SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

姉弟の距離

 それから気まずい雰囲気のまま二人は食堂へ行き朝食を食べた。二人はテーブルをはさみ向かい合って座っている。

 ここで迎えるはじめての朝だが清々しい空気とは言い難い。麗華は正面を向いているが顔はうつむき守人は足を組んで体が横を向いている。特に不機嫌というわけでもないが冷めている感じ。

 二人は終始無言でいた。

「ねえ」

「ん」

 と、そこで麗華が話しかけた。

「なんかしゃべってよ」

「どういう振りだよ」

「だってずっと黙ったままで寂しいじゃん」

「だったら自分で話せばいいだろ」

「ないもん」

「じゃあ諦めろよ」

「えー」

「なんでだよ」

「いいじゃん、なんか話してよ」

「なんかってなんだよ」

「なんでもいいから」

「なんで今朝あんなことをしたんだ?」

「…………」

「黙るのかよ」

「チェンジ」

「じゃあなにがいいんだよ」

「別の」

「別のなに」

「別のなにか」

「金太郎飴みたいな答えだな」

「だって……怒ってるでしょ?」

「なにが?」

「今朝のこと」

 そう言われ守人は目を泳がしながら考えた。

「んー……いや、怒ってないよ」

「ほんと?」

 麗華の顔が上がる。

「呆れてる」

 だがうつむく。

「冗談だよ」

 でも、すぐに顔を上げた。

「…………」

「…………」

 無言のまま時間が過ぎていく。しかし気まずい雰囲気はすでになく、落ち着いたものへと変わっていた。麗華もこの場の空気に居心地のよさを感じて頬が少しだけ緩む。

 だが、その目が少しだけ細められた。

「ねえ」

 麗華は彼の顔をじっと見つめる。

「大丈夫なの?」

 心配の言葉に守人も彼女の顔を見た。彼女の気持ちは分かる。暴走気味だった今朝の出来事だってすべては自分のためだ。

 大丈夫なの? 彼女の言葉を反芻する。

 守人は席を立った。彼を追って麗華の顔も上がる。

 守人は表情を引き締めた。見上げる彼女の顔を見てしっかりした口調で答える。

「当然だ」

 敵はまだ残っている。

 今日も戦いだ。

 *

 会議室には全員が集まっていた。長テーブルではパソコンを打つ職員が並びそこには獅子王の姿もある。みな集中した顔をし準備はできている。

 そんな中地図が張られたホワイトボードの前に牧野は立ち入室した守人を見た。司令官を任されている身としての引き締まった目が彼を捉える。

 鋭い視線に当てられるが守人に動揺はない。

 守人はすでにエフェクトスーツを展開していた。戦う準備はできている。すぐにでも戦える。

 一緒に入室した麗華も所定の位置につき準備に入る。マイクをセットしキーボードを叩く。

「やれますね?」

「見ての通りだ」

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