SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

リベンジ 3

 その時ベルトラムの小さな顔がなんとか守人を見た。

「ま、待て。話を……」

 掠れた声で言われる命乞いの途中だが、守人は握る手に力を入れた。

「があ! 待て、待てって! お前は兵器じゃないんだろ? なら話をしろって!」

 この戦いはG4のあり方を問う戦いでもあった。G4とは人間なのか? それとも兵器なのか?

 どうあり、どう生きるべきなのか。

 ベルトラムは兵器を選らんだ男だが、死にたくないという思いは、人間のものではなかっただろうか。

 そしてまた、彼を殺そうとしている男もまた紛うことなき人間だった。

「俺がはじめて人を殺したのは、高校一年生の時だった」

「?」

 突然の告白にベルトラムも咄嗟に返事が出てこない。

「兵器だからじゃない。人間だからこそ、力を振るう時がある」

 守人はベルトラムを握る手を上げた。自分の顔と同じ位置で止め、彼に最後の言葉を突きつける。

「俺が望む世界に、お前は不要だ」

 その言葉にベルトラムが反論する前に、守人は彼を握りつぶした。

 守人の手の中で血と肉片が飛ぶ。この場に流れた血に比べればあまりにも少ない。

 それでも虐殺を行った実行者は命を落とし、それによりスイッチが切れたように空を飛んでいたコウモリたちが一斉に地面に落下し始めた。

 その度に重たい雨音が響き、大きく黒い雨滴が降り注いだ。

 そういえば、彼女の葬式も雨だったなと、守人はどこか冷めた心境で、握りつぶしたまま一人思いにふけっていた。

 すべてのコウモリが倒れてから守人はようやく手を下ろした。

『周囲にSCP、また敵対勢力なし。今度こそ終わったわ』

「…………」

 麗華からの通信に守人は無言のまま立ち尽くしていた。それを麗華も責めることなく次の指示を出す。

『ファースト、その場に長居すべきではないわ。そちらにヘリが向かってる。まもなく到着するから帰還して』


「了解」

 守人は歩き出した。壊れた入り口に向かい足を動かす。

 その際エリーの横を通り過ぎたが言葉はなかった。話すべきこともないというのもあるが、そもそも誰かと話す気分じゃなかった。

 今はただ、すぐにでも一人になりたかった。

「待て」

 が、そこでエリーから呼び止められた。この期に及んでなにがあるのかと守人は振り向く。

「お前たちに話そう」

 守人は彼女に正面を向けた。彼女は苦しい顔をしながら守人を見つめていた。

 それは傷が痛むというのもあるだろう。彼女は重傷を耐えてここまで歩き、立っているのだから。

 だがそれだけではなかった。彼女が立っている場所には多くの犠牲者が倒れている。なんて惨状だろう。

 罪のない者、女も子供も区別なくすべて死んでいる。

 それも、自分と同じG4の手によって行われたのだ。

 彼女は苦しそうな顔をしていたが、その目は一つの覚悟を決めていた。

 そして、話し出したのだ。

「この国で、我々がしている計画についてだ」

 この世界の裏側にある、真実を。

                                  つづく

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