと好きなの？」

私の告白しに来たと思われる男子が恵君のそばにいる私を見て、こぼれてきた言葉だった。もちろん私の言葉は決まっている

「もちろん！！好きよ」

その途端、クラス中がパニックに陥るとは日本人は奇妙な人種だ。私が誰を好きになろうと関係ないのにそこまで激しい反応をしなくても、中には、”飛び降りてやる～！！”と叫んで窓から飛ぼうとする人を”早まるな～！！人生はまだ長い！！”なとと静止している輩もおれば、事故逃避に走っている連中もいる。更に、信じられないのか女子達が私の所に来て、

「ちょっといい？」

「なにかしら？」

「ペイペイさん‥‥転入生だから知らないと思うけど、立原君には沙織さんという立派なお嫁さんがいるんですけど」

数人の女子は、いかにも正義の味方ですと言いたいのだろう、腕を組んで私を見下したような態度で話しかけてきた。けど、私には全くもっていわれもないことだ。だから、正論で返したのだった。

「それは、恵君が決めることですわ。それに、私はおじいさまから恵君が婚約者だと聞いて日本にやってきましたの。例え既に相手がいたとしても、関係ないわ」

ちょっとムキになってしまった。けど、私の本音だ。

---

ペイペイちゃんも紗耶香も爆弾発言ばかりするのよ。新学期早々、恵君のことを考えているのかしら、さっきから教室中に殺気が充満している。ひとえに、ペイペイちゃんの婚約者発言、紗耶香の同棲生活宣言も相まって、恵君の立場はいまかなり悪い状況になっている。元親衛隊長の堀川君と佐久間君と本田君がフォローをしているが、そこへ里奈と亜里沙がいるものだからあまりフォローになっていないようだ。

「沙織さん…どうするのよ立原君…ペイペイちゃんが狙っているって」

「あ…知っているわよ」

「じゃぁ…なんでほっておくのよ」

「ここで喧嘩しても何もメリットないわよね：

「確かにそうだけど」

新学期早々、学校は大騒ぎになっていたのだった。そして、ペイペイちゃんが女子達に連れて行かれたと聞いたのは、しばらくしてのことだった。

---

「ペイペイちゃんが女子達に連れて行かれた！！」

その言葉を聞いて俺は、直ぐに教室を後にして、たぶん、校舎の裏だろうと思って、走っていく途中、特別教室の近くのトイレからバシャーンという水をぶっかけたような音が聞こえてきた。

「何をしている！！」

「きゃぁぁあああー！！｝

「女子トイレに入って来るなんてサイテー」

とか言われながらペイペイちゃんを見つけのだった。

「ペイペイちゃん！！大丈夫か？」

「あ…はい…」

俺は、女の子の合間の抜けてペイペイちゃんの手を掴んだ

「逃げるぞ！！」

俺が逃げようとした時、沙織さんが便所の入口に立っていて、悪さをした彼女達を睨んで

「うちの住人に手を出してくれたわね…」

こうしてペイペイちゃんを救出することが出来たのであった。あれから数日後、首謀者の女子が謎の交通事故で学校を休むことになったのは、あまり知られていない事実であった。

---

日本人的集団心理なのかな女性特有の物なのだろうか？大体、沙織さんに対して彼女達があのような行動をする理由が理解できない。はっきり言って彼女達は、一体何者なの？ただ、不思議な光景に気が付くとバケツの水をぶっかけられて…呆然としていると。女子トイレにもかかわらず、恵君は、私を助けにやって来てくれた。あの時、手をぎゅっと握られた時、どきり…心が大きく脈打った。彼に手を引かれ、どぎまぎしながら一緒に逃げて、保健室まで連れて行ってくれた。
　タオルを差し出してくれるとクシュンとくしゃみがでたんで、恵君は、「ちょっと外に出てるから着替えてね」と優しい言葉をかけてくれた。本当は、彼が帰ってくるまで下着姿でいようかとも思ったんだけど、それは、ちょっと…と体操服に着替えたら、戻って来てくれて、ホットのココアを渡してくれた。
温かく甘いココアは冷えた体を徐々に温めてくれていった。こころも一緒に温めてくれたのだった。思わず私は、恵君の背中に抱き着いたのだった。

「ぺ…ぺいぺいちゃん？」

彼の背中に私の胸が直接当たっていて、胸の鼓動が彼に響いているか心配だったけど、この気持ちは抑えられない。

「恵君…」

ドクンドクン響く心臓に彼の声が聴きとりにくい

「ハイ…」

心臓の鼓動も最高潮になって、ついにこの言葉が出てしまった。

「恵君…好き…」

しばし無言の時間が流れた後、

「ペイペイちゃん・・・ごめん。俺まだ答えることが出来ない」

もう…あと少しだったのに…