SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

エリー戦 2

 守人は竜巻を突破し中央に入る。が、そこにはエリーの姿がなかった。

『隠れた!?』

 ここにいないということはすでに地面の中か。やはり誘い込まれた。

 瞬間竜巻は消え、両側から砂の壁が迫ってきた。二メートルを越える壁が守人を押しつぶそうとしてくる。

 守人は急遽頭上へと飛んだ。足下では二つの壁が激突している。あと少しでも遅れていれば挟まれていた。

 守人は着地した。エリーの狙いをかわし無事大地に立つ。しかしホッとした緊張の緩みはない。むしろ警戒感に引き締まっている。

 いつ、どこから敵の攻撃を受けるのか分からない。この状況で安心出来る方がおかしい。まして敵の位置も分からない。なおさら不利だ。

 そこで前方に砂の壁が現れた。十メートルほど先だ。

「よくかわしたな」

 壁の向かい側からエリーの声が聞こえる。念動力や精神攻撃対策として砂の防壁越しに話しかけているのか。

「見え見えだったからな」

「ふ、だろうな」

 警戒して突撃して当然の場面だった。あそこで驚いているようではどの道長くは生きられない。

「だが分かっていても避けられないものはある」

「壁に隠れた臆病者がたいした自信だ」

「お前の軽口もここまでだ」

「なら止めてみるんだな」

 守人は走った。互いの間合いを瞬時に詰め砂の壁を殴りつける。その衝撃に砂は水飛沫のように散っていく。

 が、すでにエリーの姿は消えていた。

 地中深くに潜り身を隠している。安全圏から一方的に攻撃してくる気だ。

 すると地面の三カ所が盛り上がり始めた。噴水のように砂が空に伸び、進路を守人へと変えてきた。三つの砂の水流が触手のように守人に向かってくる。

「!」

 さらに自身の足が地面に沈んでいった。

 守人は足に力を入れ無理やり跳ぶ。地面を足につけるだけで危険というのは厄介だ。だが跳んだ後の守人を狙い打つかのように三つの砂がくる。

『ファースト、上限解放!』

 麗華の指示にすぐさま守人も反応する。空中では動けない。ならば飛行行動で回避するしかない。

 守人はすぐさま上限を一部解放し念動力を自身にかけ砂を回避した。そのまま上昇し地面から離れる。

 これなら生き埋めにされるという危険性はない。足下を掬われ沈められるということはないはずだ。

 しかし守人が空中行動に入るのはエリーも想定済み。むしろこうするための誘導だった。

 地面からいくつも砂が盛り上がり砂山が出来上がっていく。それはいわば砲台であり、そこからいくつもの固まりが守人めがけ打ち込まれた。

「対空放火!?」

 守人は急いでこの場を離れる。宙を飛び大地から放たれる砂の固まりを回避していく。広い。砲台は三十以上もありまだまだ数を増やしていく。

 それにとんでくる弾も機銃なんてものじゃない。これは砲撃だ。一つ一つが直径二十センチを越えている。しかも弾数は実質無限。一帯に広がる砂漠が無限の弾倉となり彼女を支援している。

 このままではじり貧だ。

 さらにエリーは守人を追いつめていく。地面では砂が渦を巻き始め勢いを増していく。それは竜巻となり制空権すら侵し始めてきた。竜巻は巨大化していき、さらに数を三つにも増やしていた。

 この場は一気に異常気象のまっただ中だ。砂が舞っているため辺りは暗く、吹き荒れる強風がすべてを吹き飛ばしていく。ここをヘリで飛ぶなど自殺行為。この事態に相手の戦車や歩兵たちが撤退し始めた。

 このままでは巻き添えだ。作戦にはなかったのか想定を越えていたのか、全員が焦りを露わに区域から撤退していく。味方といえどここは脅威だ。

 だが、最もその脅威に晒されているのは言うまでもなく、空を飛行する守人だった。

 絶え間なく続く砲撃。それをかわそうにも竜巻の風圧が飛行空を妨害し、安全な空域を減らしている。

 まさに大自然の脅威。これだけでなく地震まで狙った場所に起こせるなら、これはもう戦術兵器ではなく戦略兵器だ。都市一つを彼女一人で壊滅できるなら核兵器と変わらない。

 彼女もまた次世代を担う兵器群の一角、軍事世界を変革させるG4なのだ。

 守人も竜巻の猛威の中必死に対空放火をかい潜っていく。打ち落とされればそのまま砂に飲み込まれる。墜落は絶対に防がなくてはならない。しかしこのままでは時間の問題だ。

 どうする?

 その時砂漠の一カ所が大きく沈没していった。そこだけ蟻地獄の巣のように砂を吸い込んでいく。

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