SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

G4同士

「それについて伝えることはない。まず確認がしたい。それは現状と目的だ。それで互いの立場も分かる」

「ふん」

 彼女は気に入らないといった風に鼻を鳴らす。守人に正論を言われて面白くないのだろう。

『仕方がありません。ファースト、私たちの素性は隠した上で説明してください』

 牧野からも許可が下りた。守人はまず自分たちのことから話し出した。

「俺たちは今残り三体のSCPを確認している。そして、目的はそのすべてを制圧しこれ以上の被害を食い止めることだ」

『三体? 私たちは四体を確認していているが。場所は?』

「残りはアレッポ。ラッカ。モースルだ」

「我々はタドムルでもSCPの活動を確認している。ゾンビ病だ」

「…………」

 どうする? 守人は逡巡に言葉を失う。

『構いません、説明を』

「タドムルのゾンビ病は二時間前に殲滅を行った」

「お前がか?」

「そうだ。連絡がつくなら確認をしてみるといい」

 守人の言葉に訝る顔をしながら女性はインカムに手を伸ばした。

「どうなんだ?」

 しばらく時間が立つ。すると急に彼女の顔が変わった。

「遅いぞ! 言い訳などいらん!」

 どうやら確認がとれたようだ。視線を守人に戻す。

「どうやら本当らしいな」

「それで、そっちの目的は?」

 現状の認識が整ったことで本題だ。目的がなんなのか、重要なのはそこだ。

「私も同じだ。この国で暴れているSCPを倒す。どっかの馬鹿が本部を破壊してくれたおかげでな」

 嫌味だろうか。

「……まったくだ」

 守人はあえてとぼける。対して彼女は鋭い視線を緩めない。

「が、私は少々複雑だ」

「複雑?」

 守人の眉が動く。複雑。それだ。そこに守人たちの知らない真実がある。ここで起きている最大の謎。それを知らなくてはならない。

「正確には私たち、だがな。お前はすでにG4と戦闘をしているはずだ。なら分かる通り、ここには複数のG4、そしてSCPがいるわけだ。そして、それは偶然などではない」

「いったいなんのためだ?」

「ふ、知らないのか?」

 守人が知らないと知って彼女は笑った。出来損ないの同期のように。

「やはりお前はイレギュラーだ。輪の外で生まれた異端児。お前が知る必要はない。だが、これ以上邪魔をされるのも都合が悪い」

 彼女は輪の中にいる者だ。パズルを組み立てるように動いている。それを荒らされては困る。だからこそ部外者の乱入を拒む。

 守人と彼女では、思い描くパズルが違うのだ。

「立ち去れ。ここはお前の戦場ではない。それを拒むというのなら、私がお前の敵になる」

 問答無用で襲ってこないのは彼女なりの気遣いなのか。彼女の言葉と気迫とは裏腹に、彼女の行動には優しさが、真っ当な人間らしさがあった。

「俺が邪魔者だというのなら、なぜすぐにでも襲ってこない。お前もずいぶん甘いと見えるが?」

 素人と言われたお返しに守人も言い返す。

「ふん、甘い、か。お前も同じだな」

 彼女も自覚はあるのか、守人に言われ自傷気味に笑った。

「これは甘えかもしれない。そう、確かにお前の言うとおりさっさと攻撃して倒せばいい話だ。だが、それは物言わぬ兵器のやることだ」

 その言葉に、守人の心がわずかに揺れた。

「私は戦士だ。戦うにも誇りがある」

 共感が、守人の胸を振るわしていく。

「私たちはG4だ。戦うために存在している。そんな私でも、生きること、死ぬことには意味があるはずだ。お前はどうなんだイレギュラー。人殺ししか能がない道具か? それとも戦士か?」

 彼女の問いかけに、しかし守人は答えずただ彼女のことを見つめていた。

 思えば、自分の周りに自分と同じG4は一人もいなかった。自分の考えや感性が正しいのか、ズレているのか、確かめようがなかった。

 が、彼女の言葉は守人の奥底にある不安に触れた。

 守人は初めて、同類と出会った気がした。

「覚悟を決めろイレギュラー。お前が単なる兵器なら、この場で破壊する」

 彼女の敵意すら、嬉しく思えた。

「ふ」

「……なぜ笑う」

 彼女には悪いと思うがつい守人の口はにやけてしまう。その後顔を横に振った。

「いや、なんでもない」

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