SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

奮起 2

 だが入ってきた二人に言葉を失っている。

 入り口を破壊して入ってきたのはタキシード姿の大男。そしてよく分からないスーツを着た人物。

 これはいったいなんだ? 爆弾テロの予告があったという話すら忘れて全員が二人を見つめていた。

『フェルナンド、空港内部に侵入! 大勢に視認されてるわ』

「分かってる」

 守人は起きあがり肩に乗っていたガラスの欠片を払った。何事かと見てくる衆人環視の中守人はフェルナンドを見つめる。

 すでに一線は越えてしまった。さらにこの男は食人鬼だ、すぐに止めなければここにいる人たちが犠牲になる。

 必ず止める。

 守人はフェルナンドを建物内から出すため念動力で体を吹き飛ばそうとした。

 だが守人からの力を感じたフェルナンドは両手を地面に突き刺す。さらにちゃぶ台返しのように床を引き剥がすと守人に投げつけてきたのだ。

「!?」

 全身に激突し反対側へと飛ばされてしまう。

「ぐ!」

 改めて思うがなんて馬鹿力だ。筋肉だけですべてを覆してくる。

 守人が吹き飛んだことで見ていた人々が慌て出した。ここにいたら危ない。我先にと走り出し二人から逃げ出していく。

「グゥ……」

 だがそれを見逃すフェルナンドではない。

 食人鬼としての本能が逃げ出す獲物を察知する。その場から跳躍すると一足で利用客の一人に近づいた。

「うわあああ!」

 男性が悲鳴をあげる。自分を遙かに上回るフェルナンドに睨まればそれだけで失禁ものだ。恐怖に震える男をフェルナンドは掴もうと手を伸ばす。

「させるか!」

 守人は床だったものをすぐに退かしフェルナンドに駆けつける。飛行しながらの突進でフェルナンドの体を転倒させた。

「逃げろ! 早く!」

 ヘルメット越しではあるが守人の剣幕に男は走っていった。

 ここにいる人たちを絶対に逃がす。そのためには時間を稼ぐしかない。

 守人は仰向けに倒れたフェルナンドに馬乗りになる。拳を大きく上げ顔面に打ち付けた。フェルナンドの鼻は折れ衝撃が床までへこませる。

 しかしそれで終わるフェルナンドではない。跨がる守人を睨みつけ腕を伸ばしてきた。

 守人は左手でフェルナンドの片手をつかみ反対側は足で踏みつけた。暴れるフェルナンドをなんとか抑えつける。

 左手がフェルナンドと握り合いエフェクトスーツに凄まじい握力が襲いかかる。まずい。そう思ったが以前のようにへこむことがない。

「!?」

 成長している。エフェクトスーツの自己修復は人間でいうところの超回復でもあるのか。直るたび以前よりも強くなっている。

 これならまだ耐えられる。しかし長くはない。

 守人はひたすら殴り続けた。左手と片足、さらに念動力で相手の動きを抑えつけ右手で何度も拳を打ち下ろしていく。

 倒れろ。倒れろ。噴出する思いに拳の速度が上がっていく。

「が!」

 その時守人が拳を打ち出すタイミングでフェルナンドが頭突きをしてきた。拳と頭突きの衝突により守人の姿勢が後ろに下がる。体勢が崩れフェルナンドが立ち上がってしまった。

「く!」

 守人もすぐに立ち上がろうとするがさきにフェルナンドに踏みつけられてしまう。

「があ!」

 背中からくる衝撃が内蔵にまで届く。だが怯まない。守人はすぐに横に飛ぶと一端離れすぐに立ち上がった。

 すぐにくるフェルナンドの拳を横にかわすと腕をとりそのままフェルナンドの背後に持っていく。怪物といえ人型、関節の構造は同じはず。

 けれど決まったはずの関節技は純粋な力だけで解除されてしまった。おまけに守人の胴体に拳がめり込んだ。

 肺の空気が口から押し出され呼吸ができない。エフェクトスーツのアーマーが衝撃を緩和してくれているはずだが余裕なんてまったくない。

 あと何発耐えられる? 何回くらえば死ぬ? 

『ファースト! 距離を取って!』

 ヘルメットからはさきほどから麗華の声がしきりなしに聞こえてくる。周りの状況やフェルナンドの動きを教えてくれている。安全に立ち回るならここは距離を取るべきだ。

 だが離れてどうする? その隙に他の人に襲いかかったら?

 選択肢なんてなかった。安全を選べるなんて余裕はない。

 守人は、フェルナンドに殴りかかった。

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