SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

真相 2

『それで財団になんのメリットがあるの?』

「なぜ財団はそんなことを?」

「それは知らん。なんの意図があってこんなことをしているのか我々が知りたいくらいだ。やつらの存在は危険だが協力的である分には有益だ。彼らのもたらす情報とG4の対戦相手として持ち込まれたSCPの数々は無視できない魅力があった」

 それはそうだろう。G4の最低条件は銃器で武装した者たちに優位をとれることだが、いずれG4同士で戦うこともあるだろう。その時、自分たちのG4がどれだけの戦果が見込めるのか知るのも同じくらい重要だ。その対戦相手まで用意してもらえるなど至れり尽くせりと言うほかない。

「当然財団から金銭の要求はあったが、この要求自体がミスリードのようで胡散臭い。真意は別にあろうだろうがそこまでは掴めていない、というのが現状だ」

「なるほど」

 話は分かった。テロ組織イスラム国に隠されていた秘密とこの国の裏側で行われていた計画。

 それはすべて各国とSCP財団によるG4開発のためだった。そのために多くの資金と人材、そして大勢の命を犠牲にしてきた。

「…………」

 守人は黙ったまま、拳を力強く握り込んだ。

「説明はこれくらいか」

 知りたいことは知れた。教えてくれたエリーには感謝するが同時に疑問にも思った。

「情報の提供に感謝する、エリー。だがなぜだ。なぜ教える気になった?」

 守人は質問するとエリーはそっと視線を逸らし、辺りを見渡した。そこには依然と遺体の数々が並んでいる。逃げ遅れた人々は全員死んだ。この計画によって放たれたSCP、そしてG4によって。

「私はこの計画の参加者だ。軍人でもある。軍の人間である以上犠牲は覚悟の上だ。自分の命すらな」

 戦いに身を置く以上、なにかを奪い、そして奪われるのが宿命だ。彼女はそれを弁えている。

「だが、彼らは別だ」

 しかし、彼女が浮かべる瞳は憂いに満ちていた。

「本来なら、弱者を守るべきが私たちのやるべきことのはずなんだ。だが、大事の前の小事として切り捨て、それがこの光景だ」

 彼女の国は自国のために他国の命を切り捨てた。

 捨てていい命なんてない。利用していい命なんてない。

 そのことに彼女は苦悩しているようだった。

「私たちは、報いを受けるべきなのかもしれないな。私たちのしていることはいつか国のためになるだろう。だが、正しいやり方ではない」

 彼女には心がある。きっと誇りや信念も。だからこそ軍人になったのだろうし、G4にもなったのだろう。

 その心が訴えているのだ。

 こんなことは間違っていると。

「それだけだ、ファースト」

 彼女は悲しそうにそう言った。

「お前が、少しだけ羨ましい」

「なぜそう思う」

「あいつと戦っていたからさ」

 あいつとはベルトラムのことだろう。フェルナンドとは死闘を繰り広げていた彼女だが彼とは一度も戦っていない。

「あいつは軍の指令で動いていた。それを私が戦闘で妨害すれば軍事介入だ、この場が収まっても別の場所が戦場になる。私ではあいつとは戦えない。でも、お前は戦った」

 それは軍に所属するがゆえの制約だ。彼女の戦いは個人の戦いでは済まされない。そうしたくてもそうできない事情が生まれてしまう。

 だが守人は素性の知れないイレギュラー。守人なら戦っても後腐れがない。またベルトラムもなんら躊躇うことなく守人を倒すことができる。

 エリーではできなかった戦いを守人は行った。自由な闘争に身を委ね、守人は勝利したのだ。
 そのことにエリーは苦笑気味に守人を見ながら笑った。

「指令ではなく感情で動くとはな。G4としてはまだまだだ。だが、そんな兵器があってもいいのかもな」

 そう言うとエリーは歩き出し守人の横を通っていった。

「じゃあな」

 エリーの足下が陥没していく。彼女の体が沈んでいき、地面に飲み込まれていく。

 ついには姿すべてが沈んでいき彼女はこの場から消えていった。

『駄目ね、さすがに地中を移動されたら追跡できないわ。てか、地中からの奇襲って現代では盲点よね』

「これからは増えていくさ」

 G4の性能は第三世代兵器を遙かに越えている。今までの戦術は通用しない。突然空から人が飛んできて戦車をひっくり返すこともある。

 守人は入り口から夜空を見上げた。今日この日だけでどれだけの人が死んだのだろう。星の見えない暗闇の空がもの悲しい。

 そんな守人に麗華が声をかけてきた。

『私たちも引き上げましょう。長い戦いになっちゃったわね。何度も君が死んでしまうと思った。
でも、こうして無事で本当によかった』

 多くの犠牲が生まれ、強敵と連戦し、それでも守人は生き延びた。悲劇の中で勝利をつかみ取った。

 麗華は安堵しながら、嬉しそうに言う。

『帰ってきて。今はそれだけでいいわ』

 その言葉に頷いて、守人は空へと飛び立った。

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