SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

対決

 獅子王の部屋を出てから十五分の休憩時間を経て守人は会議室を訪れていた。ここは相変わらずキーボードを叩く音が響き引き締まった雰囲気に包まれている。それもいつになくここの空気が重く感じる。一人一人が浮かべる緊張感が全体の空気を引き締めていた。

「守人君」

 さきに会議室に来ていた麗華が声をかけてくる。エリーとの戦いのあとだ。いろいろと引きずっていることもあるだろうと、麗華は心配そうな目で守人を見上げてくる。

「大丈夫?」

 知り合いとの戦闘。誰かを守るための戦いでもなく、敵を倒すための戦いでもない。短い間だったが共に戦った仲の相手と戦ったのだ。

 殺し合いが当然の戦場で。

 けれど、守人は答えた。

「ありがとう。でも大丈夫だ」

 守人は平然としていた。それどころか次の戦闘に向け戦意を研ぎ澄ませている。その目は力強かった。

「そう」

 その声に、なによりまっすぐな目を見て麗華も頷く。大丈夫。彼ならいける。杞憂に終わった心配は消し、彼女も表情に気合いを入れる。

「守人君、今度の相手は強敵よ。今までとは違う」

「そうだ」

 麗華の警告に牧野が同意する。ホワイトボードの前に立っていた彼女が振り向き守人を見る。
「次の相手は決まっている。モースル。そこに陣取っているアベルだ」

 守人は黙って頷いた。次の対戦相手は分かっている。危険も承知だ。

「不安は?」

「ない。やるだけだ」

 覚悟はできている。

 あとはもう、戦場に行くだけだ。

「よし。それではこれより作戦行動に移る」

 牧野の号令とともにみなが一斉に動き出した。藤森を初めとした現地部隊は銃を担ぎ部屋を出ていく。獅子王も所定の席へと座りモニターを操作する。

 守人も部屋を出ていこうと扉に向かうが、そこへ麗華が近づいた。

「守人君」

「ん?」

 守人は振り返り見ると、彼女は正面に立ち、慌ただしい部屋の中で一人だけ守人を見つめていた。

「いってらっしゃい」

 戦場へと行く守人を見送るために、彼女は一人彼へと近づいていた。

「ああ。行ってくる」

 仕事仲間として、そして姉弟としてのやり取りをし終えてから、守人は部屋を出ていった。

 口元が小さく緩む。しかしそれもすぐに引き締め、守人はこれから戦うべき相手へと向かっていった。

 強敵、アベルを倒すために。



『作戦内容を確認するわ。目標はSCPアベルの撃破よ。彼は人型のSCPでは最強クラスの実力を持つSCPよ。現場からの報告ではアメリカ、ロシア、EUのG4がアベル討伐のため戦闘を行ったけれどどれも返り討ちにされている。最強に相応しいってわけね。どの国もこのSCPには苦戦してる。

 理由は肉体の強度が恐ろしいほど高いことよ。力、速度はもちろん、財団の資料では銃弾で顔を半分吹き飛ばされても活動し続けたという記述もあるわ。

 すさまじいタフネスさね。反面、銃弾でも欠損するため耐久力はあっても防御力は高くないわ。火力もあるけれど攻撃方法は原始的で制圧力も決して高いわけじゃない。

 財団は犠牲を払いながらもこの相手を何度も倒してきたんだもの。決して勝てない相手じゃないわ。アベルの特徴として倒しても棺から何度も復活するというのがあるけれど、その周期は数年おきと言われてる。ここで倒せば当分は大丈夫のはずよ。

 相手は強敵だけど、何度も言う。勝てない相手じゃないわ。君ならやれる。自信を持って』

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