クラス転移で俺だけずば抜けチート!?コミカライズ!

白狼

199話 親の姿

「この奥、なんかありますね。」
 調査を開始して一日が過ぎ、今は2日目のリライトの調査をしている。
 結構山にも登れ、もうそろそろ頂上という所だ。
 その際、俺は、途中にあった洞窟に違和感を覚えた。
 みんなもそれを感じたらしい。
「この中にもしかしたら魔物たちがあんな妙な動きをする原因があるかもしれないな。」
 ジゼルさんは、そう推測する。俺もそうだと思う。
「入ってみますか?」
「………ああ、そうだな。もし、何かあったら……竜斗殿の転移のスキルで助けて貰っても構わないだろうか?」
「ええ、もちろん構いません。」
 そういうことで俺たちは、その洞窟の中へと入って行った。
 洞窟の中は、すごい暗く妙に冷たく感じた。
 この感じ……どこかで感じたことがある……それはすごい昔のこと。この世界に来るよりも前。
 息苦しくすごい怖いこの感じ。誰にも助けてもらえないこの孤独感。
 そうだ、これは……一人で生きるのが怖くて誰にも助けてもらえなかった恐怖の感情。この奥から俺たちに威圧をかけている。何者かは分からないが今の俺が恐れてしまうくらいの相手だ。
「……竜斗……怖い……」
「う……っ……」
 俺の両隣にいた可愛い女の子は、この威圧を受けて完全に怖がってしまっている。
 レーネに至っては、涙をこぼしている。
 ジゼルさんとセレスさんも何かしら感じているだろうにずっと黙ったまま立っている。
 これが親の威厳なのだろうか。子どもたちの前で怖がってる姿は見せられないという。
 その姿は、やはりかっこいいと素直に思える。
 いつか俺もこんな親になることが出来るのだろうか。すぐ横に怯える子どもたちがいるのに何も出来ていない俺がこんなかっこいい親なんかになれるのだろうか。
 ………ダメだな、今こんなことを考えてちゃ。
 今、俺がジゼルさんたちのようになれるわけが無い。だって俺は、まだ親になるための過程を歩んでいないのだから。
 いつか、本当に自分の子どもができた時、あんな風になっていたらいいんだ。
 だから今は………
「クロム、レーネ。」
 俺は、膝をつき二人の顔を見てからギュッと抱きつく。
「……へぇ?」
「にゃ、にゃにしてるのよ!?」
 二人とも、急に抱きつかれて疑問に思ったり照れたりしたようだが無理やり俺を引き剥がそうとはしなかった。
「ははっ、悪いな。ちょっと怖くなっちゃって抱きついてしまった。」
「も、もう、何してるのよ……」
「……竜斗……ありがとう……」
 良かった、二人とも、震えが止まった。
 俺が本当にしたかったことは本気で幼女二人を抱きしめることじゃない。ホントだよ?
 本当にしたかったことは、この二人を安心させること。いつもならこんな俺がって思うけど……今、この二人を安心させることが出来るのは俺だけ。それなら、自分を卑下してはいけない。
「ごめんな、本当に。もう安心したから離れるね。」
 俺は、そう言って二人から離れようとしたが今度は逆に二人から抱きつかれてしまった。背中の方の服をギュッと掴まれて離れられない状態だ。
「……もう少しだけ……」
「……一緒にいてあげてもいいわよ!」
「二人とも……ありがとう……」
「……………ねぇ、後ろ、すっごい今いい雰囲気で声が掛けずらいんですけど?」
「……………仕方ない、もう少し待つとしよう。と言うよりもう少し待って欲しい。」
「……………あなた、もしかして腰抜かしちゃったの?」
「……………わ、悪いか!?儂ももう歳なんだ!仕方ないだろ!?」
「……………はぁ、だらしないなぁ。じゃあ、これで少しは安心するかな?」
 セレスさんは、そう言ってジゼルさんの手をギュッと握る。
「……………ありがとう。」
 どんな会話をしているか分からないが俺は、クロムとレーネを抱きしめたまま二人をそんな光景を見てまたもやかっこいいと思った。
 それから数分後。
 どうやらみんな落ち着いたようだ。
「みんな、そろそろいいか?」
 ジゼルさんは、俺たちの方を向いて確認をとる。
 今さっきまで繋いでいた手は、今はさすがに離している。
 だが、クロムとレーネは、俺の腕にがっちりとしがみついていて離れない。
 なので俺は、少し屈む形になっていてこれが結構辛い。
 でも、今二人を振りほどいてしまったらまた、怯えてしまうかもしれない。
 頑張れ!俺!
「は、はい、俺は大丈夫です。クロムとレーネは、大丈夫?」
「……うん……もう……落ち着いた……」
「あ、あたしは、最初からなんとも思ってないわよ!」
「二人とも大丈夫そうです。」
「そうか、なら行くぞ。分かっているがこの奥にいるやつ、今までの魔物とは違うから気をつけろ。」
 ジゼルさんは、そう言って俺たちに背を向け歩き出す。
 セレスさんは、その後ろ姿を見て微笑みながらジゼルさんを追いかけていった。
「二人とも、ちょっといいかな?」
「……ん?」
「どうしたの?………って、うぇ!?」
 俺は、さすがに今の状態のまま行動するのはきついので二人を抱え上げた。
「よし、行くか!」
「……うん……」
「ちょ!?あ、あたしだけ!?こんなことされて驚いているの!?ねぇ、クロム!」
 レーネは、俺の胸のところでクロムに問いかけているが俺は、構わずジゼルさんたちを追いかけた。

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