SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

SCPフェルナンド戦 2

 内容は当初の目的通りフェルナンドの討伐。しかし女性がこちらにも攻撃してくるようなら反撃する。行動の方針は決まった。

「ファースト、出撃するぞ」

 守人はヘリから飛び降りた。頭を下に地上へと垂直落下していく。目的地へと接近し体を浮かせ勢いを止めてから念を解除し着地した。

 場所は住宅街にある小さな公園だった。道の端に小さな遊具が数点あるだけの公園というよりも散歩道のような場所だ。当然ここには一般の者は誰もいない。

 いるのは黒のタキシードとシルクハットを被った巨人と白い肌の女性軍人だった。女性はショートカットの青い髪をしており顔は丸みがあった。

 まだ若く二十代の半ばごろに見える。タキシード男と見比べれば小さく見えるが身長は百七十はあるだろう。戦闘中ということもあり鋭い目つきで乱入してきた守人を見つめてきた。

「お前は、まさかイレギュ」

「おお! これはこれは!」

 彼女が守人になにか言い掛けるがフェルナンドが遮った。警戒心を露わにする彼女とは正反対に彼は陽気であり両腕を広げ歓迎すらしていた。

 四角い顔がにっこりと笑い守人に近づいてくる。

「あなたのことは存じていますよ、宇宙の兵隊さんですよね? あのう、ほらあれ、光の玉を出す銃で戦う。そのヘルメットは間違いない。それに光で輝く剣で戦う騎士もいるんですよね? いやー、素晴らしい。私の臣下はこれはフィクション映画で作り物なんだと言っていましたが私は信じていましたよ。今も宇宙から下りてきたのでしょう?」

「…………」

 返事に困る。

 いきなり言われる突飛な推理に守人はただ口を噤んで見上げるだけだ。

「ああ、これは失礼。私ばかりお話してしまって。それに自己紹介もまだでしたね。重ねて失礼しました。はじめまして。わたくしトム・クルーズと申します」

『お前のようなトム・クルーズがいるか』

 麗華がキレ気味に言う。

『ファースト、気をつけて。口調はこんなんでもフェルナンドは食人鬼よ。それに自分がフランス王だと錯覚してる。一言で表すと正気じゃない。会話に惑わされないで』

「自分のことをトム・クルーズだと言ったぞ?」

『それは分からない。とりあえず殴っといて』

 フェルナンドがなにを意図して話しているかは分からないがそこへ女性の方が話しかけてきた。
「貴様、イレギュラーG4だな。なにしに現れた?」

 服装からして軍人だというのが分かるが彼女の雰囲気や鋭い視線からは戦いに身を置く者特有の凄みがあった。

「お前は?」

「答えると思うか?」

「いいや。なら目的を聞かせてもらおうか」

「SCPの確保、もしくは討伐だ。これ以上被害が出るまでにこいつは私が倒す」

 彼女にとってみれば敵と戦っている最中に新たな敵が現れたようなものだ。警戒して当然。敵だと決まったわけではないが味方だと思えるのはそうとうなお人好しだけだ。

「邪魔をするなら、お前も倒す、イレギュラー」

 だからこそ彼女は守人を睨みつけ敵意をぶつけてくる。

 が、守人としてはむしろ安心していた。彼女は敵じゃない。敵対する理由がないと分かったからだ。

「目的は同じだ。敵対する意思はない」

「なに?」

 守人は彼女から視線を切りフェルナンドへと向けた。すべて分かっているのか脳天気なのか大男は今も大らかな笑顔を浮かべている。

「フェルナンド。お前には討伐の命令が下っている。俺がここへ来た理由はお前を倒すためだ。しかし大人しく降伏するというのなら危害は加えない。人を襲わず、暴れず、町に被害を出さないと誓え。それが約束できないというのならば力づくでお前を倒す」

 守人はここへ来た目的を告げた。この誇大妄想狂がなにを思っていようがはっきり言われれば否定もできまい。

 それにすぐに人を襲うわけではないらしい。人類に敵意を持つSCPは多いと聞くがそうでないなら戦わずに済むかもしれない。

『ファースト、駄目!』

 が、その考えを麗華が否定する。直後、フェルナンドがなんの前触れもなき殴りつけてきたのだ。守人は吹き飛び地面を一回跳ねたあと壁に背中から激突した。

「いやぁ、すみません。手が勝手に動いてしまいまして、うっかりあなたを食べようとしてしまいました。お話を遮ってしまい申し訳ありません」

 守人は座り込みフェルナンドを睨みつける。自分を吹き飛ばした相手は意味の分からない弁明を続けている。

『フェルナンドと交渉なんて無理よ! 喋れるけど正気じゃないの!』

「すまない、今のは俺が甘かった」

 討伐命令が出ているとはいえ敵意のない相手に殴りかかるのは気が引ける。だから話し合いに持ち込んでみたがこの結果だ。不可解な存在であるSCPを文字通り体で受ける。

 さらに今のやりとりで分かったのだが、やつはとてつもない怪力だということだ。今のは攻撃ではない。

 反射的に手が伸びただけで構えも重心もすべてがデタラメだった。にも関わらずこの威力、もしやつが本気で攻撃しようとしていたらこんなものではない。

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