SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

エリー戦 1

 守人に同意を求められ、エリーは表情を変えることなく話し出した。

「なるほど。お前の能力についてはこちらでもいろいろ考察していたが、以前見せた精神干渉、それができるなら精神感応も可能、か。当たりだったみたいだな」

 そう、これはなにも守人の当てずっぽうではない。守人の持つ精神感応能力が索敵レーダーのように敵意を持つ者を感じ取っていたのだ。それは彼女だけでなく向こう側で待機している部隊もだ。多少の警戒心を持つのは当然だとしても、彼、彼女たちから伝わる感情には一切の迷いがない。

 この気配は、戦うことが前提の戦意だ。彼女だけでなく全員がそう言っていた。

「ならば隠しても意味がない」

 すでに真意は見抜かれている。エリーは歩きだし守人との距離を縮めた。

「ここにお前を呼んだのは他でもない。イレギュラーG4。お前の存在は計画を大きく乱している」

 計画。それは以前エリー自身が話してくれたこと。きっと彼女の独断だ。規則に違反してでも彼女は守人たちに教えてくれた。

 それは他でもない、民間人への被害やいらぬ犠牲、それに疑問を抱いたからではないのか。

 しかし今ここにいる彼女は違う。迷いのない視線が守人を見つめ、打倒の宣言をした。

「騙して悪いが、お前にはここで消えてもらう」

 彼女は敵だった。かつて共に同じ敵を倒し、またも手を組む仲間ではなく。

 彼女は、守人を倒すと言ってきた。

「…………」

 守人は答えない。その代わり感じていた。

 彼女の言っていることは嘘じゃない。本当だ。本当に自分を殺そうとしている。

『そんな……』

 そのことに麗華が悲しそうにつぶやく。彼女はこんなこと望んでいない。これから戦う相手はSCPでも最上級の脅威。そのための共闘がこれで破綻した。

 なにより、一度は仲間になった彼女だ。事情や状況、そうしたものがあるとしても敵になるなんて。彼女だってこんなことは本意ではないはず。

 しかし、こうなっては仕方がない。

「そうか」

 守人は短くつぶやいた。

「どうやらやらなくてはならないみたいだな」

 ここに来るまでどんな展開になるか分からなかったが、その正体が判明する。それは想定していた内の一つ、敵対という最悪の場面だった。

 異物を排除する。その指令のもとにエリーは戦い、守人も応戦する。

 G4同士の対決だ。

「いくぞ!」

 エリーが叫んだ。片手を前に出し戦意がはぜる。

 彼女の周りで渦が巻き始めた。それは砂漠の砂を巻き込み竜巻となって彼女を隠す。

 激しい竜巻のカーテンに姿が見えない。風圧は離れている守人の全身にも強烈にぶつかってきた。

「これじゃ相手が見えない!」

 姿が見えない。これでは精神攻撃が出来ない。そのための対策か?

「ん」

 守人も腕を前に出し彼女が生み出した竜巻へ念じてみる。いくらカーテンを閉めようが開ければいいだけのこと。

 しかし竜巻は消えなかった。念じてはいるのだがひっかかりを感じる。引っ張っているのに鍵でもかかっているかのような感覚。力を増していくが、駄目だ。こと砂や地面の操作では彼女の方が優位だ。

 場所だけじゃない。守人と戦うことを想定した対イレギュラーG4戦術を組み立てている。

 であるならば守人の倒し方も考えてあるはず。彼女の能力で彼を倒そうとすれば。

『気を付けてファースト! 彼女の狙いは君を生き埋めにすることよ』

「分かってる!」

 以前フェルナンドを生き埋めにしようと地面に埋めたのを見た。あれと同じことをされれば深度によっては守人といえど助からない。そのような性能テストをしたこともない。

 危険だ。そうなる前にエリーを倒さなければならないが、姿が見えないなら念動力も精神攻撃もできない。接近して殴りつけるだけだ。

 どうする? 相手は今自分が形成した竜巻の中にいる。誘っている可能性が大だ。無闇に突撃すればどんな罠が待っているか。

 しかし、守人は突撃した。

 なにかあるのは承知の上。しかし手段がこれしかないなら実行するまで。守人は踏み込み砂が爆発すると同時に守人は竜巻へ進んでいく。

 そして、その行動を彼女も予想していた。

(やはり来たか)

 エリーは竜巻の中から守人の接近を感覚的にとらえていた。砂や地面に触れているものならば自分の触覚のように分かる。作戦通りだ。

 エリーの人柄を守人が知っているように守人の思考を彼女も知っている。フェルナンドとの肉弾戦をしたのをエリーは見た。あまりにもリスキーな戦法だ。

 この男は多少の危険では止まらない。それよりも勝機があるならそれに突き進める意思の強さがある。

 その強さを釣ってやる。

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