SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

真相

 世界の裏側に、そこにしか存在を許されない存在がいる。破滅をもたらすものとして、人の世界に危害を加えるものとして、厳重にふたをし押し込めてきたものたち。

 けれど今日、その一体が表の世界へと顔を出した。

 これがその結果だった。バグダット空港は悲劇に見舞われた。大勢がパニックに陥り、多くの人が殺された。この事態を隠蔽いんぺいするためにさらに大勢の人が死に追い込まれた。

 死ななくてもいい人たちが、今日、死んだ。

 なぜ彼らは死ななくてはならなかったのか。最初からこんなことが起きなければバグダット空港もそこにいた人たちも平穏無事にいられたはずなのに。

 守人はバグダット空港の入り口近くで女性のG4であるエリーと対峙していた。日が落ちたこともあり辺りは暗い。エリーは負傷した腹部に手を当て苦しそうにしているものの鋭い視線で守人を見つめていた。

「お前たちに話そう」

 そして、彼女は語り始めた。

「この国で、我々がしている計画についでだ」

 世界の裏側。そこで動き出した今回の悲劇の大本にして守人の知らない真実を、彼女は明かそうとしていた。

「いいのか」

『ファーストッ』

 一度は断ったエリーが話すのだ、これは彼女の独断の可能性が高い。守人は心配から声をかけるが麗華が声を挟んだ。

『彼女が自主的に話してくれるなら好都合よ。ここは慎重に聞き出して』

 彼女に言われその通りだと納得する。ここは要らぬ心配よりも貴重な情報を得るべきだ。

「話してくれ」

 エリーは一回頷くと、静かに話し出した。

「G4開発。それは世界各国で行われていることだ。特にアメリカ。EU。ロシアは研究、開発が進んでいた。だがどの国にも共通の問題があった。それは分かるだろう」

 彼女の問いに守人は答えなかったがその答えは守人含め誰しもが理解していた。

 それは守人がここにいる理由そのものだったからだ。

「実戦テストを行える場所。そしてその相手だ」

 そう、どれだけ精巧に作られた兵器とはいえ実際に使ってみなければその性能は保証できない。いざ使ってみて不備が見つかりましたでは許されないのだ。

「当然自国でそのようなことができるはずもなく、公になった時のリスクが大きい。そのことにどの国も頭を悩ませていた。だから共同で作ることにしたのさ、都合のいい戦場をな」

「それが」

「そうだ」

 それが隠された真実だった。世界に脅威を及ぼし多くの人命を奪った組織。

 その答えを、彼女は告げた。

「イスラム国。建国を語る武装テロ組織だ」

 信念と復讐心を利用された哀れなマリオネット、作り物の強敵だった。

「やつらへの武器や資金の提供を裏で行い、その見返りとしてG4の開発の手伝いをさせる。実験体を世界中から集めたり、地下に研究施設を作らせたりな。そうやってG4の開発データを集め、さらに戦場で戦わせることができる。話に聞けばある程度データが集まったところでイスラム国はG4によって壊滅させ、証拠も抹消させる。そういう筋書きらしい」

 それがイスラム国の誕生であり存在理由。利用されるだけ利用され、最後には捨てられるのが決まっている使い捨ての駒だった。

 彼女の話には信憑性がある。特に地下でそれを守人は見ている。

 だが一点だけ麗華が疑問を口にした。

『でも、共通の問題を解決するためとはいえ各国が共同でそんなことをするかしら。G4開発はどこも極秘でしょう? にわかには信じられないわね』

 麗華の言うことも尤もだ。現状最も大きな脅威は核爆弾というのが世間一般の認識だが、アメリカとソ連が共同で開発したという歴史はない。

 G4も同じ。自国の兵器を友好国でもない相手と作るというのは実際に起こっていながらも現実的ではない。

 彼女の意見を守人が代弁した。

「国が共同でG4開発の土台を作ったという話だが、簡単には納得できない話だな」

 それに対しエリーが答える。

「当然だ、仮想敵である国と足踏み揃えて共同開発などできるはずがない。だからこそ仲介役が存在した」

『そういうこと……!』

 それで納得した。

 超常の存在や現象に精通し、各国の間を取り持つことができるほどの存在。そんなもの一つしかない。

「SCP財団。もともとこの計画はやつらから提案してきたものらしい」

「財団が?」

 敵を自ら作り、管理下に置くことで利用すればいい。そんな提案をSCP財団から各国にしてきたというのか。

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