一台の車から

Restive Horse

22.フェニックス計画 (マツダ SAVANNA RX-7 SA22C)

 その車は2ローターサウンドをなびかせて、加速していった。

 いつも通りの帰り道。
もうすぐで、高速道路のインターがある。
そんなとき、一台の車がリトラクタブルヘッドライトを開けて、2cvの横を通り抜けた。
ローター+ターボのサウンドを響かせて。
初代RX-7、SA22Cだ。
SAはインター前の信号で止まり、青になった瞬間、そのコーナリング性能を生かし、ロータリー特有の加速をしながら、まがっていった。




マツダ、SAVANNA、RX-7、SA22C。
フェニックス計画により、完成されたその車は、ロータリーを永遠のものとした。
フェニックス計画とは、途絶えそうなロータリーの火を復活させるために計画された。
ハコスカGT-Rの50連勝をRX-3で止めたことにより、ロータリーの人気はうなぎ登りだった。
しかし、排ガス規制などの規制が始まるなど、ロータリーの仕組みがゆえ、燃費の悪さが注目されるようになり、人気がおちはじめていた。
そこで、マツダはもう一度ロータリーエンジン車を復活させるべく、軽量、コンパクト、かつハイパワーを利用したスポーツカーを計画したのだ。

ボディはできる限り低く、かっこよくデザインされた。
僕はRX-7の3台(SA、FC、FD)のうち最もかっこいいRX-7だと思っている。
スーパーカーブームの頃にSAは発表されたため、リトラクタブルヘッドライトが、当時の子供たちを震えさせた。
が、このリトラクタブルヘッドライト、発表直前で決められたらものらしく、開発段階ではリトラクタブルを採用していなかったようだ。

エンジンは2ローター12Aエンジン。
発売当初はNAだったが、後にターボがついた。

そんなエンジンはこの車の特徴である、フロントミッドシップに搭載されていた。
フロントミッドシップとは、フロントにエンジンがあり、後輪を駆動するのだが、エンジンの位置が、運転席ギリギリまで奥にあることだ。
ミッドシップにしてしまったら、室内スペース(トランク含め)なくなってしまう。
かといって、FRにしてしまえば、コーナリング性能が悪くなってしまう。
そこで、フロントミッドシップだったのだ。
それは、ロータリーだからこそなせる技とも言っても過言ではない。
レシプロエンジンでいうと2気筒サイズで作れるからこそ、できた芸当なのだ。

SAは様々なモータースポーツでも活躍した。
ロードレースでも活躍。
一番有名なのはデイトナレース仕様だろうか。
そして、意外にもグループBにも参戦していた。
ロータリーのいろんな可能性を模索して、参戦していたものだと思える。
だが、一番の活躍は、ル・マン24時間レースへの参戦だろう。
初めは市販車をチューニングして参戦。
年を重ねるごとに戦闘力はましていった。
そして、マツダが本気で力を入れて参戦するまで、SAをベースにレーシングカーを製作していたのだ。
後に787Bを開発。
ル・マン24時間レース優勝をする。

そんなSAはもちろん、若者にも人気でストリートで走らせる人は多かった。
とくに、首都高速では、そのコーナリング性能で曲がりくねった道を飛ばしていったそうだ。




家に帰ってきて、

「今後のロータリーはどうなるのだろうか」

なんて2cvに話かけながら、僕は鍵をしめた。

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