SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

SCPフェルナンド戦 3

 守人は座り込んでいた体をゆっくりと起こした。

「大変失礼しました。大丈夫ですか? お怪我はありませんか? 食べてもいいですか?」

 心配そうに声をかけながらフェルナンドが近づいてくるが不穏過ぎる。もう二度と気を緩めたりしない。

「ふん、素人が」

 油断していた守人を女性が罵る。今はその罵りを受けよう、弁明の余地もない。

「もう一度言うが俺はお前と敵対する意思はない。こいつを倒すため共闘を提案するがどうする?」

 守人の確認に彼女は閉口していた。鋭い視線が守人を見つめる。

「おやおや、商談ですかな? 私は黙っていた方がよさそうですね。ハッハッハッハ!」

 フェルナンドが笑っているのを尻目に二人は見つめ合っていた。ともに戦うに値するのか、信用できるのか、彼女は鋭い目の裏側で守人のことを思案している。 

「イレギュラー。私は貴様をこう呼ぶ」

「好きにしろ」

 こちらからすれば彼女、いや、すべてがイレギュラーだがそこはいい。

「そして、これは共闘ではない。休戦だ」

「結構だ」

 話は決まった。今まで互いを向いていた視線が同じ目標に向かう。

 SCP、オブジェクトクラスユークリッド。食人鬼フェルナンド。怪力を誇るこの敵を倒すため偶然居合わせた他国のG4とともに戦う。

「どうやらお話は決まったご様子ですな。どうやらあなたも彼女と同じく私の力が知りたいと。いいですともいいですとも。協定を結ぶ相手は強国でなければならないというわけですな。ではそのご期待に答えなくては」

 話す言葉だけなら友好的に聞こえるのだがその根底は破綻した思考回路だというのだから油断できない。

 麗華の言ったとおり、彼は率直に壊れている。敵意や悪意の有る無しに関わらず人を襲う、あってはならない存在なのだ。

 フェルナンドが守人めがけ走ってくる。二メートル四十センチの巨体が地面を踏むたびに重い音が響く。まるで石像が走っているかのような衝撃だ。

 さきほどフェルナンドの腕に当たった守人なら分かる。力はむこうが一段も二段も上だ。彼なら戦車だろうが片手で軽々持ち上げるだろう。

 近づかれてはならない。守人は片手を伸ばしフェルナンドを浮かせた。

「おお?」

 そしてお返しとばかりに反対側に吹き飛ばした。彼の巨体が宙を飛び背中から地面に激突する。地面はえぐれ土が見えていた。

「おお! これこそはかの宇宙神秘パワーですな、素晴らしい!」

 だがフェルナンドにダメージはない。それどころかヒーローショーを見た子供のように盛り上がっている。

 フェルナンドは立ち上がった。

「ですが、まだ勝負はついていませんよ。私は見ての通り頑丈ですからな、ハッハッハッハ」

 フェルナンドは愉快そうに笑うが瞬間だった。相手の不意を突くかのようにタックルの姿勢で走ってきたのだ。静から動への切り替え、その際の生じる気配の変化がない。

 守人も再び念じて対抗する。どれだけ向かってこようが無駄なことだ。

 が、フェルナンドはその場に踏みとどまり守人のサイコキネシスに耐えていた。体が、浮かばない。

『どうして?』

 守人は念じる力を増すがそれでもフェルナンドの体は動かない。

 フェルナンドはタックルの姿勢だったこともありやや前傾姿勢で守人をギロリと見つめている。その顔は力み重心を下へと置いている。

 フェルナンドは、足の指で地面を掴んでいた。靴越しではあるがその巨体を支えるビッグフットの接着面と圧力が電磁石のように地面とくっついている。

 特殊な能力も技能もない。ただ力だけ。それだけで守人の異能に対抗している。

 さらに、その足が一歩を踏み出した。緊張が高まる。このままでは近づかれる。

 フェルナンドはさらに歩みを進めるが、踏み出した足の地面が盛り上がった。

「なに?」

 と思えば、今度は足がついている地面がくぼみフェルナンドの足首まで埋め込んだ。

「これは?」

 この現象にフェルナンド当人も驚いている。

「そのままやつの動きを封じていろ」

 彼女が守人に叫んだ。見れば彼女も片手を伸ばしその手首を掴んでいる。フェルナンドの足下を操っているのは彼女か。

 地面は流体状となりフェルナンドの体がみるみると沈んでいく。

「生き埋めにしてやる」

 彼女の言葉どおりフェルナンドの体は埋もれていく。底なし沼にはまったようだ。

 守人が体の自由を封じ彼女が埋めていく。フェルナンドを倒せるかという絶好の機会だが、麗華と獅子王は別のとこを見ていた。

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