SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

G4同士 2

 G4は兵器ではない。力強く言う彼女はほかの誰よりも親近感があり説得力があった気がした。
 彼女と出会えたことが、少しだけ嬉しかった。

 ここから退くか退かないか。そんなものは決まっている、最後まで戦うだ。子供のおつかいではない。なにより、世界の裏側で起きているこの出来事を無視なんてできない。

 守人は緩んでいた気を引き締めた。それで相手も戦意を感じ取った。こいつ、やるつもりか。浮かべる表情にはそう書いてある。

 守人も彼女も黙ったままにらみ合う。相手の能力はだいたいだが察しはついている。それは相手も同じ。先手を誤れば隙を突かれそのまま敗北する。

 守人は慎重に相手の出方を伺い、どう攻めるか考えていた。

 その最中、突如地面が震えた。

「なに?」

 地震? そう思ったがこれは違う。揺れ方が左右ではなく、まるで足下から突き上げられるような衝撃だ。

「まさか?」

「馬鹿な! 地中十メートルは沈めたはずだ!」

 二人とも地面に目をやった。ドン、ドンと地面を殴りつけるように衝撃が連続して起こっていく。彼女は地面に向かって手を伸ばしているが止まらない。

 そして、ついには地面が隆起し始めた。フェルナンドを埋めた場所が盛り上がりはじめ、火山のように飛び散った。

 そこから、フェルナンドが飛び出した。

「うおおおお!」

 雄叫びを上げ、空に向かって吠える。土の殻を突き破り、食人鬼は復活を果たした。

「そんな」

 彼は地中に埋められた。そこから腕力だけで脱出するなど怪物だ。

「どうやら俺たちの決着は後回しだな」

「そのようだな」

 守人と彼女はフェルナンドを見た。戦いはあとだ、それどころではなくなった。

 フェルナンドは土煙を上げながら地面に着地した。タキシードについた土を払いながらせき込んでいるが表情はすこぶるご機嫌だった。

「ゴホ、ゴホ。いやー、新鮮な体験でしたね。地中というのもなかなか落ち着ける場所のようで。しかし退屈ですな、やることがない」

 お気に入りなのかシルクハットの汚れも払い頭に被る。破れていないことにニッコリ笑ったあと二人を見下ろしてきた。

「これはどういったお遊びですかな? 私が鬼で、今度はお二人を埋める番とか?」

 笑顔で言い寄ってくる相手がこれほど怖いものもない。改めて実感するが価値観が違いすぎる。

 これほどの仕打ちを受けて遊びだと言う相手に説得も無意味なら会話も無用。なにを言っても無駄ならば、守人はあえて乗ってやった。

「ああ、やってみな」

 これから地中埋めゲームの始まりだ。

 フェルナンドは守人に走り寄り両手を伸ばしてきた。その両手を守人も掴み押し合いになる。

「ぐ!」

 握った瞬間、全身に衝撃が走ったようだった。上から押される両手にみるみると腕が下がり、背中まで反っていく。

 まるで山がもたれ掛かってきたような、圧倒的な圧力。必死に力を入れるのに押し返せない。

「おお、力比べですか。いいですともいいですとも。わたくしはこれが好きでしてな」

 笑っている。守人は本気で倒そうと力を入れているのにフェルナンドにしては遊びでしかないのか。

 が、その顔面に六十センチほどの土塊が激突した。普通ならひとたまりもないそれを受け、しかし砕けたのは塊の方だった。

 フェルナンドは何事もなかったかのように土塊が飛んできた方を見る。守人も左へと顔を向けた。

 そこには彼女が立っており、その周囲にはさきほどの土塊が三つ、宙に浮いていた。

「そのまま動くなよ木偶の坊」

 彼女が腕を振るう。それを皮切りに一つがフェルナンドの肩に、もう一つが顔面に激突する。城塞を破壊する投石に等しい攻撃を、しかしフェルナンドは苦もなく受けきっていた。

「おやおや、お嬢さんはキャッチボールですか? しかし困りましたね、私の両手は今塞がっていまして」

「問題ない、そのまま打たれろ」

 フェルナンドの言葉を遮り彼女は残り一つを三度彼の顔面へと投げつけた。激しい音と砕け散った破片が周囲へと飛んでいく。

 フェルナンドは口に入った土をつばと一緒に吐き出した。

「なるほど、ドッチボールでしたか。それなら問題ありませんな」

 そう言うとフェルナンドはなにをするかと思えば、守人の腕を引っ張ったのだ。

「ぬ!」

 もちろん守人も抵抗するが足は地面から離れ、持ち上げられてしまった。

「私にもちょうど投げるものがあるので」

 フェルナンドは片手で守人の手を握ると、大きく振り上げ守人を投げつけた。

 守人の体は真っ直ぐ彼女へと向かい激突した。守人も彼女も地面に倒れ転がっていく。

「くっ、そ。貴様、恨むぞ」

「相手が違うだろ」

「SCP版 エンジェル・オーバードーズ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く