SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

SCPフェルナンド戦 4

『地面を操る能力?』

『いや、振動を起こす能力かもしれん。それで液体化現象を引き起こしているか』

 それは共通の敵ではなく不明な味方の方だった。自分たち以外のG4だ、フェルナンドを倒すことは忘れていないが無視もできない。

 彼女も、いつ敵になるか分からないのだ。

『これに該当するG4の情報は?』

『EUが吸血鬼ならこれは違うか? 現状で有力なのは合衆国ってとこだろ』

『超能力者か。彼女の顔認証急いで』

『やっています!』

 職員の一人が答える。

『出るとは思えんがな」

『やらない理由もないでしょ。……ようやく得た手がかりよ」

『そうだったな」

 守人は集中を途切れることなくフェルナンドに念をかけ続ける。それでも彼の豪腕はこの窮地から脱しようと暴れるが泥のようになった地面ではそれも叶わない。

 糠に釘とはまさにこのことか。どれだけの怪力を持とうとも液体を前に掴むこともできない。

「ゴミみたいに埋めてやる」

 フェルナンドの体はすでに腹部まで沈んでいた。それも肩まで埋もれ満足に腕を動かすこともできなくなっていた。

「ぐ、ぬ、おおお!」

「さっさと沈め、芋野郎」

 ついにフェルナンドの顔まで地面に埋もれ伸ばした両手が動いているだけだった。その両手も消えていきこの場から完全にフェルナンドの姿はいなくなっていた。

 だが相手はフェルナンドだ。なにが起こるか分からない。彼女は能力を解かずさらに彼を沈めているようだった。

 フェルナンドが消えてからもしばらくは能力を行使し、ようやく彼女は腕を下ろした。

「ふぅ」

 息を吐く。さきほどまで液体化していた地面はすでに固まりきれいに整備されている。見た目からではここに大男が埋葬されているなど思いもつかない。

「私一人でできれば良かったんだがな、どうしても最初の段階で逃げられた」

 独り言のように彼女は話し出した。最初は一対一で戦っていた彼女だがこの展開は一人だけでは難しかったようだ。

 彼女は姿勢を整え守人に向き直る。

「とりあえず、役には立った、と伝えておこう」

「それは光栄だな」

 当初の目的通りフェルナンドの討伐には成功した。それは大いに素晴らしいことだ。が、この場にいる二人に達成感はない。喜ぶにはまだ解決していない問題がある。

 守人も軍服の女性も相手を見つめる。さきほどまで共通の敵と戦っていたというのに共闘の余韻はまるでない。

 そこにいるのは敵ではないが、味方でもないなにかだ。敵になる可能性があり、なった時のことを思えば下手は打てない。

 まずは、相手を知る必要がある。

「でだ」

 そこで最初に話し出したのは女性の方だった。

「このままお別れとはいかんだろう、お互い。いろいろ聞きたいことはあるが、まず、お前のそれはなんだ?」

 それと言われ守人は小首をかしげる。どれのことか分からないが彼女の次の話で分かった。

「今も私たちは衛生カメラによって撮影されているが、どうもお前の姿だけ確認ができないらしい。私から容姿を伝えてもいいのだがこうして対峙していながらなぜか記憶が不鮮明になる。認識はできるが記憶はできない、そういったところか」

 どうやらエフェクトスーツの映像障壁と記憶妨害のことらしい。彼女の耳にはインカムがついているが報告がきていたのだろう。

「冷静だな」

 初対面にしてはなかなかの分析力だ。普通ならもっと慌てるものだが、こうした奇怪な体験は初めてではないのかそうした訓練を受けているのか。

「それはお前の異能か? それともそのスーツ、か? が持つ性能なのか。だとしたらよほど優秀な技術者がいるんだな」

 どうやらスーツを着ていることはかろうじて記憶できているようだ。ただし外見までは無理のようだが。

『もしかしてワシ誉められてる?』

『黙ってて』

 ヘルメットの向こう側で獅子王と麗華の声がする。

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