SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

会敵

『いいわよ。作戦進行、順調ね』

 守人は反対側に向かい次のコンテナをのぞき見る。そこには三人の男が見張りとして立っており不意打ちできる隙がなかった。

『対象に近づくにつれ警戒が強いわね』

 それだけ重要な証拠だ。近づいている実感が湧く。

「敵の監視網が広い。ここからは強行突破する」

『了解。中央コンテナを見張っておくわ』

 守人は一つ息を吐いた。ここからは慎重さを捨て素早さが問われる。なによりも迅速に。

 守人は飛び出した。車両に移り三人に襲いかかる。

「敵襲! 敵襲!」

 敵もすぐさに気づき銃を発射してくる。銃弾が守人に命中するがエフェクトスーツの装甲がすべてを弾き落とし守人は敵の一人をつかみ列車から投げ飛ばした。まだ車両に二人残っているが残して先に行く。

 最優先で目標へ。守人は中央のコンテナにたどり着いた。ここの見張りは四人、角に配置されていた男たちが守人に向かってくる。

 しかし守人としては好都合だった。向かってくるなら戦える。守人は念動力で四人とも浮かべ弾き飛ばした。コンテナが開けられた様子はなし。オールド・マンは解放されていない。

『ファースト、コンテナを守りながらすぐに車両を切り離すか停止させて。それでコンテナを確保して任務終了よ!』

「了解!」

 終わりが見えた。守人はもちろんのこと麗華にも勝機が見える。声にも勢いがあった。

 その時だった。

「においがするな」

「!?」

 声が聞こえる。それもすぐ近くから。まるで耳元でささやかれたように。

 瞬間、守人は殴られた。さらに首を掴まれ持ち上げられる。

『そんな!?』

 強烈だった。すさまじい膂力にすぐにほどけない。そんな中守人は隣を見た。

『オールド・マン!』

 そこにいたのはケースに入っているはずのSCP、オールド・マンだった。コンテナの壁を突き破り細い腕が守人の首を掴んでいる。

 苦しい。しかしそれ以上にやつから目が離せない。

 しわの多い老人の顔だった。頭髪はほとんどなく白い髪がわずかにある程度。服は着ておらず肌は褐色をしていた。というよりもミイラのような色をしている。体型もひどく細身で肋骨が浮き出て腹部は大きくへこんでいる。

『どういうこと!? 三ヶ月は収容可能じゃなかったの!?』

 オールド・マンは虚弱を思わせる体躯でありながらその目は爛々と輝いていた。表情は薄い笑みを浮かべ守人をごちそうのように持ち上げている。

「若い男のにおいだ。二十一、いや、二十歳のにおいだ」

「ぐ!」

 守人は首を掴むオールド・マンに蹴りを入れた。足は相手の側頭部に直撃するが、

「!?」

 オールド・マンは手を掴んだままだった。それだけではない。当たっている守人の足が溶けだしているのだ。

 守人は腕を取り肘打ちしもう一度蹴りを放った。それでオールド・マンの手が放れ守人は列車から飛び出した。

 砂の大地を転がり片膝を地面につける。右手を首に当ててみればほとんどが溶解しておりあと少しでも遅れていれば首にまで届いていた。

 それだけでなくオールド・マンに触れた手のひらや足の部分も損傷している。

 防御するだけではない、直接攻撃すればカウンターのようにこちらも怪我を負う。厄介な能力だ。

 だが今はそれどころではない。オールド・マンは列車に乗ったまま。そして列車は未だに運行している。すぐに追いかけなければ。

 守人はすぐに立ち上がるがそこで列車に異変が起こった。

 列車に残されたオールド・マンは離れていく守人をじっと見つめていた。そこへイスラム国の兵たちが集まってくる。

「動くな!」

 銃口を向ける。彼らもこのSCPを搬送するという任務でここにいる。見てるだけいうわけにもいかない。目の前に怪物を控え兵士も必死の形相になる。

 だが、この化け物は反対だった。

 さきほどまで笑みを浮かべていた顔は四十代ほどの兵士を冷めた目で見つめ、銃を突きつけられている危機感は微塵もない。

 オールド・マンは銃を向ける男に向け人差し指を指した。

「?」

 どういうことか分からず兵士は唖然とする。

 だがそれは起きていた。兵士は気づかなかったがオールド・マンの指先からは溶解液が滴っていた。

 一滴が指先に溜まり落ちそうになる時、彼は指を弾き溶解液を飛ばした。それは兵士の額に命中する。オールド・マンが分泌する溶解液がどれほど強力なのか。それを生身の人間が身を以て知ることは難しい。

 なぜならば、その溶解液は人の頭蓋骨すら貫通する。

 男は引き金を引くことなく後ろに倒れた。銃で撃たれたように額から後頭部にかけ穴が開いていたのだ。

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