SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

援護

 その心配に姿勢で応えるように守人は構えた。この敵に立ち向かい、生きて帰るためにも。

 この戦い、絶対に勝たねばならない。

 守人は片手を向けオールド・マンへ念じた。どれだけ強力な溶解液といえど触れなければ意味がない。

「!?」

 だが、オールド・マンは微動だにしなかった。

「なにかしているようだが無駄なことだ。私に触れるもの、そして操作によっては周囲にあるものすべてが溶ける」

 守人の念動力。それがどのような原理によって働いているのか未だに解明は出来ていない。だがなにかしらの要因があり、それが対象に影響を与えているのは間違いない。

 オールド・マンは、その要因を溶かしていた。

 守人の表情が歪む。しかし胸の中ではどこか納得していた。簡単には勝たせてくれないか。それを自然のことのように受け止める。

 念動力が通じないとすると直接攻撃するしかない。しかし触れれば溶かされ、さらに相手の身体能力は高い。

 どうする?

「ファースト!」

 そこで声が聞こえてきた。麗華からではない。男の声だ。

「今すぐそいつから離れろ、プランBだ!」

 守人は上空へと目をやった。そこには守人を運送したヘリがこちらに向かっており、藤森が開いた扉の前に立っていた。

 藤森は短機関銃を構えており銃を発射する。

 守人は急いでオールド・マンから離れた。藤森が放つ弾幕がオールド・マンに命中していく。その悉くが溶かされていくが構わず続ける。倒すのではなく足止めするための制圧射撃だ。

 オールド・マンの動きを止めつつヘリは頭上にまで移動した。そしてオールド・マンに狙いを定め、ゼリー状の液体を振りかけた。頭から被ったオールド・マンは全身がそのゼリーまみれになる。触れた途端解かしてはいくが量が多く、また足下のそれまでは消えていない。

「ん?」

 オールド・マンも片手を上げ自身にかかった液体を訝しそうに見つめている。

 その中で、すべてを知ってる藤森がニヤリと笑った。

「すべてを解かす溶解液。銃弾まで蒸発させるとは恐れ入ったぜ。だがな、溶かせないものならどうなんだ?」

 そう言って藤森は再度短機関銃の口をオールド・マンに向ける。ここにきてオールド・マンも液体の正体を察した。

 これは燃焼剤だ。正確にはナパーム弾や火炎放射機で使われる中身で粘性のある油と言えば分かり易い。くっつけば離れることはなく水をかけても燃え続ける。

 たとえ銃弾や爆発の破片を瞬時に解かす液だとしても、炎や熱を解かすことはできない。

「燃え尽きろボケ」

 ヘリの中から不敵な笑みを覗かせて、藤森は銃の引き金を引いた。銃弾はオールド・マンの体に直撃し、着弾は燃焼剤へと引火した。

 瞬間、すさまじい爆発とともにオールド・マンとその一帯は炎に包まれた。

「っしゃー! 文明様々だぜ!」 

 すさまじい熱は上空にいるヘリにも届くほどでヘリはすぐさに退散していく。その中で藤森だけは歓喜の声を上げていた。

 離れた場所にいる守人にもナパーム攻撃の熱は届いている。エフェクトスーツ越しに耐えてはいるがそれでも周囲の温度は二百度はあるだろう。オールド・マンがいる中心地は一千度を越えている。

 勝負あった。いかに物理衝撃に耐性があろうとも耐性のない場所を突けばいい。グーにはパー、パーにはチョキ。相性の問題はSCPといえどどうしようもない。

「はっはっはっは、ん?」

 が、大笑を続けていた藤森の笑い声が消える。

「なんだと?」

 それどころか信じられないものを見て驚愕していた。

『そんな』

 その光景に麗華も声を漏らす。

 すべてを解かす溶解液。仮にそんなものがあったとしても、熱までは防げない。一千度を越える超高温に晒されれば蒸発し、焼尽し、死亡する。そのはずだ。

 なのに、なんだこれは?

 ヘリから見渡せる藤森が誰よりもその異様さを目撃していた。

 燃えさかるナパームの炎の中心から、炎が消えていくのだ。激しく炎上している空間からその中心だけが台風の目のようになっていく。

 その場所で、オールド・マンは無傷で立っていた。

「どうなってやがる!?」

 ナパームの炎がこうも短時間で消えるなどあり得ない。燃えれば十分間は燃えるものを使用した。しかし現にオールド・マンの周囲だけ炎は消えている。これはどういうことか。

『なんてことだ』

 そのことにいち早く気づいた獅子王が口を開いた。

『これはまずいぞ』

『そんなことは分かってるわよ、どうやったらあいつを燃やせるわけ?』

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